人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。
連載第14回では、10回目の登板となる八木美佐子アナが『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』を紹介。大人になっても消えない”変身願望”を手がかりに、作品が持つ独特の魅力を語ります。
大人だって変身する『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』
【関連写真】八木さんの変身ポーズをチェックする!
私は、変身したい。
コスプレイベントに通うようになったのは、この4年ほどのことです。ずっと「キャラを愛でる側」だと思い、自分には縁のない世界だと決めつけていましたが、思い切って飛び込んでみたら、拍子抜けするほど楽しくて。衣装やウィッグに身を包むと、自分という輪郭が少しぼやけて、そのキャラクターに一歩近づけたような気がします。
先日、ラジオ番組で「アナウンサーですから、八木さんも丁寧な方ですよね」と言われたとき、職業イメージと実際の自分とのギャップに思わず白目をむいて泡を吹きそうになりました。全く自慢になりませんが、私はズボラ王を決める選手権があるなら入賞できる自信があるほど筋金入りの大ズボラです。服を前後ろ逆に着たままテレビに出てしまったのは一度きりではありませんし、書道の師範なのに普段のメモ書きは誰にも読めません。自分でも読めません。故に、少なくとも仕事の場では「それっぽいアナウンサー」という仮面をそっとかぶってしまう――さながら自分なりの”ガラスの仮面”です。
だからこそ、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』を観たとき、何度も頷いてしまいました。現在放送中のアニメで、40歳独身の東島丹三郎が、子どもの頃から憧れていた仮面ライダー1号に本気でなろうとする物語です。夏祭りで買った仮面ライダー1号のお面をかぶり、悪の組織”ショッカー”に立ち向かっていきます。彼がお面をかぶるのは、世間から見れば少し痛々しく映るかもしれませんが、その姿に私は強いシンパシーを覚えました。
ライダーシリーズを知っている人ならニヤリとしてしまう変身ポーズのローアングルカットや、当時の特撮を思わせる引きやズームが随所に散りばめられつつ、アニメならではのスピードとパワーでまとめられています。仮面ライダーシリーズを夢中で観ていた頃の血が騒ぎ、あの頃に一気に引き戻されるような不思議な感覚がありました。とりわけ第1話で、本郷猛役を藤岡弘、さんご本人が演じているシーンは、”本物のヒーロー”がそのままアニメの中に現れたようで、まるでタイムマシンに乗ったかのような体験でした。
思い返せば、私のまわりにも仮面ライダーブームがありました。弟はスカイライダーをきっかけにソフビ集めにハマり、母は主人公たちを支える「おやっさん」の大ファンに。小学校の同じクラスには歴代仮面ライダーすべての変身ポーズを決められる山本くんがいて、対抗心を燃やした私は昭和仮面ライダーの名前をリズムで覚えて暗唱できるようになりました――そして、このアニメをきっかけに、今でも全部言えることを再確認しました。ありがとう、東島。
遅れてやってきた反抗期のような、遅れてやってきた変身期。
マイクの前に立つときも、コスプレをするときも、私はきっと心のどこかで小さく「変身」と唱えているのかもしれません。
『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』は、憧れを憧れのままにせず、大人だって、まだ変身していていい――そう思わせてくれる作品です。
だから、私も変身する。
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