角由紀子さん著『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』と、ひょんなことから出会ったジェーン・スーさん。
実は著書の中に書かれている引き寄せの法則に挑戦したものの、「あるもの」が邪魔をしてまったくできなかったとか。今回はそんなスーさんが、角さんの引き寄せ法についての体験と感想を語ります。
「ヘミシンク」で幽体離脱!? スーさんの挑戦
ジェーン・スー(以下、スー):
実はかなり以前に、引き寄せ系のベストセラー『ザ・シークレット』を読んだことがあるんですけど、書いてあることのほとんどが「何だ、普通じゃん」みたいなことばかりで全然ハマらなかったし、私の周囲にもスピリチュアルにドハマりしている人もいないんですが、角さんの本を読んだ時は「面白い!」と思って、自分のポッドキャストの番組で紹介しました。実は自分でもちょっと試してみたんですよ。
角由紀子(以下、角):
え! 何を?
スー:
脳波をさまざまな状態に導いて、かつ幽体離脱も可能になるという「ヘミシンク」です。ヘミシンクの音楽がApple Musicにたくさんあったのでとりあえず聴いてみました。角さんの本を読んで、脳がポイントというのは感じているものの、シータ波とかデルタ波とかさっぱりわからなかったんですけどね。で、新幹線の中で聞いたらウケました。新幹線がトンネルに入った時の雑音とまったく同じ音だったんです。イヤフォンつけても外しても同じ音だ!って(笑)。
(※ヘミシンク:モンロー研究所が開発した音響誘導技術。特定の音響信号と音楽、音声ガイダンスなどを組み合わせて、人間の脳波を特定の意識状態に誘導し、自己啓発や精神世界の探求、創造性の向上などに活用される)
角:
まだ何も起きないですか? 眠くなるとかはあります?
スー:
何も起きないけど眠くはなります。ヘミシンクの効果かどうかはわからないけど。だいたい常に眠いんで……。
角:
好きだと思うヘミシンクを何回も聞いてみてほしいですね。自転車に乗るのと一緒で、一発入れば、結構何回も幽体離脱できるので。
スー:
私、実は下戸なんです。だから、酔って自分を見失ったことが一度もない。そのせいか、幽体離脱なんて「怖い」の極みなんですよ。なぜみんなが体験したがるのかがわからなくて。
角:
でも今は、脳波コントロールができるガジェットも出てきているし、VRでも瞑想系のチャンネルが人気があるので、どんどん幽体離脱ができる人が増えると思います。
スー:
だから!何でみんな、そんなに幽体離脱がしたいんだよ!(笑)
角:
空を飛べますから……。
スー:
スピッツじゃないんだから(笑)。OVER THE SUN(※)に幽体離脱を経験したと言う人からメールが来たんですが、「究極的な自分の脳の中の遊戯」というようなことを言っていました。つまり脳の中でのものすごいリアリティ体験ということで、それならレジャーとしては楽しそうだなとは思います。
※TBSラジオのポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVERTHESUN』」
角:
ぜひ。
過集中で迎える未知の体験と理性の葛藤
スー:
そういえば、昔あまりにも集中力を欠いていたとき、破れかぶれにYouTubeで「集中できる音楽」みたいなのを聴きながら原稿を書いたんですよ。そしたら過集中してしまったのか、同じ敷地内で住人が亡くなっていて警察が来たことにも気がつかなかったことがあるんです。外に出たら警官だらけでびっくりしました。自分の状況が把握できないのが苦手なので、怖かったですね。自分で自分をコントロールしなきゃなと常に思っています。
角:
私も受験勉強で過集中になったことがありますけど、その時に部屋にUFOが来たんですよ……。だからスーさんもそのうち、UFOが来るかも?
