12月6日(土) 4:20
NHKの受信料は、放送法第64条に基づき、テレビなどNHKの放送を受信できる受信設備を設置した世帯が契約し、支払う義務を負うものです。契約者が亡くなった場合でも、滞納分が残っていれば、それは「債務」として扱われます。
つまり、亡くなった時点で未払いとなっていた受信料は、相続財産に含まれる債務として、原則として相続人が引き継ぐことになります。
例えば、父親が生前1年間分の受信料を滞納していた場合、その分の請求がNHKから届くケースがあります。この請求は、法的に無効とは言い切れません。ただし、相続人が「必ずしも全額を支払わなければならない」と決まっているわけでもありません。
裁判所ウェブサイトによれば、相続が発生すると、相続人は3つの選択肢から相続方法を選ぶことになります。
1つ目は「単純承認」です。これは、財産も債務もすべて引き継ぐ方法で、特に手続きをしなければ自動的にこの形になります。この場合、故人の資産と負債をすべて受け継ぐため、滞納された受信料も支払う義務が生じることになります。
2つ目は「相続放棄」です。家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人でなかったことになります。これを選んだ場合、当然、未払いの受信料についても支払う必要はありません。ただし、預金や不動産などのプラスの財産もすべて放棄することになります。
3つ目は「限定承認」です。これは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、マイナスの債務も引き継ぐという方法です。例えば、預金100万円、債務が120万円だった場合、上限100万円までしか支払い義務を負わないという制度です。
このように、滞納されたNHK受信料の支払い義務は、相続方法により変わるため、自分がどのように相続するかを慎重に判断することが重要です。
故人が住んでいた家に今後誰も住まない場合、受信契約そのものを解約することが可能と考えられます。その場合は、NHKふれあいセンターへ連絡をし、「解約届」と必要書類を提出します。その際、テレビなどの受信機器をすでに撤去したことについての証明書や説明を求められることがあります。
一方、誰かが住み続ける場合は、契約者の名義を相続人や新居住者に変更する必要があります。この手続きを行わずに放置すると、受信料の請求が継続されたり、トラブルの原因になったりすることもあるため注意しましょう。
また、長期にわたって未契約のままになっていた場合、NHKが契約締結や未払い分の支払いを求めて訴訟を起こすケースも報告されています。
ただし滞納分の請求には、申し出によって5年の消滅時効が適用されるため、それ以前の請求は原則として無効となる可能性もあります。
実際に請求が来た場合は、時効の確認や内容の精査をしたうえで、専門家に相談するのもひとつの方法です。
亡くなった家族がNHKの受信料を滞納していた場合、その支払い義務は相続人が相続をどのように行うかによって異なります。何も手続きをせずに故人の預金からお金を引き出して使ってしまうなど一定の行為があった場合「単純承認」とみなされ、受信料を含む債務も引き継ぐことになります。
負債が多い、あるいは支払いたくないと考える場合には、早めに「相続放棄」や「限定承認」の手続きを検討しましょう。NHKとの契約の名義変更や解約も忘れずに行い、後のトラブルを避けることが大切です。
心配な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談して、適切な対応を選ぶようにしましょう。
裁判所ウェブサイト 相続の放棄の申述
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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