「捕獲したら殺すしかない」岩手県在住68歳男性が“クマ被害の実態”を語る。「山に放してもまた降りてくる」ワケ

茂男さん

「捕獲したら殺すしかない」岩手県在住68歳男性が“クマ被害の実態”を語る。「山に放してもまた降りてくる」ワケ

12月10日(水) 15:54

提供:
連日のように報道される、東北や北海道を中心としたクマの出没や人身被害。「今年は異常だ」「行楽で山に入るのは控えるべきか」など、不安の声が日本中を駆け巡っています。

しかし、岩手県の山間部で週末農家を営む 茂男さん(仮名・68) は、クマを一頭も見ていないといいます。

今回は茂男さんに、クマ被害を免れている要因や、動物との共生についての意見、都心部から東北に来る人への注意喚起を伺いました。

なぜかクマを見かけない

ーー茂男さんは岩手県のどちらにお住まいなのでしょうか。

茂男さん: 普段は市街地に住んでいて、週末は県内の別な市町村にある実家に帰って農作業をしています。

実家は40世帯ほど、人は90人いないぐらいの小さな集落です。テレビでは連日クマが話題になりますし、近頃は盛岡の中心部にも出たとのことで警戒しています。

ーー茂男さんのご実家は山に囲まれているとのことですが、クマの被害は出ていないでしょうか?

茂男さん: クマが出てもおかしくねえんだけど、なぜか実家にはあんまり来ないね。週末しか帰っていないけど、近所の人からもそういう話はなかったからね。

ーー例年はどうなんですか?

茂男さん: ぜんぜん被害はないね。クマが出た話は1、2回あるかもしれないけど、襲われた話は聞かないです。

ーー意外と出ないんですね。不思議ですね。

クマが隠れる場所を作らない

茂男さん: うちのあたりでは、道路脇とか空き地、田んぼや畑の周りの草を隅々まで刈っているんですよ。クマは警戒心があるから、隠れる場所がないために見かけないのかな。

ーー畑の草を刈って見晴らしをよくしておくのは、習慣なんですか?

茂男さん: うん。昔から辺りの人たちで空き地や田んぼなどの草を共同で刈るってことになっているんです。

ーー同じ市町村内でもクマによる被害が出ましたが、あのあたりでは草を刈る習慣がないんでしょうか?

茂男さん: あると思うんだけど、そこまでちゃんとやってねえんじゃねえかな。個人個人でやってくれってことで。私、実家のほうに帰ると年齢が若いほうなんですよ。周りは80代も多いから、自分の家の手入れをするのが大変なんだと思いますよ。

あと、この辺では生ゴミを外に出さないようにもしています。普通は田舎だと生ゴミを畑に撒いたりするけど、クマや鹿が来るからなるべく出さないように。

ーー生ゴミの管理と、隠れる場所である草木をなくすことも、被害を防いでいる要因の一つなのかもしれませんね。

茂男さん: 家があれば風よけのために木を植えるじゃないですか。そういうのが茂っていたりすると、クマも近づきやすいのかなと思ってね。

かえって、普段住んでいる市街地のほうが危ねえんじゃねえかと思ってるの。明け方新聞をポストから取りに外へ出るときも、周囲を見渡してから動くようにしていますよ。

クマ対策のためにやっていること

ーーでは、茂男さんは割と安心して農作業ができているのでしょうか?

茂男さん: そうだね。もちろん、周りを見ながら作業するけどね。

ーー山に入るときはどういう格好をされていかれるんですか?

茂男さん: 最近は怖いから山には入らないけど、農作業するときの服装で行っているな。

女房と二人でタラの芽を取りに入っていたけど、必ず「おー、おー」って声を出したり、鈴を持ちながら歩きますね。人間が来たぞって知らせる意味で。

ーー服装もそうですが、存在を知らせるのも大事なんですね。ちなみに、タラの芽採り以外で山に入ることもあるのでしょうか。

茂男さん: うちの前の池の水は山から引っ張っているので、春と秋に手入れするんですよ。ゴミが詰まったりなんだりして、流れてこなくなるときがあるから。

それで山中をちょっと上がっていくんだけど、5〜6年前に木のそばに熊のフンあったんですよ。これは熊がいたんだなと思ってね。でも、昔はそんなにクマの気配なんてなかった。

