36歳元子役『渡鬼』時代の恩人の訃報を受け、頭が真っ白に。共演者が開いたお別れ会でこみ上げた“後悔”とは

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36歳元子役『渡鬼』時代の恩人の訃報を受け、頭が真っ白に。共演者が開いたお別れ会でこみ上げた“後悔”とは

12月24日(水) 15:47

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橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。

そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けるエッセイ連載。今回は「お世話になった方との別れ」について綴ります。

『渡鬼』現場でお世話になった方の訃報



ちゃんと伝えなきゃいけないことはいくらでもあるはずなのに、終わってから気づくばかり。

2025年ももう終わりですね。皆様ごきげんよう、宇野なおみです。

今年はこのエッセイ連載を筆頭に、本当にいろんなことがありました。そんな師走に、『渡る世間は鬼ばかり』の現場でずっとずっとお世話になった方(ここではYさんとお呼びします)が亡くなったという訃報を受け取りました。

読んだ途端、頭の中が真っ白。第四シリーズ後半~最終シリーズまで出演した私が、最初のリハーサルからお世話になった方です、主にファーストAD(アシスタントディレクターのトップ)と、後半は演出もされていました。

渡鬼が終わった後も時折赤坂でご飯を一緒に食べ、出演した『爆報!THEフライデー』では、ディレクターを担当していただきました。まだお若い、早すぎるお別れです。

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先日、その方を偲ぼうと藤田朋子さん、野村真美さん、村田雄浩さん、小林綾子さん、吉村涼さんがお別れの会を開いてくださいました。5月にあった橋田賞のパーティーに続き、皆さんに会えるのはとても嬉しく、また理由がとても寂しかったです。

仕事仲間は時に同年代よりも付き合いが長くなる



会場は高円寺の、小規模なピアノバー。愛姉ちゃん役の吉村涼さんはご都合が合わなかったのですが、他の方々はお目にかかれました。とても久しぶりのスタッフさんにもお会いできて、懐かしかったです。

それぞれがピアノの前で思い出を語ったのですが、Yさんは誰もが認める気遣いやさんで、現場のスムーズな進行を常に考えている方でした。私は、この方には育ててもらった恩があると常々思っています。ただ何しろ自由奔放な子どもだったので(笑)、お手を煩わせた気がしてなりません。

自分の思い出語りのときも言いましたが、「問題児でごめんなさい」……。

遅刻をするとか、さぼるとかはないです。なんというか、のびのびしていた。それも、Yさんを筆頭に皆さんが見守って(もしかしたら、諦めて)いてくださったからだと思います。

私が書く仕事を意識するきっかけになったのは、橋田先生の「あなたはいつか書くわよ」というお言葉でしたが、赤坂でご飯を食べているときだったかしら、Yさんに「書こうと思っています」という話をしたら、「きっとそっちも向いてる」って言ってくださったことを覚えています。

涙を流しても仕方ない。プロの現場で学んだこと



渡鬼の現場はプロフェッショナルの集まりで、温かくも厳しい空間でした。私は負けん気も強ければ神経も太かった(らしい、自覚なし)ので、例え叱られても、芝居がうまくいかなくても、くじけることはまったくなかったんですね。

現場では泣いたって何にもなりません。泣いてセリフを噛まずに言えるわけでもなし、集中力が切れるか、座組全員に迷惑をかけるか、己が鼻声になるだけです。でも、一度だけセリフがまったくうまく言えず、真っ青になって、涙がぼろっと出たことがあります。

そのときは普段俳優全員を気遣ってくれるYさんから、大丈夫か、とかではなく、一言、「いけるな?」と静かに言われました。涙を振って(こするとメイクが落ちるので)「いけます!」と言ったことを覚えています。メイクさんが小鼻の赤みや崩れた前髪を直してくださり、もう一度の本番。無事、演じ切りました。

プレッシャーや悲しみではなく、自分のふがいなさが悔しくて涙がこぼれてしまったことを、お見通しだったのです。

山岡久乃さんや藤岡琢也さん、宇津井健さん、池内淳子さん、Yさんを頼りにしている方々は、向こうにもたくさんたくさんいらっしゃると思います。

そちらに行ったからってお休みになれるかどうか分かりませんが、まずはゆっくり休んで欲しいなと思います。Yさんの気遣い力は私の人生の大きな指標です。

大人の悼み方を知る夜



「おやじバンド」でお世話になった村田さんとも久しぶりにお会いし、たくさんお話することができました。当時はおやじバンドの皆さんは常に黙々と練習なさっていたので、話すチャンスもあまりなかったですから。

会場にはおいしいものがたくさんあり、お酒をゆるやかに飲みながら、思い出話に花が咲き、大人の悼み方を知った気分でした。「また会おう」「元気でね」と言いながら解散。

思い出して、振り返って、また生きなきゃ、と背筋を伸ばす。久しぶりに会った人と、何か約束をする。

お別れはいつだって寂しいですが、そこから小さく泡のようにまた何かが生まれるのだと感じた、月のきれいな夜でした。

まだしばらくは見送る側として



雑誌で書いたこと、単行本に寄稿したこと、エッセイの連載が始まったこと。鬱陶しいと思われても、しつこく報告すべきだったと、後悔してもいます。

今年の流行語じゃないですが、「伝えなきゃ」、です。

人は生きている人の記憶からこぼれ落ちたとき、本当に死を迎えるとどこかで聞いたことがあります。たくさんの人の記憶に焼き付いているYさん。「なかなか忘れてもらえないなぁ」と照れ笑いなさっているかもしれません。

少なくとも、私の「元天才子役の記憶力」はそれなりに健在ですから、ご安心ください、しばらく、そうですね、あと30年くらい、忘れることはないでしょう

本当にありがとうございました、Yさん。問題児でごめんね(二回目)。

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中

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