「おもんない、レベル低い」粗品の審査は『THE W』の救世主となったのか? パワハラNG時代に“本音”を言う価値

画像:「女芸人No.1決定戦 THE W 2025」(日本テレビ系)公式サイトより

「おもんない、レベル低い」粗品の審査は『THE W』の救世主となったのか? パワハラNG時代に“本音”を言う価値

12月16日(火) 8:46

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12月13日、女性芸人のナンバーワンを決める『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)が開催され、芸歴21年のニッチェが優勝し、幕を閉じました。

ファイナリストやネタ以上に、話題になったのが、M-1王者である霜降り明星・粗品さんの審査です。『第14回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ系)でも審査を担当し、その際も手厳しくも的確な評が話題になった粗品さん。

『THE W』でも、粗品節は健在で、Xで「粗品さん」「粗品の審査」等のワードがトレンドになるほどでした。

ただの感想ではなかった粗品の審査



Aブロック1組目の「もめんと」と2組目の「電気ジュース」の対戦後、さっそく話を振られた粗品さんは「ちょっと長くしゃべっていいですか?」と切り出し、圧倒的大差で勝利した「もめんと」に対し「大前提ウケすぎ。そこまで面白くなかったです」。

票を入れた電気ジュースに対しても「全く漫才になってない。ラジオとかXの一言ネタの羅列の発表会や」と辛らつな評価で会場を凍らせました。バラエティ的なノリで「もう黙ってくれやお前!」と突っ込んださらば青春の光の森田さんに対しても「スカしたらあかんで」と諭すなど、期待通りの粗品節。

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しかし、その審査はただの苦言や感想ではなく、ウケなかった理由の分析や具体的なアドバイスまでしており、真面目に審査に向き合い、『THE W』や、お笑いへの熱い思いがひしひしと伝わるものでした。

格落ち感のあった『THE W』



『THE W』は、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)『キングオブコント』(TBS系)『R-1グランプリ』(フジテレビ系)というゴールデンタイムに放映される賞レースに比べ、どこか格落ち感が強い印象があります。

M-1で2回戦落ちのコンビ(グループ)や、芸歴やコンビ歴が浅い芸人さんがぞろりとファイナリストに名を連ね、実績、知名度とともに、他の賞レースとの差が歴然だからからです。正直、粗品さんの言葉を借りれば「おもんない、レベル低い」部分がありました。

ほか審査員からも零れた本音



にもかかわらず、バラエティとしての体裁をとるためか司会やサポーター、演出で無理やり盛り上げて進行。その上、2択投票後の審査員の講評も、「どちらも面白かった」「最後まで迷った」と褒めてばかり。明らかにひと笑いも起きなかった芸人さんに対しても、厳しい講評を耳にすることはありませんでした。

しかし、それも去年までのことです。粗品さんが審査員に就任したことにより、ふんわりとした誉め言葉ばかりだった審査に、新しい風が吹きました。

追随するかのように、哲夫さんも、とんでもあやさんに対して「わけがわかりませんでした」とバッサリ。友近さんも紺野ぶるまさんへの評の中で「面白いところを探すんじゃなくて、(紺野さんのネタは)ちゃんと面白い」と、他の女性芸人のネタへの辛辣な感想がポロリと出ていました。

楽しいお遊戯会だった今までの大会とは違い、ちゃんとした賞レースになっていた本年。最終決戦が実績実力十分の3組だったことがそれを表しています。粗品さんがXやYouTubeで「俺がTHE Wを救う」と宣言した通り、近年ではもっとも視聴者満足度の高い大会になったのではないでしょうか。

パワハラに厳しい時代、苦言は賞レースの花?



スパルタ的発想や、カスハラ、パワハラが社会問題となり、他人に対して厳しい指摘や苦言を呈することがしにくくなっているこの時代。一般社会だけでなく、昨今のお笑い賞レース審査の場でもその風潮が現れていました。

SNSによって番組放送後、視聴者から審査員が審査され、批判されることも多くなり、実績のある審査員でも、テンプレのような評しか聞けない賞レースが続いていたことは確かです。

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また、バラエティ番組で現役の芸人さんが審査員をつとめることが多くなったこともあるでしょう。番組の空気を壊さぬよう、気遣いし、過去にネタに厳しいダメ出しをされた経験から、後輩に対して自分と同じ思いはさせまいと優しくなっていることもあるかもしれません。

ですが、賞レースで評価を集めるのはむしろ正直な苦言の方なのです。

視聴者のガス抜きになった、粗品の言語化能力



今年のキングオブコントで審査員をつとめていたシソンヌのじろうさんが、しずるさんに対しての「ウケてなかったんですよ」という言葉や、2023年のM-1で山田邦子さんがさや香に放った「最後のネタ、全然良くなかった」という声は、その場の観客のみならず視聴者からも拍手喝采でした。

彼らのネタに対して視聴者が抱いたモヤモヤ感を、審査員がその立場でズバリ代弁してくれたという爽快感がありました。

過去の『THE W』での、無理やりいい部分を見つけ褒めることしかしない審査員に、視聴者のフラストレーションがたまるのは当然のことです。消化できなかった視聴者の不満の矛先がSNSに向かい、『THE W』自体への悪評に繋がっていったように思います。

ですが今回は何の不満も残らないいい大会でした。それは、「(後輩には)より面白くなってくれるように言いたいことは言う」(※YouTube「粗品 Official Channel」より)と、宣言し、言いたいことを代弁してくれて、ガス抜きをしてくれた粗品さんのおかげでもあるでしょう。

普段なら途中でチャンネルを変えたくなるようなネタでも、粗品さんがどう評価するのか……そんなワクワク感もスパイスになり、ネタをちゃんと最後まで見ようという気にもさせてくれました。

「粗品が思っていたこと言ってくれた」「単純なつまらないではなく、つまらない理由まで説明してくれた」「粗品が言ってくれてスッキリ!」など、その言語化能力を評価する声がSNSに溢れていました。

審査員の“芯”が試される



審査は審査員の“芯”が試されます。M-1の立川志らく氏はランジャタイなど奇想天外なネタが好きなことで審査員としての評価を高め、上沼恵美子氏は意味不明なものや自分と合わないものについては、私情も交えつつもキッパリと評価を下していました。

『しくじり先生』(テレビ朝日系/ABEMA)内で開催されるコント大会「キングオブう大」では、審査員長のかもめんたる・岩崎う大氏の細かく的確なアドバイスが芸人さんからも人気を博しています。

『THE W』では審査員として“芯”を見せつけた粗品さん。これからも多くの賞レースに審査員として参加し、マンネリ気味な賞レースをかき回して欲しいです。

<文/小政りょう>

【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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