名古屋で開催中の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」国際コンペティション部門出品作「無名の人生」鈴木竜也監督、「ニムエンダジュ」タニア・アナヤ監督、「死は存在しない」フェリックス・デフュール=ラペリエール監督による記者会見が12月15日実施された。
「誰にも本当の名前を呼ばれることの無かった男」の波乱に満ちた100年の生涯を描く鈴木監督の「無名の人生」は、個人制作が話題を集めているが、実写映画を作りたいと思って上京するも「仲間もお金もなく、バイト先の歌舞伎町のバーがコロナ禍で休みになって、iPadで描いてみた」とアニメーション制作の経緯を振り返り、「一人で作ることができるツールとしてアニメーションを作るようになりました。ジブリのようなぬるぬる動く絵にも憧れますが、個人の実力だけではかなわないので、いかに絵を動かさずにアニメーション映画として成立できるのか、という挑戦をした」と明かす。
アナヤ監督の「ニムエンダジュ」は、南米大陸の先住民とともに40年間生活したドイツ人の社会学者カート・ウンケルの人生を描く物語。「人類学の観点からいうと、先住民と白人は全く別の視点を持っています。私は実際に先住民が住む様々な集落を訪れて、彼らの視点からカート・ウンケルの人生を描くことができると思った。彼はドイツ人ですが先住民と結婚し、子供ももうけました」と作品のテーマを解説する。
デフュール=ラペリエール監督の「死は存在しない」は、活動家の女性が主人公の物語。「政治的な暴力と活動も含めて決意や責任感、忠実さ、誠実性」がテーマだといい、独自の表現方法について「リアリティの根源にあるものを描いています。緊張感は人物と抽象的なものの間で描き、ラディカルなものを示しました。プレーンな色はイメージの源を示し、色とテクスチャーで激しさ、複雑さを提示しました」と語る。
インディペンデントで長編アニメーション作品を制作にするにあたっての資金調達や支援があるか否かについて問われると、クラウドファンディングを募ったという鈴木監督は、「家賃がもったいないので仙台の実家に帰って毎日12時間~15時間を費やしました。実際に公開するまで2年以上かかって収入ができましたが、それまで無給だったので、また制作し、完成しても公開までお金が入らないという不安がある」と吐露。「もちろんいろんな公的な支援もあると思うんですが、そういうシステムがあることは、自分で調べないとわからないのでアピールをもっとしてほしい」と願望を述べた。
今作の完成までに13年かかったと話すアナヤ監督は「この作品は、ブラジルにおける政治的な変化を反映しており、それが原因で2度中断しました。例えば、右派のボルソナロ政権下では制作に様々な困難がありましたが、ペルーの援助を受けられました。政策によって左右され、困難を伴うこともあります。ブラジルでクラウドファンディングを実施することもほぼ不可能です」と明かした。
カナダのデフュール=ラペリエール監督は「私は兄弟と一緒に12年前に制作スタジオを立ち上げました。そして、ケベック市民はエンターテインメントに興味を持ってくださっているので、全体の90パーセントぐらいが基金に支えられています。もちろんコンペで選ばれるのは難しいですが、一度成功すれば自由に映画を作れます。インディペンデントフィルムの財政的なリスクは大きいですが、やりがいを感じています」と現状を報告した。
「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)は12月17日まで、愛知県名古屋市で開催。チケットは公式サイト(https://aniaff.com/)で発売中。
【作品情報】
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無名の人生
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