「40代後半」で東大医学部を目指す男性に、その理由を聞いた。精神科で「お前を20年閉じ込めるからな」と言われたことも

六花星さん

「40代後半」で東大医学部を目指す男性に、その理由を聞いた。精神科で「お前を20年閉じ込めるからな」と言われたことも

12月8日(月) 15:54

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40代を後半にして、東京大学理科Ⅲ類(医学部)を本気で目指す男性がいる。六花星さん(@932_onsen)だ。塾講師や私学教員として豊富な指導経験を持つが、持病である精神疾患の増悪のたびに職場を変えてきた。初老に差し掛かる彼の、人生について聞いた。

高2でうつ病になり、成績が急落

六花星さんは開口一番、「いわゆるADHDなんです」と明かした。IQ139という類稀な数値を持つ彼は、「教科書をもらったらすぐに読んでしまって、授業中にやることがなかった」と話す。その一方、幼い頃から奇行が目立った。

「幼稚園のとき、昼になるとお昼寝の時間があるのですが、私は寝ないで同級生の上履きを全員分洗ってしまったんです。そうした問題行動は、園内でもちょっとした話題になりました」

学力において神童的な位置づけだった六花星さんは、「やや教育熱心すぎる母親」の導きもあって、埼玉県の進学校に合格。スポーツにおいても優秀な成績を残し、文武両道を地で行く青年に成長した。だが学生時代を通じて、しばしば提出物を忘れるなどの問題は解消されないままだったという。

そんな六花星さんを突然の出来事が襲った。

「高校2年生のとき、うつ病になってしまいました。原因はいまだによくわかりません。何もやる気が起きず、勉強もあまりすることがないため、成績は急落しました」

二浪で早大進学、卒業後に東大に

現役時代は東大、早稲田、東京理科大学を受験し、東京理科大学のみ合格。浪人の道を選んだ。このとき、彼は家出を経験している。

「もともと、家庭にフラストレーションがあったのかもしません。アルコール依存症の父親と、学業に厳しい母親の間で、閉塞感はありました。別府温泉で住み込みで働かせてもらったんです。期間は半年ほどでしょうか。旅館の人に、『君はまだ若いんだから、大学へ行きなさい』と諭されて、自宅に戻りました」

一浪目は労働しかせず受験から離れたが、二浪目で早稲田大学理工学部に合格、進学することにした。早稲田大学を卒業したあと、すぐに東京大学に合格し、さらに大学生を続けた。東京大学では文学部独文科に所属し、優秀な成績を修めていたという。

悲しい別れにより、統合失調症の症状が

時間軸が前後するが、早稲田大学入学後、六花星さんにとって大きな出会いを経験した。

「アルバイト先に、当時高校生だった女の子がいました。彼女は専門学生を経て女優として活動をするようになりました。大学時代は、ずっとその女性と交際していました」

だが別れは突然に来る。「芸能関係での悩みが原因で」彼女は自死を決行。六花星さんを残して、亡くなってしまった。

「大学時代、あらゆる教職課程や司書資格、学芸員資格などを取得しようと頑張っていたことにくわえて、彼女の自死という現実が私にのしかかりました。非常に苦しく、統合失調症の症状が出てしまったんです」

それでも、六花星さんは精神科への通院を拒否した。

「抵抗感が強くて、精神科に行かずに治そうとしました。具体的には、海外から薬品を個人輸入してそれを服用することにしたんです」

東大を中退し、実家を追われる

卓越した頭脳を持つ六花星さんだが、医学の知識があるわけではない。幻聴や幻覚など、症状はどんどん悪化していった。

「心配してくれた女友達が『絶対におかしいから』と言うので、しぶしぶ精神科を受診しました。さまざまな病院を回ったあと、最終的に都立松沢病院に入院することになりました。入院の際の対応が親切で適切な治療がうけられたこともあり、回復をしました」

だが退院して通院に切り替えると悪化して、また入院して……を繰り返すことになる。くわえて、難病を含む数々の身体障害を患い、身体障害者手帳の等級も1級とされた。精神障害はもちろん、「身体障害との重複障害が何よりつらい」と六花星さんは話す。

最初の精神科病院入院の際は東京大学に在籍中だったが、授業についていけなくなり、中途退学を選択。その決断は母親を幻滅させ、実家暮らしだった六花星さんは家を追われることになった。

「20代なかばの頃、アルコール依存症だった父が肝臓がんで亡くなりました。そこから母子家庭ですが、母から家を出るように言われてしまいました。現在は精神疾患についての理解がある母ですが、当時はまだありませんでした。また、母自身、私以上のIQがあり、一流国立大学に合格する学力がありながら、家庭が貧しくそれすら通わせてもらえなかったことから、私の指導を熱心にした経緯があります。東大中退は大いに失望させてしまったのでしょう」

「お前を20年閉じ込めるからな」と言われた

前述の通り、仕事は塾講師や教員などの頭脳労働にありつけたが、社会から隔離されるたびに転職を繰り返すことになる。

六花星さんは一つの精神科と長く付き合うことをせず、自己判断で別のクリニックなどを受診するなどのくせがあった。そのせいで、紹介状を書いてもらえる病院がそのたびに異なり、治療の方針が定まらない時期が続いた。2012年に入院したある病院について、「屈辱的な仕打ちを受けた」と話す。

「原因は、病室でいじめられていた女の子を庇ったことでした。すると、保護室という、実質的な懲罰室に連れて行かれ、そればかりか病棟も移動させられました。そこは、20年に1人退院できるかどうかと言われている、長期入院の人がおおぜい収容されている場所です。そこで、ある医師に『お前を20年閉じ込めるからな』と言われました」

なぜ精神科医を目指すのか

だが、六花星さんは無事に退院が叶い、その10年後には結婚までした。「とはいえ、私の精神が安定せず、見限られて結婚生活は短いものでした」と肩を落とす。

現在の状況について、六花星さんは「松沢病院に転院して、非常に尊敬できる主治医と出会えました」と話す。そんな彼の夢は「医師になること」。それも、精神科医を志望している。それはなぜか。

「少し前まで、とある女子校で常勤として勤務していましたが、通勤中の事故で身体障害を負って泣く泣く退職することになりました。精神も大切ですが、一方で、身体障害を合併している患者に対応できる精神科医が少ないことに問題を感じました。私が精神科医を目指す強い動悸です。もし自分が精神科医になれたら、心身の症状を診ることのできる精神科医になりたいと思っているんです」

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どれほど卓抜した能力を有していても、精神における支障を来せば日常を取り戻すことは困難になる。まして六花星さんのように、長く愛したパートナーを唐突に喪うことは人生に濃くて暗い影を落とすだろう。一方で、人は持っている才覚で社会に貢献していくのだろうとも感じる。「身体障害にも理解の深い精神科医になりたい」。その明晰な頭脳で、叶えられる夢をすべて拾ってほしい。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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