南房総の山並みを縫うように伸びるアプローチを抜けた瞬間、空気の密度が変わった。エンジンの残響が地形に反射し、低く、そして確かに響いてくる。THE MAGARIGAWA CLUBで開催された「房走祭2025」は、単なる自動車イベントという言葉では収まりきらない、体験そのものだった。
【画像】 ”走って 観て 感じて!もっとワクワクを!”を体感できた特別な2日間(写真16点)
会場に足を踏み入れてまず感じたのは、来場者の層の広さだ。サーキット走行を主目的に訪れたエンスージアスト、展示車両をじっくり眺めるファミリー、カメラを構える若い世代。いずれにも共通していたのは、目の前で展開される”走る文化”を心から楽しもうとする熱量である。2日間で約4000人が集まったという数字にも納得がいった。
なかでも圧巻だったのが「BOSO Spirit of Drive」だ。約175台が集結した走行プログラムは、もはや国内イベントの枠を超えたスケール感を持っていた。もちろん台数だけで言えば規模の大きなイベントは国内でも少なからず存在するが、集まった車の顔ぶれは過去類を見ないほどのインパクトであったと言えるだろう。フェラーリ モンツァ SP1/SP2、デイトナ SP3、メルセデスAMG ONE、パガーニ、ブガッティといった名だたるハイパーカーが、マガリガワの起伏に富んだコースを実際に走るのだ。その光景は、静的展示では決して得られない説得力を伴って迫ってくる。観客席では、加速のたびにどよめきが起こり、ブレーキングポイントでは自然と息を呑む。グッドウッドFOSといった海外の名門イベントを想起させるという声が聞かれたのも、決して誇張ではない。
プロドライバーの存在も、この祭典に確かな厚みを与えていた。小林可夢偉、脇阪寿一、本山哲、山下健太、坪井翔、谷口信輝、ロニー・クインタレッリといった顔ぶれが揃い、同乗走行やファンサービスを通じて来場者と直接言葉を交わす。その距離感の近さは、サーキットという非日常の場にありながら、どこか温度のある記憶として残る。
一方、敷地内の「Concept Parking」は、また異なる魅力を放っていた。フェラーリやアストンマーティン、マクラーレン、パガーニといったスーパースポーツに加え、ポルシェ911 GT3やケイマン GT4、ランボルギーニ ディアブロ 6.0、マクラーレン 720Sや765LT スパイダーが並ぶ光景は壮観だ。それだけでなく、ニッサン GT-RやS15 スペックR、トヨタ GR86や86 GRMN、スープラ、スバル インプレッサ WRX STI、レクサス LC500、モーガン プラス8といった多彩な車両が同じ空間に置かれることで、このイベントが単一の価値観に縛られていないことが伝わってくる。来場者から「ここでしか見られない」という声が漏れるのも自然な反応だった。
房走祭を語るうえで欠かせないのが、地域との結びつきだ。南房総の食材を活かしたケータリングは、走行の合間にふと肩の力を抜かせてくれる存在だった。車と地域文化が無理なく同居している感覚は、会員制クラブであるマガリガワならではのホスピタリティとも言える。単に刺激的な音と速度を提供するだけでなく、滞在そのものを豊かに設計している点に、この場所の思想が表れていた。
房走祭2025を通じて強く印象に残ったのは、日本のカーライフカルチャーが確実に成熟の段階へ進んでいるという実感だ。希少な車両を集め、走らせ、観る。そのすべてを包み込む舞台として、THE MAGARIGAWA CLUBは極めて完成度の高い環境を提示している。祭りが終わったあとも、耳の奥に残るエンジン音と、房総の風景が不思議と重なって思い出される。房走祭は、確かに”走って、観て、感じる”という言葉を、そのまま体験として刻み込むイベントだった。
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