スー:
いや……まさにそこです。私はどうしても理性の蓋が外れないんですよ。だからUFOは来ないでしょう(笑)。過集中止まりというか、理性の蓋が外れないと多分そういう経験はできない気がします。向こうから呼ばれても多分声は聞こえないし。
角:
でも外さないまま体験してほしいですね、ここまで来たら。外れて体験するの当たり前なので。ニュータイプになってほしい。
スー:
とにかく理性の蓋がめちゃくちゃ固いという自覚があって、ずーっと外したいとは思ってるんですけどガッチガチで全然ダメですね。
角:
ならばぜひ、南米の「アヤワスカ儀式」を受けていただきたいです。蓋が固い人ほどパカッ!と外れるので。
(※アヤワスカ儀式:アマゾン川流域に自生する麻薬性の植物「アヤワスカ」を用いたスピリチュアル儀式)
スー:
ご著書にもありましたね。6日間かけて儀式を行うとか、幻覚を見るとか、本当に気力体力がすごい。私なら「なんだか気持ち悪いですね」で終わりそう。いろんなものと出会わなさそう。
角:
アヤワスカにはそこを突破する力があると言われているんですよ。
スー:
怖いなー! あ、ご著書の中にあったタマエミチトレーニングの「逆再生」はやってみました。
角:
ホントですか! すごい!
スー:
角さんみたいに、1日12時間くらい再生と逆再生は繰り返せませんでしたが。
角:
いやあの頃はメンタルがめちゃくちゃ弱っていて、友人ともほぼ会っておらず、自分の殻に没入していたので……。
スー:
なるほど。あの逆再生をやってみて、つくづく自分はイメージングというものが苦手なんだと痛感しました。とにかく理屈が邪魔をするんです。瞑想でも「手のひらにピラミッドを乗せてください」と言われたら「待って! ピラミッドはどれくらいの大きさ? 手の上に乗っているの? それとも手の上で浮いているの? 材質は?」って、自分で自分がうるさいくらいの屁理屈が出てくるんです。
角:
あ~、それはダメですね(笑)。
妄想とイメージング、主観に悩むスーさんのジレンマ
スー:
私は一人っ子のせいか、何時間もずっと妄想していられるタチなんですけど、そういうことも含めてもっと自分の脳で遊べたら楽しいだろうなと思うんですが、なかなかうまくいかないですね。
角:
その妄想がイメージングにつながるんじゃないかな?
スー:
自分で自由に妄想するのはすごく好きなんですけど、「ピラミッドを想像してください」と言われると、もっと詳しい発注書をください!ってなっちゃう。人から発注されるのが苦手みたい(笑)。
角:
私も一人っ子なのでわかります(笑)。でもそもそも、人はみんな自分の主観で生きているので、瞑想中も自分の好きなようにやっちゃえばいいんですよ。
スー:
おっしゃるとおりですね。仕事のせいなのかなあ。そもそも、他者は自分と違う脳みそをもっているので、自分と同じものを見ている確証すら持てないわけです。にもかかわらず、どうにかして伝えたいという欲望が私にはある。文章を書くにしても、ラジオでしゃべるにしても、誰かと共有したいんですね。そうすると、漠とした主観だけでは足りないと思っちゃう。
具体的に伝えるために、やっぱり細かく探りたくなっちゃうわけですよ。伝える技術を磨いた結果、そこが逆にコンプレックスになってきていますね。昔は理知的であることを目指していたし、俯瞰で物を見ることを尊いことだと思っていたけど、結果的に主観が弱くなったというか、これではバランスが悪いなと思っています。
角:
主観が弱くなっているとはどういうことですか?
