東大ラグビー部主将が振り返るターニングポイント 「ふざけんな!」が生んだ"現場"という合言葉

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東大ラグビー部主将が振り返るターニングポイント 「ふざけんな!」が生んだ"現場"という合言葉

12月25日(木) 10:10

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最強のふたり〜東大ラグビー再生物語(全6回/第2回)

東大ラグビー部で今シーズン、主将を務めるスクラムハーフの福元倫太郎は農学部で生命化学工学を専攻し、稲の根っこを対象として植物栄養の研究をしている。そして、囲碁がめっぽう強い。

「中2の時、全国大会で準優勝して取材を受けたことがあります。こういうインタビューはラグビーよりも囲碁のほうが先でした(笑)。僕は考えることが好きで、それがラグビーのおもしろさでもあるので、囲碁が好きだというのは自分のラグビーにつながっているところはあるんじゃないかと思っています」

中学時代、囲碁で全国大会準優勝の経歴を持つ東大ラグビー部主将の福元倫太郎さんphoto by Sportiva

中学時代、囲碁で全国大会準優勝の経歴を持つ東大ラグビー部主将の福元倫太郎さんphoto by Sportiva





【「現場へ行け」が変えた東大ラグビー】99回目を迎えた東大と慶大の定期戦は8月11日、山中湖の慶大グラウンドで行なわれた。小雨のなかのキックオフから東大のディフェンスが慶大を苦しめる。前半、2つのトライを取られて0−14とされたものの、風雨が強くなる悪天候のなか、後半は東大が追い上げた。福元があの試合をこう振り返る。

「あの時のキーワードは『現場』という言葉でした。接点に人がいっぱい集まるように、とにかく『現場へ行け』と......僕らの弱点はボールが別の場所へ動いた時、離れたところから見ている選手が多いというところだったんです。

もちろん近代のトップレベルのラグビーの決まり事みたいに、ここはこの人がボールを出して、次のところでもらうつもりだから遠く離れていてもいい、というような戦術だったらいいんですが、僕らの場合はそうじゃない。そんなプレーが慶應との試合前日の練習で出てしまって、一聡さんが僕らにブチ切れたんです」

それは、こんなプレーだった。バックスが大外に回してトライを取れそうになった場面で、最後につかまってしまってトライが取れなかった。その時、自分たちの仕事はもう済んだとばかりに足を止めていたフォワードが「なんでそこにボールを回すんだ」「そんなところへ行かずに取り切れよ」「オレたち、こんだけ走ったんだから」と文句を言った。その瞬間、ヘッドコーチの高橋一聡の堪忍袋の緒が切れる。

「ふざけんな!」

「おまえらが走れ!」

「人のせいにすんなっ」

これまで聞いたことのない一聡の怒声に、フォワードの選手たちは震え上がった。その瞬間が、今年の東大のターニングポイントになったと福元は言う。

「感情を爆発させることのない一聡さんがブチ切れたことで、みんなの意識が変わったと思います。とくにフォワードの選手の気持ちがすごく変わって、謙虚になった。泥臭く走ってくれるようになったんです。良くも悪くも東大の伝統はフィジカル重視で、身体を大きくして、接点で勝とうとしてきた歴史があります。そんな東大ラグビーの『ハードタックル』『ストレートダッシュ』にこだわっていたフォワードの意識を、『現場』というキーワードをつくることによって一聡さんが変えてくれた。

今まではフォワードで勝っても、次につながらないからチョイスがなくて......丸裸のバックスしかいないし、その挙げ句にフォワードにはキツいところでしかボールが回ってこなくなる。そこを、ひとりでダメならふたり行く、ふたりでダメなら3人行けばいい。とにかく現場へ行け、と。一聡さんが『現場』という言葉を定義してくれたことによって、徐々にフォワードとバックスが一体化するラグビーになってきたんです。みんながガムシャラに走るようになったし、身体をぶつける回数も増えました。その結果が最初に目に見えて出たのが夏の慶應戦でした。あれは東大のラグビーはこうあるべきだ、こうやっていけばいいという自信がついた試合でしたね」

【感情ではなく戦略としての怒声】では、選手たちに「ブチ切れた」と言われた一聡の意図はどこにあったのだろうか。

「あの山中湖での合宿では、ボールが遠くへ行った時に起こったミスを、チームの中心となるべき選手が動かずに注意していたんです。これはアカンと思いました。事が起きているのは『現場』です。それを現場にいない選手が中途半端に指摘するのではなく、現場で処理しなくちゃならないということに気づいてほしかった。ネガティブなことを外から言ってもチームはよくならないんです。

一番大事なのはその次のことじゃなくて、まず現場でどう処理するか、現場でどう勝つか。そこで思いついた言葉なんですが、事あるごとに『現場だ』『現場だ〜っ』って声に出していたら、それがキーワードのようになって、みんなが『現場』と言うようになりました。今まで『ブレイクダウン』とか『接点』とか、いろんな言い方をしてきたんですが、『現場』という言葉が彼らにはハマったんでしょうね(笑)」

もちろん、キレているように見せたのは一聡の演技である。

「キレることを僕はすごく大事にしています。選手たちを手っ取り早く集中させるためには、ちょっと顔色を変えて真面目に話すことは武器になるんです。でも、これをやって聞かないとなったら終わりなんで、そこは慎重に、メチャクチャ大事にしています。もちろん感情的になって怒ることは、僕のなかではゼロですよ(笑)」

つづく>>

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