宮城県在住の40代・Mさんは10年ほど前のある夜、雨に濡れながら横断歩道で信号を待っていた。
雨は急に降ってきたもので、どこか雨宿りができる場所まで走ろうとしていたら......。
<Mさんからのおたより>
10年程前、出張で横浜に行きました。
夕飯を食べようと外に出たところ、霧のようなやわらかな雨が降っていましたが、これくらいなら大丈夫と歩き出しました。
しかし、信号待ちをしている途中で急に雨脚が強まり、一気にスコールのようなどしゃ降りに変わったのです。
雨の中、誰かが近付いてきて...
信号が変わったら、雨宿り出来そうな場所までとにかく走ろう......。
そう思ったとき、誰かが近付いてきました。骨太の女性?いや、どう見ても女装の男性です。
「客引きだ!」と思った田舎娘の私は、視線を合わせないようにやり過ごそうとしました。
でも、その人が声をかけてきたのです。
「傘使って」
そして、自分がさしていたビニール傘を差し出してくれました。
傘を借りるのを断ると...
田舎では見たこともない風貌のその人に、偏見もあり、新手の客引きかもという怖さもあり、私は体よく断ろうと、「借りても返せないし、借りたらオネエさん濡れちゃうから」と言いました。でも、その人は、
「傘はホテルにでも置いといて。お店にまだ傘あるから大丈夫」
と言って私に傘を渡すと、雨の中を走り去って行ってしまったのです。
たぶん、私は田舎者丸出しだったのでしょう。
偏見をもっていたこと、純粋な好意を疑ったこと。何とも言えない申し訳ない気持ちになりました。
そんな私を気遣っていただいたこと。ごめんなさいとありがとうを言いたいです。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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