菅叶和
12月26日(金) 12:00
Text:斉藤貴志Photo:石原敦志
『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の大沢瑠璃乃役で知られる声優の菅叶和(かん・かんな)。明るいキャラクターで人気を集め、今年は配信シングル2曲と音楽活動にも力を入れた中、新曲「わたしラグジュアリー」のリリースと来年11月の初のソロライブ開催も発表した。話していても笑いが絶えないが、芯の強さも垣間見せる彼女に、アーティストとしての経緯から展望まで語ってもらった。
── 公式プロフィールでは身長165cmですが、もっと高くないですか?
最近「伸びた?」と言われることが多くて、計り直さなければと思っているところです。成長期がまだ続いているのかな(笑)。
── 菅さんの音楽のルーツというと、どの辺だったんですか?
小さい頃はそれほど音楽を聴いて育ったわけでなくて、茶道の家系で、むしろ縁は深くなかったです。たぶん携帯を初めて持った中学生の頃から、興味を持ちました。イヤホンをして音楽を聴くと、日常を忘れられる感覚が好きで、イヤなことがあって一度落ち着きたいときとか、支えになっていった感じです。
── ハマったアーティストもいました?
当時は「歌ってみた」の全盛期で、歌い手さんに憧れを持ちました。今でもずっと好きなのは椎名林檎さんやクリープハイプさん。唯一無二の歌声を持ってらっしゃって、お声が好きなところから入りました。
── シンガーとして影響を受けたりも?
中学生の頃だと、歌い手だったmajikoさんを「心做し」という楽曲で知って、表現力に圧倒されて気になっていました。高校時代には「木蘭の涙」のスターダストレビューさんに影響を受けたり、父と母がミスチル(Mr.Children)さんを小さい頃から日常的に流していて。自分が音楽をやらせていただくようになって、改めて聴くと驚きがありました。こんな感情が込められていたのか……と思って。
── 桜井和寿さんのボーカルは繊細さに裏打ちされていますよね。
レコーディングのメイキングを観る機会があって、1フレーズを何十回、何百回と夜通し録ってらっしゃったんです。そこまで魂を込めて歌うものなんだと、すごく考えさせられました。
── 菅さんもどこにも発表しない歌のレコーディングに、50テイクくらい重ねていた頃があったとか。
音楽系の大学に入って、友達から家でレコーディングする術を教えてもらって。普段お仕事で歌を録るときは、限られた時間の中で自分の精いっぱいを出すことが求められますけど、家で自由に音楽をできるなら、どこまでも追求したくなりました。ミスチルさんの映像を観た影響かもしれません。
── 今年「エウレカ」に「涙のにおい」と配信リリースしたのは、念願だったんですか?
自分の音楽を届けるのは高校生の頃からの夢でした。今は届ける方法がいろいろあって、メジャーレーベルから出すのもすごいけど、誰でも個人で出せる素敵な時代なので。私は大好きな人たちと一緒に音楽を作るほうがいいかなと、インディーズの形で配信させてもらいました。
── 2曲とも、切り口は明るい、切ないと異なりますが、別れがテーマになっています。
昔からお別れが苦手で、人生で二度と会えない経験もして、会ったときから「この人といつまで一緒にいられるんだろう?」と考えてしまって(笑)。卒業があるコンテンツで活動させていただいていることもあって、別れを意識する感覚が大きくなってしまったんです。でも、悲しくなるのが悪いことではないし、明るい気持ちになれるように頑張りたいねと、違う伝え方でお別れを表現させてもらいました。
── どういうアーティストになりたいか、イメージもあるんですか?
最終目標として日本武道館とかアリーナとかドームとか、どデカいステージにひとりで立ちたいとフワッとした夢はあります。そのためにもみなさんに求められるアーティストになりたい。インディーズで自由にやらせていただいている中で、みなさんがどんな菅叶和を好きか、私の歌はどんな人たちを助けられるか、勉強期間みたいな感覚です。みなさんと一緒に、菅叶和というアーティストを作っていけたらいいなと。
── 自分から、〇〇みたいになりたい、というわけではなくて。
もともとはありましたけど、憧れが強すぎると真似になってしまうので。周りの方たちやファンのみなさんと一緒に、夢を探す旅をしていくイメージです。
── 新曲の「わたしラグジュアリー」は前2曲と歌いっぷりも違って、爆発しています。
そうですね。「エウレカ」では無意識に、今までのレコーディングで演じていたキャラクターとリンクしてしまったところがありました。「わたしラグジュアリー」は作られるまでが濃くて。曲を書いていただいたけんたあろはさんは大学時代の先輩なんです。お互い自立して、やりたいことができるようになったらご一緒したいと話していて、「エウレカ」と「涙のにおい」が耳に届いたらしくて。久々に連絡が来て「私たち、今じゃないですか?」と再会しました。
──「エウレカ」などの“別れの歌”のようなテーマは、最初からあったんですか?
