F1第24戦アブダビGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
10番グリッドからアブダビGPの決勝に臨む角田裕毅(レッドブル)のマシンには、ハードタイヤが装着された。
角田に課されたのは、自身が入賞することよりも何よりも、マックス・フェルスタッペンのドライバーズタイトル獲得をアシストすることだった。そのためには、ランド・ノリス(マクラーレン)が4位以下に沈まなければならない。
だから角田は、可能なかぎり長くコース上に留まり、ピットインしたノリスを抑え込むことが至上命題だった。
角田裕毅の新たな挑戦はもう始まっているphoto by BOOZY
ミディアム勢がピットインして前が開けたところで、角田は好ペースで走った。そして23周目、ノリスが追いついてきたところで左右にマシンを振ってブロックを試みるが、16周もフレッシュなタイヤを履くノリスとのトラクション差は明らかで、なすすべなく抜かれてしまった。
フェルスタッペンは優勝したものの、ノリスが3位に入り、2ポイント差で激動の2025年シーズンのタイトルを獲得した。
「最大限ノリスを抑えようとしましたけど、なかなか抑えることができませんでした。最大限抵抗はしましたけど何もできなくて、1回で行かれてしまったので残念です」
2021年の最終戦アブダビGPでは、セルジオ・ペレス(当時レッドブル)がツイスティなセクター3で大幅にスロー走行をしてルイス・ハミルトン(当時メルセデスAMG)を抑え込み、フェルスタッペンの戴冠をアシストした経緯があった。
しかし角田は、セクター3で抑えることはせず、バックストレートで背後につかれてDRS(※)で簡単に抜かれてしまった。
※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくするドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。
「もう1周抑え込むことはできるかなと思いましたけど、彼はターン1〜5で最大限のパフォーマンスを発揮して一気にギャップを詰めて、すごくうまくやって(ターン6で)オーバーテイクしたんです。仮にセクター3でスローダウンしたとしてもターン1で抜かれていたでしょうし、特に大きな違いはなかったと思います」
【後半は運がまったくなかった】実際のところ、必要とされていたのはノリスにタイムロスさせることではなく、後方のシャルル・ルクレール(フェラーリ)にノリスを攻略させてノリスの順位を落とすことだった。
ただ、角田にはそのことがきちんと伝わっておらず、ルクレールとの三つ巴状態に持っていってノリスの隙を突かせるといったタクティクスを繰り広げるような走りにはならなかった。
フェルスタッペンのタイトル奪取がならなかったのみならず、角田はノリスへのブロックが複数回のライン変更と判定されて5秒加算ペナルティを科された。結果、本来ならハミルトン(フェラーリ)の前で8位フィニッシュできていたはずのチャンスをフイにした。
「謎の5秒加算ペナルティがあったのと、前後ともタイヤのオーバーヒートがけっこうひどかったので、オーバーテイクするのはかなり厳しかったですね」
ペースは決して悪くなく、フェルスタッペンのために自身を犠牲にした戦略でも十分に入賞ができるだけの速さがあった。しかし、ペナルティによって入賞を逃した。
予選の不運といい、決勝のペナルティといい、アブダビGPはまさしく今シーズンの角田の苦闘を象徴するようなレースになってしまった。
「運という言葉を使いたくはないですけど、シーズン後半は特に『運がまったくなかったな』と思います。自分がどうすることもできない部分でいろんなことが起きて、いいペースが見せられた時に限って、くだらないペナルティを科されてしまったり。ちょっとタフなシーズンでした。少なくとも僕は全力を尽くしましたし、それがすべてだと思います」
最後まで不完全燃焼のレースで、実力を発揮しきれなかった。実力に見合う結果をつかみ取ることができなかった。
だからこそ、「やれるだけやりきって悔いなし」というのではなく、このシート喪失という現実にも納得がいかないのだろう。そして、自分がシートを失ったという実感も持てないのだろう。
【事実を受け止め、再び歩き出せ】不運やチームのミスなど、自分の力ではどうすることもできない要因で失ったレースもあった。しかし、自分のミスやコミュニケーションミスなど、自分たちでなんとかできた要素もあった。
それを一つひとつ改善し、乗り越えてきた。カタールGPのスプリントや今回のアブダビGPの予選など、ようやく結果が出始めてきた。
「ユウキ、今年1年、本当にありがとう。君とともに戦えて光栄だったよ、アリガトウゴザイマス」
レース後、最後の無線で送ったレースエンジニアのリチャード・ウッドの言葉に、この8カ月間でともに乗り越えてきた苦労の数々がにじみ出ていた。そして、それが成長へと続くいい思い出に昇華しているのだということも。
その成長を、結果に結びつけられるかどうか、再びそのチャンスをつかめるかどうかは、角田次第だ。不完全燃焼のシーズンが悔しいなら、もう一度その舞台に立つしかない。そのためにやれる努力は、すべてやるしかない。
終わったという実感がないのは、喪失感から目を逸らしているからだ。自分がすべてを失い、ひとつのストーリーが終わったのだという事実と向き合い、受け止め、再び歩き出せ。
角田裕毅の新たな挑戦は、もう始まっている。
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