「昔はクマなんて会わなかった」変わってしまった山

ーー昔と今とでは、やはり山の様子は違いますか。

茂男さん: 私の小さい頃の家は山の中にぽつんと一軒家って感じだったけど、鹿やたぬき、ましてやクマになんて会わなかったですね。4〜50年前の話です。

小学生の頃、ひいばあちゃんと山の中を歩いて峠を超えた先の親戚の家に行ったんですよ。2〜3時間ぐらい歩いたんじゃないかな。それでも、ぜんぜん会わなかった。

ーー昔は、人と動物の生きる場所が明確に区別されていたのでしょうか。

茂男さん: 昔は山の手入れもしたんだけど、今は高齢化もあってあんまり行き届いてねえから、動物たちのエリアが広がってきているかもしれないですね。

最近は動物が多くなったと思いますよ。今年、お正月明けに小屋を見たら狐が死んでたんですよ、冷凍みたいになって。その前はハクビシン、10何年前はニホンカモシカが死んでいて。とくに食われた形跡はないんです。

ーークマとは言わず、動物の行動範囲が人間の生活圏まで広がっているのかもしれませんね。

痩せたクマと太ったシカ

ーー今年はとくにドングリが不作で、クマが人里に降りてきていると言われています。

茂男さん: 知り合いに聞いた話だと、猟友会が獣道に鹿の罠をかけているそうなんですよ。たまたま罠にクマが引っかかっていたそうですが、やせ細っていたと。代わりに、食べものに困っていない鹿はしっかり太っていたと聞きました。

ーー食べるものがなくて必死なんですね。そこで議論になるのが「駆除」か「共生」かという話です。

茂男さん: 愛護団体が殺しちゃダメだって言うけど、あなたたちが半年や1年、クマが出没する場所に住んでみろって言いたいですよね。

だって人間が殺されるんだから。クマと人間どっちが大事だって言えば、人間が大事でしょ。

確かにかわいそうだけど、里に降りてきたものは捕獲して殺すしかないと思うんだよ。捕獲して山に放してやると、また里に降りてくるから。

ーー人里の味を覚えた個体は、数年後にまた戻ってくると言いますよね。

茂男さん: 小グマの頃に人里に来て「ここに食べ物がある」と覚えると、2年経って成獣になってからも来るんですよね。山に食べ物があればいいんだけど、不作になれば降りてくるんです。

本当は動物も人間も共生するのが理想ですけどね。でも、命がかかっているから、綺麗事だけじゃ済まないのが現実です。

都会の人は「情報」を持って来てほしい

ーー最近はアウトドアブームもあり、都会から山に入る人も多いですが、今の山はおすすめできませんか。

茂男さん: 今は難しいと思いますよ。熊と遭遇したときの対処法なんてあるけど、実際に会ったらびっくりすると思うよ。後ずさりして逃げればいいとか、そんな冷静にいられるもんじゃない。小熊だって怖いし、突然襲ってくるからね。

ーー都心からの旅行者が東北に来るためには、どうすればいいでしょうか。

茂男さん: 今は腹が減って冬眠しないクマもいるからね。 都心の人たちはね、どこに行ってもいいんだけど、ある程度情報をもらったほうがいいんじゃないですかね。車で来るならまだいいけど、登山だとどこから出てくるか分かんないしさ。

ーーとりあえず行ってみようではなく、地元の情報を仕入れるのが大切ですね。

茂男さん: そう。市役所とか観光ガイドみたいなのに聞いたほうがいい。今度いとこ会で県内の温泉に行くんだけど、東京の親戚から「クマ大丈夫か?」って聞かれたから「露天風呂はないから大丈夫だ」って冗談言ったんだけどさ(笑)。露天風呂でもこの前、被害が出たからね。

「今は東北に来ないで」とまではもちろん言わないから、来るときは情報をよく確認して来てくださいね。

ーー私たちにできることは、情報を取り入れつつ正しく恐れることなのかもしれませんね。これから一層寒くなりますが、油断せず気をつけていこうと思います。

<取材・文・撮影/松浦さとみ>

【松浦さとみ】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。ギャルやゴスロリなどのサブカルチャーにも関心があり、日本文化の逆輸入現象は見逃せないテーマのひとつ。X:@bleu_perfume

【関連記事】
158kgのヒグマに襲われ、全身140針を縫う大けがを負った男性が語る一部始終「最初はクルマにはねられたと…」
岩手県の山中で「親子のツキノワグマ」に襲われた男性の恐怖体験。対策グッズがない人が取るべき行動とは
北海道・千歳市「半導体バブルで街にやってきたのは、クマと半グレ」住民が治安の悪化を懸念…公園で大麻を吸う若者まで
クマ被害死者数13人「人の味を知ったクマ」が増える恐怖。“冬眠しない個体”の出没に年末年始の対策は?
止まらないクマ被害「里山が過疎化しクマのエサ場に」専門家が語る“根本的解決策”とは?
日刊SPA!

生活 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