冬になると孤独死などの特殊清掃の仕事は減り、閑散期を迎えることになるという。だが、その代わりに“別の案件”が舞い込んでくるのだとか。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネルYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、冬場の特殊清掃業者の仕事内容について話を聞いた。
寒い季節になると仕事の内容が変化
夏場は孤独死案件が多いが、冬になると特殊清掃業者の仕事も内容が変わってくるという。
「寒くなってくると、特殊清掃の案件がガクッとへるんですよね。特殊清掃業者は基本的に冬は閑散期と言われています。冬に孤独死が減るというわけではないのですが、気温が低いので孤独死が見つかった時に遺体の損壊が少なく、業者に頼らなくても自分たちで清掃できてしまうんです。ただ、雑な清掃をしたことにより、冬が終わって暖かくなってくると、臭いが発生してしまうというケースは多いです。5月以降の暖かくなってきたタイミングで特殊清掃の依頼が増えるのは、こういった理由です」
なぜ、暖かくなると臭いが発生するのだろうか。
「部屋の中って、壁などに多孔質素材と呼ばれる小さな穴が空いた材料が使われているんです。その穴が温度が下がると小さくなるので、吸収された臭いの物質が出てこないんですが、自己判断で“このくらいの清掃で大丈夫だろう”と思っていると、後で痛い目をみることになります」
冬の特殊清掃業務は、夏場よりも厄介なことが多い。
「冬場は、部屋を温めて臭い成分が感知できる状態で清掃をしなくてはなりません。寒いとどこに匂いの原因物質があるのかがわからなくなってしまいます。温めるために家の暖房を使わせてもらうと、ダクトに臭い成分がついてしまうので、大きな暖房器具を自社から持ってこなくてはいけません。その暖房を使って部屋の温度を上げてから清掃という工程になるので、夏場は2日で終わる作業が5日かかってしまうこともザラにあります。なので、冬の特殊清掃は夏よりも工賃が上がる傾向にあります」
臭いが全然しないぶん、作業費用が安くなると思ってしまいがちだが、見積もりを見て驚く依頼主は多いという。
「臭いがしなくても、使う薬剤は一緒だし、完全に除去しなくてはいけません。たしかに、夏場の方が腐敗が早かったりと、におい分子は多くなりますが、冬の場合は作業工程が増えるので工賃が上がります。
なので、簡単な清掃だけ自分たちでして、しばらく放っておいて夏場に臭いが出てから特殊清掃を依頼してくるといったケースは多いです。また、臭いがあまりしないということで、30万円くらいの安い特殊清掃業者に頼んだけど、入居者が入って、暖房を入れた途端に『臭いのでなんとかしてくれ!』とトラブルに発展することも多々あります。そこからまた50万円の業者を入れて、合計80万円もかかってしまったという事案は多いです。臭いがしないからといって安いプランで清掃をしてしまうのは、安物買いの銭失いのようなパターンになりがちです」
冬はゴミ屋敷の清掃や引っ越し手伝いの依頼が増加
閑散期の冬場だが、営業は大丈夫なのだろうか。
「特殊清掃の仕事は減りますが、全体的な仕事量はあまり変わりません。なぜかというと、特殊清掃の代わりにゴミ屋敷清掃の相談が増えてくるからです。12月以降は引っ越しをする人が増えるので、引っ越しに伴う依頼が増えます。引っ越しの予定があるが、まったく片付いていないので我々で引っ越しができるような状況まで清掃をするというような仕事ですね。
また、ついでに引っ越しの手伝いをしてほしいという依頼を受けることがあります。一応、軽貨物の許可は持ってるので軽車両で済む運搬料であれば対応したりします。ただ、私たちは引っ越しの専門業者ではないので、荷物の何個かを新居に運ぶくらいなら対応しますけど、全てを運んでくれみたいな大かがりなものはできません」
他には引っ越しに伴う清掃、消臭業務が増えてくる。
「毎年必ず出てくる依頼なのですが『引っ越しするのでペット臭を取ってくれ』というものです。なぜかというと、依頼してくる方々は全員ペット禁止の物件で犬や猫を飼っていて、管理会社にバレたくないから『ペットを飼ってた痕跡を消してくれ』って感じですね。
とはいえ、証拠隠滅の完全な手伝いをして、共犯になるようなことはしません。消臭に伴う解体などの作業があると、まず管理会社に相談しなくてはなりません」
本来はペット不可の賃貸物件で「飼っていた痕跡を消して」
それでもペットがかじってしまった襖を直してほしいと言われるそうだ。
「黙って内装をいじると、器物破損で大家さんと我々の問題になってしまうので。我々に作業を頼むのであれば大家さんに連絡をして、『こういう依頼がきているのですが、我々で対応してもよろしいですか?』と確認を取らなくてはいけません。すると、ペットを飼ってた事実がバレてしまうので、違約金など様々なトラブルにつながるでしょう。我々がこっそりできることといえば、完全な消臭くらいです。ペットが傷つけた床などをキレイにすることはできません」
冬場は1日4、5件くらいは本来ペット禁止の賃貸物件での消臭の仕事があるという。
「内装をいじれるのは大家さんの意志だけなので、ペットの痕跡を消そうとして自分で工事するのは絶対にやめてください。動物の引っ掻き傷とかも上からハンマーを落としたりして、『ハンマーの傷です』とかごまかそうとしても、絶対にバレます。不動産屋さんは、いままで膨大な数の物件清掃に立ち会っているので、動物の痕跡を見逃しません。なので当然ですが、ペット不可の家で勝手に飼うことはやめましょう」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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