「シビル・ウォーアメリカ最後の日」で国家の分断と内戦をリアルに描き議論を巻き起こした鬼才アレックス・ガーランド監督が、同作で軍事アドバイザーを務め、米軍特殊部隊の経歴を持つレイ・メンドーサを共同監督に迎えたA24製作の新作「ウォーフェア戦地最前線」を、“撃つ者”“撮る者”“殺す者”“生き延びた者”という4つの視点からひも解き、人間の本性に迫る映画4選を紹介する。
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【動画】「ウォーフェア戦地最前線」本予告(立体音響/※イヤホン装着推奨)
■兵士の視点から
「ウォーフェア戦地最前線」
舞台は2006年、アメリカ軍特殊部隊8名の小隊は、イラクの危険地帯・ラマディで、アルカイダ幹部の監視と狙撃の任務に就いていた。ところが、想定よりも早く事態を察知した敵兵が先制攻撃を仕掛け、市街で突如全面衝突が始まる。退路もなく敵兵に完全包囲される中、重傷者が続出。部隊の指揮をとることを諦める者、本部との通信を断つ者、悲鳴を上げる者……負傷した仲間をひきずり放心状態の隊員たちに、さらなる銃弾が降り注ぐ。小隊は逃げ場のないウォーフェア(=戦闘)から如何にして脱出するのか――。
共同監督を担うのは、実際にこの戦闘を経験し、「シビル・ウォー」では軍事アドバイザーを務め、戦闘シーンを“本物”の緊張感で描き切り、一躍注目を集めたレイ・メンドーサ。「この映画は彼らの記憶だけに基づいている」――映画冒頭の一文が示す通り、本作は最初から最後まで<兵士の視点>のみで進行している。そこにはヒーロー的な展開もなければ、奇跡の救助もなく、あるのは痛み、恐怖、不安といった極限下の感情だけ。それらが観客にそのまま流れ込み、気がつけば“観ている”のではなく“そこにいる”感覚になっている――。
■記者の視点から
「シビル・ウォーアメリカ最後の日」(24)
舞台は、連邦政府から19州が離脱した分断国家アメリカ。テキサスとカリフォルニアを中心とする“西部勢力”と政府軍の内戦が激化する中、3期目となった大統領は勝利を宣言するが、首都ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。
兵士ではなくジャーナリストの視点から最前線を描き、戦争を「戦う側」ではなく「伝える側」から見つめる構造が大きな話題を呼び、日米公開時、ともにNo1を獲得した話題作。戦争の暴力と混乱をそのまま突きつける演出や善悪を単純化せず、実戦経験者の知見を反映した銃撃や音響による圧倒的な没入感も支持を集め、分断、権力、メディアの役割を問いかける現代的寓話として、議論を呼び起こした。
■加害者の視点から
「アクト・オブ・キリング」(14)
1960年代にインドネシアで行われた大量虐殺を加害者側の視点から描いたドキュメンタリー。60年代、秘密裏に100万人規模の大虐殺を行っていた実行者は、軍ではなく、民間のやくざや民兵組織“プレマン”であり、彼らは国民的英雄として暮らしていた。その事実を取材していた米テキサス出身の映像作家ジョシュア・オッペンハイマー監督は、当局から被害者への接触を禁止されたことをきっかけに、取材対象を加害者側に切り替えた。映画製作に喜ぶ加害者は、オッペンハイマー監督の「カメラの前で自ら演じてみないか」という提案に応じ、意気揚々と過去の行為を再現していく。やがて、過去を演じることを通じて、加害者たちに変化が訪れる――。
大量虐殺を<加害者の視点から>という前代未聞の手法で描き、米アカデミー賞にもノミネートされた衝撃作。オッペンハイマー監督は、虐殺の実行者たちに自らの行為を“好きな映画ジャンル”で再現するよう提案する。彼らは誇らしげに演じ始めるが、その過程で正義として語ってきた暴力と記憶が徐々に揺らぎ出す。本作は虐殺を単に記録するのではなく、加害者の想像力と自己演出を可視化することで、「なぜ人は大量殺戮を正当化できるのか」という根源的な問いを突きつけている。
■生きのびた者の視点から
「7月4日に生まれて」(90)
アメリカ独立記念日に生まれたベトナム帰還兵の青年ロン(トム・クルーズ)が、心の葛藤を経て反戦運動に身を投じてゆく姿を、実話を基に描いたドラマ。ロン・コーヴィックの同名小説が基になっている。ロンは強い愛国心を胸に、海兵隊へ入隊。1967年、ベトナム戦争の最前線に送り込まれた彼は、戦闘の混乱の中で誤って戦友を撃ち、自身も脊髄に重傷を負い下半身不随になってしまう。その後、海兵病院で懸命にリハビリに取り組むが奇跡はおこらず、故郷へ戻り車椅子での生活を余儀なくされる。やがて全米に広がる反戦デモの高まりの中で、自らの戦いと存在価値を否定されているように感じたロンは、深い絶望と孤独に飲み込まれていくー。
トム・クルーズが出演を熱望し、米アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた本作。ベトナムの戦場で負った傷とともに帰国した彼を待っていたのは、称賛ではなく、より過酷な「戦争の後」の現実だった。戦争が個人の人生と国家意識をいかに破壊していくのかを、鮮烈に突きつける一作。監督は、「ウォーフェア」のレイ・メンドーサと同じく帰還兵であり、「プラトーン」「JFK」などで知られるオリバー・ストーン。若き兵士の視点から戦場の現実と人間の崩壊を描き、「体験としての戦争」を観る者に刻み込んだ本作は、アカデミー賞作品賞・監督賞を含む4部門を受賞している。
「ウォーフェア戦地最前線」は、本作共同監督のレイ・メンドーサのイラク戦争での実体験を極限まで再現しており、同胞の兵士たちにも徹底した聞き取りを行い、脚本を執筆。フィクションでは決して描き得ない“戦争そのもの”をスクリーンに出現させる。海外メディアからは「映画史上最も緊迫感のある戦闘再現(Wall Street Journal)」「地獄を描くことに躊躇がない(EMPIRE MAGAZINE)」「神経をすり減らす程の衝撃。他の戦争映画とは一線を画す(NPR)」といった絶賛の声が挙がっている。1月16日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
【作品情報】
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ウォーフェア戦地最前線
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