ルノー125年の記憶を売るということ|ルノーによる歴史的車両放出オークションがフラン工場にて開催!

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ルノー125年の記憶を売るということ|ルノーによる歴史的車両放出オークションがフラン工場にて開催!

12月8日(月) 12:11

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2025年12月7日、パリ西方フラン=シュル=セーヌにあるルノーの歴史的工場を舞台に、特別なオークションが開催される。Artcurial Motorcarsによる「The Renault Icons ― Sélection provenant de la collection Renault」。これは単なるクラシックカー・オークションではない。ルノーが125年以上にわたって蓄積してきた”企業の記憶”を、初めて公に市場へ解き放つ歴史的な瞬間である。

【画像】ルノーのF1マシン、コンセプトカー、プロトタイプなど、多くが非公開の貴重なコレクションがオークションに!(写真36点)

今回出品されるのは、ルノーが社内ミュージアムとして長年保管してきた歴史的車両、F1マシン、コンセプトカー、プロトタイプ、さらには工場で実際に使われていた時計や備品といったオートモビリアまでを含む、極めて幅広いコレクションだ。その多くは非公道車であり、「走るための車」ではなく、「語るための車」であることがこのオークションの性格を象徴している。

なぜ今、ルノーは”手放す”のか
ルノーが自らのヘリテージを市場へ送り出す背景には、2027年に予定されている新たなヘリテージ施設の開設計画がある。フラン工場敷地内に建設されるこの施設には、1898年のType Aから最新のコンセプトカー、F1マシン、アート作品、アーカイブまでを一体的に展示する巨大な「生きたミュージアム」が構想されている。

今回のオークションは、その準備段階として行われる”セレクション(選別)”でもある。重複する個体や保存方針上の整理対象となった車両を市場に委ね、同時にコレクションの中核をより明確に再構築する――これは単なる売却ではなく、未来へ向けたヘリテージ戦略の再編なのだ。

フラン=シュル=セーヌという場所の意味
会場となるフラン工場は、ルノーにとって特別な意味を持つ。1952年の操業開始以来、ここで生産されたルノー車は1800万台以上。ドーフィン、4CV、ルノー4、ルノー5、クリオ四世代、そしてZOEまで、フランスの国民車の歴史そのものがこの地で形づくられてきた。

近年この工場は「Refactory」として再出発し、リサイクルと再生を軸とした次世代モビリティ拠点へと姿を変えた。そして2027年、その延長線上にルノーのヘリテージ施設が誕生する。”生産の現場”が”記憶の現場”へ転換される過程において行われるオークション――それが今回の最大の象徴性である。

ルノーの原点を示す存在
1901年 ルノー Type D

今回のオークションを象徴する1台が、1901年式「ルノー Type D ヴォワチュレット」だ。1899年のType Aに続く改良型として登場し、同年にグラン・パレで開催された第3回パリ・モーターショーにも展示されたモデル系譜に属する。

単気筒エンジン、デ・ディオン機構、ダッシュボードの注油装置、レバー式操作系といった構成は、まさに自動車史の原点そのもの。1965年からルノーの公式コレクションとして保管されてきた由緒正しい個体で、ロンドン〜ブライトン・ベテラン・カー・ランへの参加資格も有する。推定価格は5万〜7万ユーロ。100年以上前のルノーが、なお”走る存在”として市場に姿を現す事実そのものが、このオークションの歴史的価値を雄弁に物語っている。


もうひとつの象徴
1898年 Type A の公式レプリカ

1898年、ルイ・ルノーが最初に製作したType A。その”神話的存在”を再現した1998年製の公式レプリカも出品される。これは創業100周年を記念し、メーカー主導でわずか8台のみ製作されたうちの1台である。注目すべきは、忠実なトランスミッションを備えた走行可能仕様である点だ。展示物ではなく、「動く最初のルノー」を体験できる存在であり、推定価格3万〜6万ユーロという設定は極めて戦略的でもある。


ルノーF1黄金期の”記憶”も並ぶ

カタログには1980〜90年代のF1マシンも多数含まれる。RE27B、RE30B、RE40、RE50、RE60、さらにはウイリアムズFW19、ベネトンB197といった”ルノーエンジン黄金時代”を象徴するシャシー群だ。これらの多くはショーカー、研究用シャシー、展示用個体であり、走行目的ではない。しかしそれゆえに、勝利の証明としてのF1マシンが、純粋な「技術遺産」として扱われている点が今回のオークションの本質でもある。



ルノーは過去を売っているのではない
ルノーは今回のオークションについて、「情熱ある愛好家に歴史の一部を託すための機会」と位置づけている。過去を清算する行為ではなく、未来に向かって歴史を再配分する行為だ。

フラン工場という”生産の記憶”の中で行われるこの放出は、2027年に誕生する新たなヘリテージ施設への明確な布石でもある。ルノーは今、自らの125年の歴史を「固定展示」から「循環する遺産」へと変えようとしている。

このオークションは、単なる名車売買の場ではない。ルノーというブランドが、これからも過去と未来を同時に走り続けるための、極めて象徴的な通過点なのである。


オークション開催情報
オークション名:The Renault Icons ― Sélection provenant de la collection Renault
開催日:2025年12月7日(日)13:00〜
会場:ルノー・フラン工場(Flins-sur-Seine)
Boulevard Pierre Lefaucheux, 78415 Aubergenville, France
主催:Artcurial Motorcars


写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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