今回のテーマはけんたさんにお任せしました。大学時代から「菅さんの声で届けたいような楽曲がある」とおっしゃっていて。求められるものを歌ってみることは、旅路の中の寄り道になって大事かなと、チャレンジさせてもらいました。
── 結果的には菅さんが歌いたかったこととシンクロしたりも?
歌詞をいただいて詩的な表現だと感じて、最初は読み解くのが難しかったです。でも、曲に乗せて歌っていくうちに、強い女の子を肯定するような楽曲だなと。私は自分を強い人間だと思ったことはありませんけど、周りからは「メンタルが強いね」と言われていて。みなさんに見ていただいている私で歌ったら、シンクロするのかなと思いました。
──「ほしいものばかり手に取って何が悪いの?」とも思っていますか?
今までかなりわがままを言って、ここまで来ていて。昔から私を知っている方には「一回決めたら絶対曲げないね」と言われます(笑)。自然な気持ちで歌ったら、本当にシンクロしました。
── どんなわがままを言ってきたんですか?
高校が小・中から一貫の女子校で、母と祖母の大事な母校でもあったんですけど、芸能活動はできなくて。「キラキラした世界に入るために転校したい」と話して、母にも祖母にも全力で反対されても、やりたいことができると人の意見は絶対に聞きませんでした。それは私の良い部分でも悪い部分でもあるなと思いつつ、「わたしラグジュアリー」は「いいんだよ」と肯定してくれる楽曲だったので、楽になりました。
── 学校もさることながら、そもそも茶道の家系から芸能界に入ることで、バトルになったのでは?
ありましたね。この活動でちゃんと自立できるまでは、母にはずっと反対されていました。いろいろお仕事を経験させていただく中で、母も今は応援してくれています。
── 菅さん自身、ある時期までは家を継ごうと思っていたんですか?
思っていたというより、そうなるんだろうなと。自分の中で夢がなくて、茶道が嫌いでもなかったので、決められたレールの上を進んでいく気がしていました。でも、学校生活で人とずっと一緒にいると疲れてしまうことが何度もあって、そういうときに音楽に救われて。自分も声を活かしたことをやりたいと思ったのと、単純に反抗期が重なりました(笑)。
── それで決められたレールをぶっちぎって、この世界に?
けど、今になって、たまに母と祖母のお手伝いで茶道をやらせていただくと、日本の文化が停滞していると感じることもあって。逆に、私の力で茶道のために何かできないかと考えたりします。茶道声優をやってみるとか、生まれながらに大事にしてきたものと今の活動をリンクさせて、輝ければいいなと。今は茶道も声優も諦めたくありません。
── 話が逸れましたが、そういう我が道を行く感じが「わたしラグジュアリー」にはあります。
けんたさんからも、私はそんなイメージだったと聞きました。
── 歌い方も必然的にパワフルになったんですか?
今までと別のジャンルでいってみました。ただ、大学時代は椎名林檎さんをカバーしたり、倉橋ヨエコさんとかFINLANDSさんとか唯一無二な声質や音楽性を持った方を聴くことが多くて。歌い方も知らずに影響を受けていたので、けんたさんはその頃の私のイメージで曲を作ってくださったようです。それが自分自身にもマッチして、歌っていて昔を思い出す感覚になりながら、めっちゃ楽しかったです。
── レコーディングで苦戦したところはなく?
なかったです。けんたさんにディレクションもしていただいて、「菅さんのクセが好きだから思う存分出してほしい」というのが唯一言われたことでした。リズムとか専門的なことは教わりながら、今までだと「シャクリを抑えよう」とか「ここはこうしよう」とか、指示されることが多かったのを解放させてもらえて。いい意味でぶつかり合って、楽曲が出来上がっていくイメージがありました。
── 歌っていて脳裏に浮かぶものもありましたか?
昔を思い出したこともあって、レトロポップな感じがしました。ブティックという歌詞も出てきて、母たちの世代のバブリーみたいな印象があって。マンガで言うと『NANA』みたいな世界観をイメージして歌いました。
── 来年11月19日(木)のKT Zepp Yokohamaでの初ソロライブも発表されました。1年近く前で、かなり早い告知でした。
会場を聞いたとき、「埋まるわけがない」というのが正直な第一声でした。いつか武道館まで行くにしても、まだ大きすぎるとビビってしまって。でも、自分の精いっぱいを届ける気は満々で、発表したからには今から気合いを入れていこうと。私の誕生日に『NEW BORN LIVE』というタイトルで、新たに生まれ変わる私に期待して待っていてほしいです。あと、当日が平日で、みなさんお仕事や学校があるから、1年前から知っていただいたほうがいいかなと。
── 持ち歌もそれまでに増やしますよね?
