「ドラマみたい」だった全日本フィギュア三浦佳生、山本草太、友野一希......歓喜と涙の物語

能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「ドラマみたい」だった全日本フィギュア三浦佳生、山本草太、友野一希......歓喜と涙の物語

12月22日(月) 17:55

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12月20日、東京。全日本フィギュアスケート選手権、男子シングルは混沌のなかにあった。今大会はミラノ・コルティナ五輪出場がかかり、いつも以上にリンクで情念がうごめいていた。不安と希望のうねりが、極上のドラマを生み出したーー。

全日本選手権で表彰台に上がった鍵山優真(中央)、佐藤駿(左)、三浦佳生(右)

全日本選手権で表彰台に上がった鍵山優真(中央)、佐藤駿(左)、三浦佳生(右)





【五輪の道が閉ざされたとしても......】フリー最終グループの6分間練習、6人の選手がそれぞれの決意を固めたようだった。

ショートプログラム(SP)では、昨年王者の鍵山優真が堂々とトップに立っていた。今シーズン進境著しい佐藤駿は5位スタートも、3位に入ったGPファイナルの結果を考えれば、鍵山とともに五輪は当確に近かった。

残る3人目の出場枠を争う三浦佳生は2位に躍進し、ベテランの域に入った友野一希が4位につけ、一騎打ちの様相を呈していたが......。

「出しきっても難しいスタートですけど、いい練習を積み重ねてきたので、すべてを出せるように」

SPで6位と出遅れた山本草太はそう言って、フリー最終グループ1番手でリンクに立っている。まさに乾坤一擲、冒頭の4回転サルコウをきれいに降りると、熱のこもった拍手を浴びた。昨年の全日本で表彰台に立った実力は本物だ。

ただ、そのあとのトーループ2本は着氷が大きく乱れ、セカンドもつけられない。五輪への道が閉ざされたと心が折れても無理はない。しかし、そこで会場の手拍子が重なり合う。再び命を与えられたような山本は覇気を取り戻し、最後まで滑りきっている。順位以上にスケート人生を示し、万雷の拍手を浴びる彼の姿はまぶしかった。

「気負わずに、順位を考えずにやります」

大会前日練習、そう語っていた佐藤は2番手で滑走し、SPから挽回した。最後の3回転ルッツこそ乱れたが、6本のジャンプを完璧に成功。GPファイナルでも3位だったように、今シーズンの急成長を象徴する滑りだった。188.76点という高得点でフリー1位、五輪出場を確実にした。

【リンクサイドで泣き崩れる姿も】次に滑走した友野一希は、スケートの神様に見放されたかのような乱調だった。冒頭のトーループを失敗すると、次のトーループも手をついてしまい、セカンドをつけられない。これで五輪出場が大きく遠のくと、サルコウもアクセルも失敗が相次いだ。

しかし、励ますような拍手が会場中で湧き上がると、友野は気力を奮い立たせる。スピンは恍惚のレベル4で、コレオシークエンスは世界有数のスケーターであることを証明する圧倒的な表現力だった。

「結果を求めてやってきた1年間は最高でした。今日は不思議で、集中していける感じもあったんですけどね。自分のできることをマックスでやってきて、シンプルに実力が出たかなって思います」

演技後、友野は晴れがましい顔で振り返っている。リンクを降りる際は泣き崩れていたように、無念さが消えるはずはない。しかし、すべてをやり尽くした人間だけができる澄んだ表情だった。あるいは、彼は誰よりもスケートの神様に愛されていた。

次に滑ったのは友野より10歳下で17歳のジュニア、中田璃士だった。年齢制限で五輪出場がないからか、伸び伸びと滑っている。前半は「次世代を担う」にふさわしい出来だった。後半になって失速し、総合4位に転落したが......。

「今日はホテルを出る前に、4位になりそうって思っていました」

張り詰めた取材エリアで、中田は朗らかに言って笑いを起こした。マイペースだったが、今後に向けては虎視眈々だった。

「今回はジュニアで何もかかっていなかった。4年後はこの緊張感を味わうと思うんですが、その時は堂々と1位になれるように。今回、自分は後半に失速したし、シニアの選手は体力が最後まで落ちない。そこは課題ですね」

【ライバルとの巡り会いに「持っていたな」】そして真打登場となったのが三浦だろう。冒頭からループ、サルコウ、トーループの4回転3本をすべて成功。これだけで高得点を叩き出した。

「緊張した空気のなかで、最初の3つの4回転をバチッと決められて、『いっただろ』って思いました。後半はバテちゃったんですけどね」

三浦が振り返ったように、前半でほぼ勝負を決めた。165.53点でフリー3位、総合でも3位で表彰台に立っている。

「思ったよりも重い。努力の分の重みが詰まっているのかなって」

取材エリアでメダルをかけながら、三浦は感慨深げだった。スケート人生における勲章は、五輪出場と同義だ。

「(鍵山)優真や(佐藤)駿と一緒の表彰台に上がれるなんて、漫画みたいなことあるんですね。ふたりとはジュニアから一緒にスケートをやり、仲良くなってオフも過ごし、未来図を描いて......本当にドラマみたいです。表彰式も泣きそうになるくらいでした。ふたりがジュニアの頃からいなかったら、4回転も試みてないし、全日本で表彰台に乗れていない。ふたりとの巡り会いは"持っていたな"って思いますね」

三浦は湧き上がる喜びを持て余すように、明るい声を出していた。

一方、鍵山は無念さで声も小さくなった。連覇に成功したが、トリプルアクセルがシングルになるミスもあり、自分を許せないのだろう。キス・アンド・クライではタオルで顔を覆い、涙を流していた。

「弱いな」

自らを叱咤する言葉を繰り返した。優勝に甘んじない。それは五輪に向けた決意表明だった。

「自分の正解を見つけるしかない」

鍵山は決然と語ったが、その覚悟がエースの証明だ。

全日本の男子シングルはひとつの幕を下ろしている。人生をかけたスケーターたちの物語があった。それは全日本の歴史となり、さらなる混沌を生み出すのだ。

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