12月6日(土) 4:30
出産費用については、地域差や病院の設備、個室利用の有無などによって変わりますが、厚生労働省の調査では、2024年度上半期の正常分娩(ぶんべん)にかかる費用の平均は51万7952円となっています。
また、出産は基本的には保険適用にならないため、全額自己負担ですが、その代わりに「出産育児一時金」として原則50万円が支給されます。そのため、実際にかかる負担額は数万円~十数万円ほどに収まるケースが多いようです。
費用を折半するという点に焦点を当てると、夫婦双方への負担は少なく感じられるでしょう。しかし、出産に伴う負担は「お金」だけではありません。また、それを負担するのはほとんど妻側であることが多いため、「費用の折半」は実質的に不平等感があるとSNSでも議論を呼んでいるのです。
妊娠中は、つわりなどによる体調の変化を感じる人が多くいます。一日中気分が悪い、食事が思うように取れない、眠れないといったように、個人差はありますが、妊娠初期から出産直前まで何かしらの体調不良を抱えることがほとんどです。
また、出産時には、数時間にわたる痛みや1ヶ月近く続く出血、まれに緊急手術などの可能性もあり、命に関わることもあります。出産にはこうした「身体の大きな負担」があり、当然ですが、この負担を抱えるのは出産を行う妻だけです。
出産に伴い、産休・育休を取得する人も多いでしょう。育休は必ずしも妻が取らないといけないものではありませんが、授乳の観点・産後の体調・社会的慣習を考えると、妻が取得するというケースがほとんどでしょう。
育休中は給与が減ったり、無給期間があったり、仕事によっては復帰後の働き方を調整する必要が出る場合もあります。その結果、短期的にも長期的にも妻側の収入が下がる可能性があるでしょう。
復帰後も時短勤務を取得したり、子どもの急なお迎え対応が待っていたりします。これらも一般的に妻側が引き受けることが多く、昇進や評価のスピードが遅くなるケースもあるのです。このように見えない負担が妻側に偏っているため、「費用だけ折半にしても、本当に『公平』とは言えないのでは」という意見が集まりやすくなっているのでしょう。
出産費用について、「誰が支払うべき」という決まりはありません。実質的な負担は数万円から十数万円ほどであることが多いものの、妊娠・出産に関わる負担は、単なる「費用負担」では測れないということも覚えておきましょう。
また、これらの負担は妻側のみにかかるものが多くあります。目に見える「費用」だけで判断せず、妊娠・出産・育児での目に見えにくい「負担」を理解し、それによって起こる生活の変化を夫婦でどう支え合うかということが大切なのです。
厚生労働省 出産費用の状況等について
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
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