Ken Okuyama Carsは2025年12月10日、アラブ首長国連邦アブダビにて、ワンオフモデル「F61H バードケージ」をワールドプレミアした。本モデルは、同社が進めてきた水素燃料自動車プロジェクトの到達点として位置づけられる一台であり、公道走行が可能な水素燃料エンジン搭載ハイパフォーマンス・スポーツカーという点で、このカテゴリーにおける世界初の試みとなる。
【画像】アラブ首長国連邦 アブダビにてワールドプレミアされたF61H水素燃料自動車(写真12点)
F61Hバードケージは、ガソリン車と同様の内燃機関を用いながら、走行時に二酸化炭素を排出しないという特徴を備える。バッテリーや関連デバイスの寿命、さらには将来的なクラシック価値に対する懸念が指摘されるBEVとは異なり、既存の内燃機関技術を基盤とする水素燃料エンジンによって、スポーツカーのサステイナビリティと官能性を両立させる可能性を提示している点が注目される。
開発のベースとなったのは、同社の最新ワンオフモデルであるKode61バードケージだ。フロントにV型12気筒ガソリンエンジンを搭載する2シーターのバルケッタとして設計され、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステやペブルビーチ・コンクール・デレガンスにノミネートされた実績を持つ。すでに顧客へのデリバリーも進んでおり、造形美と存在感の両面で高い評価を獲得しているモデルである。
F61Hでは、このKode61の基本構成を踏襲しつつ、圧縮水素を燃料とする水素燃料エンジンを搭載。イタリア製V型12気筒ガソリンエンジンをベースに、パートナー企業である株式会社FLAT FIELDと共同で開発が進められた。12気筒それぞれを独立制御する電子制御水素燃料噴射システムを採用し、ガソリンエンジンに劣らないパフォーマンスと、内燃機関ならではのエグゾーストノートを実現しているという。
トランスミッションはトランスアクスルレイアウトの6速マニュアルを採用し、リアには水素燃料タンクを配置。現在の標準的な水素ステーションでの燃料充填にも対応しており、技術的な実験にとどまらず、現実的な運用を見据えた構成となっている点も特徴だ。
ワールドプレミアはアブダビのリッツカールトンホテルで行われたほか、F1が開催されるヤスマリーナ・サーキットのハーバーエリアにおいて特別プレビューも実施され、世界各地から訪れたF1ファンの注目を集めた。モータースポーツの最前線と隣り合う場所で披露されたことは、F61Hバードケージが単なるコンセプトカーではなく、スポーツカー文化の未来を見据えた存在であることを象徴している。
Ken Okuyama Carsは今後も、水素燃料に関する研究開発を重ねるFLAT FIELDとともに、さらなる進化を遂げた水素自動車の開発を進めていくとしている。F61Hバードケージは、量産を前提としないワンオフモデルでありながら、内燃機関スポーツカーが次の時代にどのような形で生き残り得るのか、その一つの方向性を示す存在だと言えるだろう。
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