楽曲はかなり自分が主体になって、いろいろな方の力を借りて作っているので大変ですけど、なるべく曲数を増やしてZeppに臨みたいです。
── まだ先ですが、どんなライブにしたいか、今の時点でイメージはありますか?
これを人生で最初で最後のライブにする気持ちで挑みます。それくらいでないと、中途半端になってしまう気がしていて。自分ができる最大限を出して、その熱量をみなさんに届けられたら。蓮ノ空女学院で私と出会ってくださった方が多いと思いますけど、そういう方々にも新たな私を見せられるようになります。
── 今年を振り返ると、仕事以外でのトピックはありましたか?
江ノ島に小旅行に行きました。夏のお休みの日の前日に寝られなくて、明日は何しようか考えながら友達に電話して。最初は金沢に行こうかと話していたんですけど、その子に「日帰りで近くなら一緒に行く」と言われたので、江ノ島にしました。朝イチで出掛けて、海鮮丼を食べて海を見て浸って、眠くなったので昼過ぎに帰りました(笑)。
── 忙しい中で貴重な休日だったんですね。
あと、女子校からの友達が仕事場の近くまで車で迎えに来てくれて、「気分転換をしよう」と夜のドライブに連れていってくれたりもしました。楽しかったし、車の中で私の曲を流して、その子たちが「本当に良かったね」とガン泣きしてくれたんです。青春の続きのようで印象に残っています。
── 来年はアーティスト活動が増えそうですか?
Zeppでのライブに向けて楽曲を届けながら、飽きられないようにYouTubeを動かそうかと考えていて。写真集も出したいと思っていたり、やりたいことはいろいろあります。
── 去年デジタル写真集でグラビアの賞を獲りましたが、今度は水着もやりますか?
紙の写真集を出したいので、決まったらマジで頑張ります!ライザップに通って1カ月で腹筋を作るのを、YouTubeの企画にしようかと(笑)。お腹を出す衣装があると、自分でできる限り頑張ってみましたけど、腹筋の縦線ができたことは人生でまだ一度もないので。
── 自分で曲を書いたりはしませんか?
歌詞は自分で書きたくて、叶えられるように動いています。恋愛テイストの詞を書こうと、思いついたらメモを取っているんですけど、どんどんネガティブなほうに行ってしまって。出だしはポジティブでも下の行に行くにつれて、別れる話になっていたり(笑)。
── 明るいイメージの菅さんの、秘められた何かを反映しているんですか(笑)?
わかりません。別に病んだりはしていませんけど、すごく恥ずかしくて。このメモは誰にも見られないように、ロックを掛けています(笑)。音楽だと、街中でギターを弾いている人がいますよね。あれもやってみたくて。
── 路上ライブですか。
日常で歩いているときに音楽が流れてくるのはいいなと思いますし、Zeppへの度胸試しにもなるかなと。
── そもそもギターはどう始めたんですか?
高校の終わり頃、楽器屋さんでひと目惚れしたギターがあったんです。店員さんもやさしい方で、ギターを弾いたことのない私に持たせて、いろいろ教えてくれて。そんなにお金を持っていなかったので、いろいろな人に相談したら、伯父が投資だと言って買ってくれたんです。父と母はギターケースをプレゼントしてくれて、今も使っています。投資にリターンできるように、頑張らなければと思っています。
<リリース情報>
「わたしラグジュアリー」
12月26日(金) 各音楽配信サイトより配信開始
配信サイト:
https://big-up.style/artists/302086
<ライブ情報>
『菅叶和 NEW BORN LIVE』
2026年11月19日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
開場 18:00 / 開演 19:00
【チケット情報】
VVIP席(前方ブロック・特典グッズ付・お見送り):20,000円(税込)
VIP席(前方・特典グッズ付):12,000円(税込)
指定席:8,000円(税込)
※VVIP席、VIP席は数がなくなり次第受付終了。
チケット詳細はこちら:
https://kancanfc.bitfan.id/contents/329570
菅叶和 公式X
https://x.com/kannkannna
かんかんなおふぃしゃるYouTube
https://www.youtube.com/@かんかんなおふぃしゃる
菅叶和 official fanclub「菅缶」
https://kancanfc.bitfan.id/
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