スー:
必ず他者の存在を意識しているということです。誰かから「ピラミッドをイメージしてください」と言われると、その人が考えるピラミッドと自分のピラミッドに乖離があってはならないと思ってしまう。以前の私の主観には、もう少し自由度があったはずなんだけど……という感じがするんです。
それは物書きという職業であるということもあるけれど、道を外したくないというか、角さんが言うところの「カッコ悪くなりたくない」というのと同じで、酩酊したいんだけど、したくないみたいな。「なに言ってるのかわからない」と言われるのが怖いのかな。
角:
あ~……でもそういう意味で言うと、私も「カッコ悪い」と言っていることに安心感を持っていたりもしますね。
スー:
逆にカッコ悪い人が羨ましくもありますよね。
角:
まさに。実際には何かが見えているのかもしれないし、そこにハマれているのも楽しそうだしっていうのもありますね。
スー:
羨ましくもあり、憎らしくもありっていうところだと思いますけどね。
「ヴィッパーサナー瞑想」と向き合う内面の変化
角:
いや、でも、私もスーさんの著書『介護未満の父に起きたこと』を読ませていただいたのですが、これは純粋に「ヴィッパーサナー瞑想」に近いなと思いました。
スー:
な、なんですって? ヴィ? ヴィ?
角:
ヴィッパーサナー瞑想です(笑)。これは自分に起きているが辛いこととか悲しいことだったりしても、俯瞰でそれを観察することによって、ずっと抱いていた怒りが消えたりまた戻ってきたりということを繰り返して、どんどん緩やかな波になっていくという瞑想法です。すごくお辛い時期もあったと思うんですけど、書くことによって救われたことも多かったと思いますし、読んでいる私にもそれが伝わって、正直最後の10ページくらい結構泣いちゃいましたね。
スー:
そんな感想初めてです。
角:
私はまだ親の介護を経験していませんが、介護するときのイメージが湧いてきて……。
スー:
出た!イメージ!イメージを鍛えているだけある!
角:
おそらくすごく冷たくあしらっちゃうんだろうなとか、スーさんんも自分の人生を台無しにするようなスケジュールで倒れる父親に怒りを感じたとか、自分の未来に起きることだと思うんですけど、一緒に体験できたような感じがして準備運動になりました。
スー:
ありがとうございます。
スー:
たまに摂取はしたくはなるんですよ。高額な占いとか、霊視できる人との会話とか。多分日常生活で自分が見えてるもの、物差しで測れるもの以外のものとの接点が欲しいっていうね。それはエンタメのレベルですけどね。
角:
どういう時にそういう気持ちになるんですか?
スー:
私の場合はパターン的に、しんどい時じゃなくて、暇な時とかに来るんですよね。しんどい時に来ると多分飲み込まれちゃうんだと思うんですけど、暇っていうのは別に時間があるとかじゃなくて脳が暇、みたいな時ですね。仕事はいっぱいあるし、やることもあるけど、考えることがあんまりないなみたいな時にそういうのを挟むと楽しい。角さんは、スピリチュアルと今どういう感じで付き合われてるんですか?
角:
私の場合は仕事にもなってしまってるんで……ただ、いまいちばん興味があるのはまさにスーさんがおっしゃられたように、能力者の見極めみたいなことを今やりたい。来年か再来年ぐらいにそれを本にまとめようと思ってるんですけど、だから今は月に3人ぐらいには見てもらってるんですよ。
【ジェーン・スー】
コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』を始めTBSポッドキャスト『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』、『となりの雑談』のパーソナリティーも務める。『へこたれてなんかいられない』(中央公論新社)、『介護未満の父に起きたこと』(新潮社)、『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』(光文社)など著書多数
【角由紀子】
上智大学中退後、白夜書房、BABジャパンでの編集経験を経て、株式会社サイゾーにて不思議系ウェブサイト「TOCANA」を開設。8年間編集長を務める。ウェブ編集の傍ら、映画の配給、企画、プロデュースなども兼任。テレビ番組「ネットで噂のヤバイニュース超真相」や「ケンドーコバヤシの絶対見ない方がいいテレビ」を企画・出演し、Amazonプライムやネットフリックスで配信。映画『三茶のポルターガイスト』『新・三茶のポルターガイスト』の制作・出演も
<文・取材/和場まさみ撮影/スギゾーヘアメイク/藤原リカ(ジェーン・スー)>
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