厚生労働省の「医療施設調査」によると、美容外科を標榜する診療所は'20年から3年間で43.6%増。右肩上がりの市場の裏側で、生死に関わる後遺症や生活が破綻するケースも急増している。医師、被害者に聞き知られざる実態に迫った!
整形失敗のリカバリー窓口がほぼない!
近年、美容整形によるトラブルが急増している。国民生活センターへの相談件数が'20年度の2000件超から、'24年度には年間1万件超、およそ5倍に跳ね上がった。
こうした状況について語るのは、日本医科大学形成外科教室で「美容後遺症外来」を担当する朝日林太郎医師だ。
「一因として、美容クリニックの数が急増した一方、トラブルを扱う窓口がほとんど増えていない点が挙げられます」
同外来は30年以上前から設けられており、現在は毎週木曜午前中のみの受け付けだが、それでも毎回20人前後の初診患者が訪れる。
同医師が入局した5年前と比べると、後遺症に悩む患者数は4~5倍に膨れ上がっているという。どこに相談していいのかわからない患者が、結果的にここに集中してしまうのだ。
「実際に多いのは、豊胸手術の後遺症。出血や感染などで入院加療を要したケースも少なからずおられます。また、目の下のくま取り治療が原因で失明しかけた人もいます」
背景として、「直美」(研修医を終え、そのまま美容外科に就職する医師)が増えていることを指摘する声もある。
「経験が浅い段階では、埋没法やボトックス注射など、比較的リスクの低い治療を担当することが多いため、直美がトラブルを直接増やしているとは必ずしも言えません。ただし、事故や後遺症が起きた際の対応力が乏しいのは事実と思います」(同)
低リスクのはずが…「後遺症治療前はまともに歩けなかった」
佐藤由里さん(仮名・50代)は、街の皮膚科クリニックで額のしわを消すボトックス注射を受けたところ、数日後に左目が縮んだようになり、目が開きにくくなった。
「こんな顔では会社に行けないので数日欠勤しました。片目が見えないので方向感覚が掴めず転びそうになることも。施術した医師からは、ボトックスの大量投与による後遺症なので、効果が切れるまで待つしかないと言われました」
納得できなかった佐藤さんは情報を探し、後遺症の改善をうたう美容電気針のクリニックにたどり着く。
「3回通院して、ようやくほぼ元に戻りました。施術した医師に苦情を言うと失敗を認めてくれて、かかった費用はすべて負担してもらいました」
片目縮小、頰がボコボコ! 整形トラブルのリアル
YouTubeやインスタグラム、noteなどで美容情報を発信している「整形らびちゃん」さんは、整形歴20年以上。
骨格からパーツまで、顔全体を変える「1周」の整形を計5回、総額5000万円をかけて行ってきた。しかし、そんなベテランであっても、大きな失敗を経験した。
「最大の失敗は、小鼻縮小手術で残った傷を修復する手術で、逆に鼻が広がってしまったことです。その後、何軒か回ってそれを治す手術を受けましたがそれでも傷痕が残りました。顔の真ん中にこんなに大きな傷ができて本当にショックでした。今も傷痕を消すレーザーに通っています」
さらに、150万円をかけた「頬骨セットバック」手術でもトラブルがあった。
「頬骨を後ろに下げる整形で、骨についている肉も一緒に下がるのでたるまない、という説明を受けていました。ところが、実際にはひどくたるんでしまい、顔がボコボコになり、半年たっても治りませんでした。その修整がかなり大変で、最終的に550万円かかりました」
らびちゃんさんは、こうした失敗の原因をはっきり次のように語る。
「完全なカウンセリング不足です。本来なら、複数のクリニックを回って相談し、方法を検討すべきでした。それをきちんとやらなかったことが失敗に繋がったと思います」
医師の肩書は要確認。専門医も信頼できない
トラブルを避けるには?前出の朝日氏に、改めて聞いた。
「難しい面はありますが、まずは医師の経歴をきちんと確認することが重要」
ちなみに、日本で美容外科に深く関わる学会のうち、日本専門医機構が認定しているのは「日本形成外科学会」と「日本美容外科学会(JSAPS)」の2つのみだ。
JSAPS専門医は、形成外科専門医の資格を持っていなければ取得できない上位資格だ。医師の肩書として信頼できるのはこれと「日本形成外科学会専門医・指導医」。
一方で、いわゆる技術指導医、〇〇学会正会員といった肩書には、資格としての裏付けはほとんどない。
「例えば脂肪吸引は、形成外科専門医を取得するまで経験するものではありません。ただ、専門医の資格さえ持っていればレベルが高く、安全だと言い切れるわけでもない」
最近では、内科医や婦人科医が美容クリニックに名を連ねるケースも増えている。
「一定のトレーニングをきちんと受けていれば、治療内容によっては対応可能でしょう。ただ、トレーニングを受けられる施設は、極めて限られるのではないかと思います」
美容クリニックの数と患者数が増え続ける一方で、十分な技術を持つ医師や、トラブル相談の窓口は追いついていない。この不均衡が是正されない限り、被害は今後も増え続けるかもしれない。
【日本医科大学形成外科学教室・朝日林太郎氏】
日本形成外科学会専門医・指導医。日本美容外科学会(JSAPS)正会員。医学博士。大手美容クリニックでも美容診療や後遺症治療を提供
取材・文/和場まさみ
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