「ヘレディタリー継承」「ミッドサマー」「ボーはおそれている」で知られるアリ・アスター監督の最新作「エディントンへようこそ」が、12月12日に日本公開を迎える。このほど、アスター監督が“日本愛”について語り尽くしたインタビューが披露された。
サンダンス映画祭でのプレミアをきっかけに世界を震撼させた長編デビュー作「ヘレディタリー継承」では“血”と“運命”に縛られた家族、続く「ミッドサマー」では、真昼の光の下で暴走する伝統と共同体を描き、避けられない社会の暴力を突きつけ、「ボーはおそれている」では、母への恐怖と妄想に呑み込まれていく悪夢を形にしたアスター監督。怪物ではなく、“人間が生む恐怖”と向き合ってきたアスター監督が、最新作で挑んだのは、SNSが支配するする現代社会。そこでは、誰もが平等に“破滅”へ導かれる――エゴと対立が連鎖する世界が待ち受けている。
「エディントンへようこそ」の舞台は2020年、ニューメキシコ州の小さな町、エディントン。コロナ禍で町はロックダウンされ、息苦しい隔離生活の中、住民たちの不満と不安は爆発寸前。保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)は、IT企業誘致で町を“救おう”とする野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と“マスクをするしない”の小競り合いから対立し「俺が市長になる!」と突如、市長選に立候補する。ジョーとテッドの諍いの火は周囲に広がっていき、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同じ頃、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は、過激な動画配信者(オースティン・バトラー)の扇動動画に心を奪われ、陰謀論にハマっていく。
アスター監督が本作の製作にあたって「繰り返し頭に浮かんでいた」と明かすのは、日本映画界の巨匠・今村昌平監督の作品群だった。「昔から大好きな映画監督」として「『楢山節考』(1983)や『神々の深き欲望』(1968)、『ええじゃないか』(1981)だ」と作品名を挙げ「社会学的考察にもとづいているし、彼の多くの作品がそうであるように小さな村が舞台になってる」「どの作品もとても洗練されていて、美しく繊細。それでいて、冒涜的でダーク。そして、ものすごく面白い」とその魅力に言及する。
「今村監督のユーモアのセンスも、僕に大きな影響を与えている」と語っているように、国と時代が違いながらも「社会が人間を狂わせる」という視点で深く響き合う監督同士であることを窺わせる。
また、日本文化への深い愛情でも知られるアスター監督は、将来的な“日本を舞台にした映画製作”についてもコメント。「日本で映画を撮るなら、どこか離島を舞台にしたいかも」「イメージしているのは、新藤兼人監督の『裸の島』(1960)。本当に美しい映画だよね」と絶賛。さらに、以前日本を訪れた際には、直島を訪れたと明かし、「直島の美しさに心から感銘を受けた。そこで撮ってもいいかもね」と、日本での撮影への期待をにじませた。
「エディントンへようこそ」は、12月12日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
【作品情報】
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エディントンへようこそ
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