マセラティ・グレカーレ エッセンツァに見る、マセラティの真髄とは

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マセラティ・グレカーレ エッセンツァに見る、マセラティの真髄とは

12月22日(月) 12:11

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マセラティのミドルサイズSUV「グレカーレ」に、新たなエントリーグレード「エッセンツァ」が加わった。車両価格は990万円。1000万円を切る戦略的な価格設定ながら、マセラティの本質はしっかりと宿している。「エッセンツァ」とはイタリア語で「真髄」の意。余分なものを削ぎ落とすことで見えてくる、ブランドの核心とは何か。風の名を纏うイタリアンブランドが送り出す、新しい選択肢の魅力に迫る。

【画像】1000万円を切る価格で登場した、マセラティの「本質」を表現する「エッセンツァ」(写真7点)


マセラティは「風」を纏うブランドだ。1963年のミストラルに始まり、ギブリ、ボーラ、カムシン、シャマル、そしてレヴァンテ。いずれも地中海周辺に吹く風の名を冠してきた。それは機械的なネーミングルールなのだろうか。どちらかというと、目に見えないものに形を与え、その存在を五感で感じ取ろうとする、イタリア人ならではの美意識の表れのように感じる。

2022年に登場したグレカーレもまた、その系譜に連なるモデルだ。すなわち、グレカーレとは地中海を渡る北東風のことをいう。普段は穏やかに吹き、ときに力を増せば海面を激しく揺らす。静と動、優美さと力強さ。相反する要素を秘めたこの風の名は、マセラティのSUV第二弾にいかにもふさわしい。

グレカーレを語るうえで欠かせないのが、そのプラットフォームだ。アルファロメオのステルヴィオやジュリアと共通の「ジョルジオ」をベースとしながら、マセラティは約50mmのストレッチを施し、独自のチューニングを加えている。兄貴分のレヴァンテがギブリとプラットフォームを共有するのに対し、グレカーレはより軽快な素性を持つ。とはいえ、アルファロメオとは明確に異なる乗り味を目指したという。共有するのは骨格だけ。纏わせる肉付きと衣装は、あくまでマセラティ流というわけだ。

エクステリアにも、レヴァンテとの違いは明確に表れている。全長5mを超えるレヴァンテが、長いボンネットと傾斜したルーフラインでスポーティさを強調するのに対し、グレカーレは全長4,845mmとひと回りコンパクト。SUVの王道を行くスクエアなシルエットにまとめられている。フロントグリルも、レヴァンテの堂々たる縦長に比べ、グレカーレはやや控えめ。トライデントのエンブレムを掲げながらも、どこか親しみやすい表情を湛えている。威厳と柔和さの同居。この塩梅が、グレカーレならではの個性だ。

インテリアに目を向ければ、マセラティの伝統と現代性が巧みに融合している。ダッシュボード上部に鎮座するアナログ時計。実はこれは、液晶ディスプレイにグラフィックで描かれたものだ。デジタルでありながらアナログの温もりを残す。こうした細やかな演出に、イタリアンラグジュアリーの現代的な解釈が垣間見える。

ポジショニングとしては、ポルシェ・マカンやBMW X3、アウディ Q5あたりが競合になる。いずれも人気の高いプレミアムSUVだが、グレカーレが纏う雰囲気はそれらとは一線を画す。ドイツ勢の隙のない完成度とは異なる、どこか人間味のある佇まい。それがマセラティというブランドの持ち味なのかもしれない。

そして2025年9月、グレカーレに新たなグレード「エッセンツァ」が加わった。イタリア語で「本質」「真髄」を意味する言葉だ。車両価格は990万円。1000万円の壁を下回る戦略的な一台とも見ることができる。だが、これを廉価版として片付けてしまうのは惜しい。エッセンツァという名が示すのは、削ぎ落とすことで浮かび上がる本質的な価値にフォーカスするということだ。

フルプレミアムレザー、シートヒーター、アンビエントライト。従来のエントリーグレードが備える装備はしっかり残っている。選択肢を絞り込むことで、マセラティの核心だけを凝縮したともいえる。ボディカラーの標準設定はソリッドのビアンコ1色のみ。この潔さもまた、本質への回帰を物語る。

心臓部には2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載し、300馬力を絞り出す。8速ATと組み合わされ、四輪駆動システム「Q4」が路面状況に応じて駆動力を振り分ける。通常時は後輪だけを駆動し、必要に応じて前後50:50まで自動で調整される仕組みだ。後輪駆動の俊敏さと、全輪駆動の安定感。ここにもまた、グレカーレという風の二面性はしっかりと表現されている。

「The Everyday Exceptional」。毎日が格別、をうたうグレカーレの開発コンセプトは、スーパーカーの非日常性とは違う価値を提示する。子どもの送り迎えにも、週末のゴルフにも、気の置けない友人との小旅行にも。日常のあらゆる場面に、さりげなく格別を添える存在であることがグレカーレの目指す姿だ。

990万円という価格は、多くの人に「初めてのマセラティ」への扉を開くのかもしれない。111年の歴史、レースで培われた技術、イタリアの職人たちが紡いできた美意識。そうした目には見えない価値が、この一台には息づいている。

モデナの風は、いま日本にも届こうとしている。エッセンツァが示すのは、研ぎ澄まされた本質の美しさだ。地中海の北東風のように、時に穏やかに、時に力強く。日常をちょっと格別なものへと変えてくれる、新しいマセラティのかたちがここにある。


マセラティ・グレカーレ エッセンツァ
全長×全幅×全高:4845×1950×1670mmエンジン:直列4気筒 2.0Lターボ
最高出力:300PS/5750rpm最大トルク:450Nm/2000rpm
トランスミッション:8段AT駆動方式:4WD(Q4)車両本体価格:990万円(税込)


文:青山 鼓写真:高柳 健
Words:Tsuzumi AOYAMAPhotography:Ken TAKAYANAGI
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