ジャファル・パナヒ監督、懲役刑宣告されたイランへの帰国を決心マラケシュ映画祭で胸中明かす

ジャファル・パナヒ監督

ジャファル・パナヒ監督、懲役刑宣告されたイランへの帰国を決心マラケシュ映画祭で胸中明かす

12月13日(土) 8:15

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12月1日、イラン当局から新たに1年の懲役と2年間の渡航を禁止する刑を欠席裁判で宣告されたジャファル・パナヒ監督が、モロッコのマラケシュ映画祭のトークに予定通り出席し、その胸の内を明かした。

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彼の新作「IT WAS JUST UN ACCIDENT(英題)」は、カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞を皮切りに、各国賞レースで注目を浴び、アカデミー賞ではフランス映画として(制作費のほとんどはフランス)国際長編映画賞にノミネートが決まり、ゴールデン・グローブ賞でも作品賞を含む4部門にノミネートされている。すでにヴェネチア、ベルリン、カンヌの三大映画祭で最高賞を受賞した経験を持つパナヒだが、今後さらに受賞が増えそうな勢いだ。

プロモーションのためアメリカに滞在していた彼は、アメリカからモロッコ入りをして登壇。マスコミはもちろん、地元の観客、学生も集まり大きな関心を浴びた。

開口一番パナヒ監督は、「今日、ここに来られて本当に光栄です」と挨拶。続けて「さまざまな映画祭を訪れて、いろいろな国の観客の反応を窺えることは、わたしにとってとても大切なことです。というのも、観客がどんなことに反応し、どのように受け取るのかということを知るのは、映画監督の役目のひとつだと思っているからです」と語った。

トークではこれまでの「オフサイド・ガールズ」「これは映画ではない」「人生タクシー」といった作品について語り、監督としてのインスピレーションについて尋ねられると、「自分はソーシャル・フィルム・メーカーで、つねに周りで起こることからインスピレーションを得ます。ゆえに自分のいる環境が変われば、作品にも影響を与えます。刑務所にいるときは、次回作にどんなものを作ろうかと頭のなかで想像するわけではなく、ひたすら周りを観察し、受刑者たちの話を聞いて、そのなかには自分が来る5年や10年も前からそこにいる人もいるわけですが、そういう人々の話を聞きながら、インスピレーションを得ます。そういった自分の体験と想像力の融合から映画が生まれます」と説明した。

またシリアスなテーマにも拘らず、つねにユーモアがある点について、「それが人生というものでしょう。悲しいこともあれば楽しいこともある。あとは物語を語る上でのバランスが重要ですが、いろいろな要素が混ざっているのはわたしにとって自然であり、同時に必要なことです。でもさまざまな国を訪れて感じたのは、笑いは文化と関係しているということ。イランでは標準的に人々は大変な状況にあっても笑いがあります。でもアメリカに行って、人々がもっとよく笑うことに気づきました。そしてアジアでは、人々はシリアスであまり笑わない印象を得ました」と独自の感想を述べた。

終盤のQ&Aでは、パナヒのファンだという観客から「どうかイランに帰らずに、外国で映画を撮り続けてください」という声も上がったが、これに対して彼は、「イランはわたしの国で、イランこそわたしに物語を撮るインスピレーションを与えてくれる。イランを離れて暮らすことは考えられません。現在おこなっている一連の賞レースのプロモーションが終わったら、イランに帰国します」と宣言した。

今回の判決は「プロパガンダの活動」が理由だというが、パナヒ監督の弁護士によればそれ以上の詳しい理由は述べられていないとか。弁護士はこれから上訴する予定であるという。

イランではアカデミー賞に向けたイラン映画代表作品があるゆえに、反体制的内容の「外国映画」のプロモーション活動をするパナヒ監督への戒めと受け止められなくもない。(佐藤久理子)

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人生タクシー

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