日本野球学会について語った山本キャスター
先日、広島で行なわれた「日本野球学会」に初めて参加しました。
この学会の母体となる集まりは2013年から続いており、「日本野球学会」という名称になってからは今年で3回目。「学会」という名の通り、研究者の方々の発表が主でした。身体の細かな使い方や技術に関する研究など、多岐にわたる発表が行なわれます。高校生も多く参加しており、今回は過去最多の参加人数だったとか。
私にお声がかかったのは「野球科学の魅力と可能性」というテーマのシンポジウムでした。そこでは、イップスをきっかけにプロ野球を離れ、現在は大学院でイップスの研究に取り組んでいる元ロッテの島孝明さん、運動制御などの研究の若きリーダー・草深あやねさん、そしてスポーツアナリストの金沢慧さんとご一緒し、座談会形式で進んでいきました。
島さんはイップスに対して、粘着物質を使うことで感覚を取り戻せるのではないか、という研究をしています。草深さんの研究は多岐に渡りますが、投手が丸型の的と人型の的、そして実際に人に対してに投げた場合で、球速以外の精度に違いが出るという研究も非常に興味深いものでした。こういった研究から「コントロールがいい投手とは何か」を探るというアプローチがとても面白かったですね。
このシンポジウムの目的は、野球科学は単にスポーツを分析するだけでなく、人間そのものの理解につなげ、野球を通して人々の生活を豊かにする、ということです。その理念もそうですし、懸命に研究している方がたくさんいることに、驚き、そして感動しました。
先生......!!大変、身に余る肩書きをいただいてしまいました。
開催前日にはプレカンファレンスとして、マツダスタジアムでのツアーも行なわれました。広島のアナリストやトレーナーの方から直接話を聞く機会もあり、非常に貴重な経験となりました。
今回ご一緒したみなさん。学会を通して、素敵な出会いが多くありました。
他球団のアナリストの方々ともお会いでき、球団ごとのアナリストの考え方や役割の違いを知ることができたのも収穫です。今年から巨人のアナリストを務めている元ヤクルトの奥村展征さんにもお会いできました。この連載でもご紹介した、ロッテの打撃コーディネーターの矢沢大智さんとお話しできたのも嬉しかったです。
学会の発表の中で個人的に印象に残ったのは、野球選手の競争心の高さが成績にどう影響するのかを行動経済学の視点から分析する研究。あと、カフェイン摂取がパフォーマンスに与える影響を検証した研究も面白かったですね。結果として明確な効果は見られず、プラセボ的な側面が強いとか。
また、配球に関する研究もありました。「内角ストレートのあとに外角スライダー」というよく見る配球を、心理物理学の観点から説明するんですが、あそこまで論理的に分析できる熱意と情熱に感動しました。
2日間の学会でしたが、私はずっとハッピーでした。野球が本当に好きな人たちがあんなにも真剣に考え、研究している世界があることを知れたからかもしれません。
研究者という道に憧れを抱くほどで、「いつか野球を科学的に研究してみたい」という思いも膨らんだ日本野球学会でした。来年も同じ時期に開催されるとのことなので、また参加できたら嬉しいです。みなさんも、学会に注目してみてください。
それではまた来週。
構成/キンマサタカ撮影/栗山秀作
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