東京ドームのスタンドを見て考えたことがある。
「このなかで本気で野球だけを観に来ている人は、どれほどいるんだろうか?」
私はラジオの解説で巨人の試合をちょくちょく見ていたが、スタンドにいるお客さんは、「巨人を応援する」というより、「東京ドームで開催されている『巨人戦』という名のイベントを楽しんでいる」気がしてならなかった。
※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。
「野球イベントを楽しんでいる」今のファンたち
今の時代、各球場で試合前からさまざまなイベントが催されている。いざ試合がはじまったあともそうだ。イニングとイニングの合間で、クイズや女性チアリーダーのダンスなどが行われ、これは試合終了後まで続いていく。
球団フロントの人たちが、どうにか球場に来たお客さんに楽しんでもらおうと躍起になり、あれやこれやと必死に企画を考える姿が容易に想像できる。「たくさんイベントをやれば球場が盛り上がる」と考えているのだろう。
だが、あいにく野球の本質からはかけ離れた発想だ。球場に来てもらっているのだから、お客さんには「プレーそのものを楽しんでもらおう」と考えるが普通だろう。そうではなく、イベントを優先する姿勢を残念に思う。
「野球以外のイベント」に熱心な球団関係者
プロである以上、本来は一流の選手が素晴らしいプレーを見せてくれればいいはずだ。ところが、今の12球団は、試合の前後や合間のイベントに注力しすぎている。野球以外の部分でお客さんを楽しませようとする意識が強すぎる。昔から野球の本質を知っている人たちからすると、興ざめすることもあるはずだ。
試合前後と試合中には、必ずホームチームを応援する女性チアリーダーが現れ、華やかなダンスを披露する。また、売り子もルックスのいい女性を揃えている。男性、とくにオヤジ世代のお客さんに対して、どうにかして単価の高いアルコール類を買ってもらおうと、手を変え品を変え、売り上げを伸ばそうとしている。
反面、NPB(日本野球機構)は、「試合時間の短縮」を唱え、12球団に至上命題を突き付けたかのような形だ。私からすると、「その解決策は簡単ですよ」と断言できる。
なぜなのか。その答えは、「5年前のことを思い出せばいい」だけだからだ。
イベントの影響で試合時間が伸びてしまっては…
2020年の1月下旬ごろから、世界中が大騒ぎになった新型コロナウイルスの蔓延。この年のプロ野球は無観客試合からのスタートとなった。通常、お客さんを入れた状態だと、3回、5回、7回にチアリーダーが登場するなど、イニングの合間にはさまざまなイベントが用意されている。
だが、無観客試合のときには、チアリーダーはもちろんのこと、ほかのイベントもすべてなくし、淡々と試合が進められた。すると、たとえば18時開始の試合が20時半前後に終わるわけだ。非常にスピーディーな展開といえよう。
プロ野球は、イニング間の攻守交替の時間を「2分15秒以内に行い、プレー再開をさせる」と定めている。この時間内にイベントも終わらせようとはしているわけだが、積もり積もって試合時間が間延びしてしまっては元も子もない。
「イベントなんかよりも、試合の内容のほうが大事じゃないか」
「試合で負けてばっかりのチームを応援したって面白くない」
こう主張するファンも実際に存在する。そのためには、華のある選手を獲得し、育てていくことが必須だが、この点をおろそかにしている球団が少なくない。
<談/江本孟紀>
【江本孟紀】
1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。
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