12月6日(土) 5:00
厚生労働省によると、生活保護制度とは「資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対して必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長すること」を目的とした制度です。
支給される保護費は、厚生労働大臣の定めた基準で計算される「最低生活費」と、申請を出した世帯の「収入」を比較して決定します。収入が最低生活費に満たない場合、「最低生活費」から「収入」を差し引いた差額が保護費として支給されます。
掲題の方のように、毎月の収入が年金の5万円ほどしかない場合などには、生活保護の申請を検討してもよいかもしれません。ただし、厚生労働省によれば、生活保護を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
・資産の活用
預貯金や生活に使用していない土地・家屋等を売却などして生活費に充てる。
・能力の活用
働くことが可能であればその能力に応じて働く。
・あらゆるものの活用
年金や手当など他の制度で給付を受けられる場合は、優先してまずそれらを活用する。
・扶養義務者の扶養
親族などから援助を受けることができる場合は、援助を受ける。
生活保護には、世帯を単位として保護が適用される「世帯単位の原則」があります。
例えばお子さんが結婚して実家を離れ、母親と「別世帯」(住民票分離)となった場合、お子さんに収入があったとしても、母親の生活保護申請には影響しないでしょう。ただし、「扶養照会」で援助の可能性を確認される場合があります。
生活保護法第4条第2項には「民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と定められており、民法第877条に定める扶養義務者は生活保護申請者の扶養を求められることがあります。
民法第877条では扶養義務者について「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めており、今回のケースのように、結婚して独立したお子さんの元にも「扶養照会」という問い合わせが実施される可能性があります。
しかし、扶養照会は「援助の義務を強制するもの」ではなく、扶養義務者の経済状況や事情などを確認するものです。扶養義務者が経済的に援助できない場合や援助を断った場合でも、生活保護の申請は可能とされています。
老後の生活は、年金だけでは立ち行かないケースもあります。しかし、公的な支援制度を正しく理解し利用することで、お金の不安を必要以上に抱えずに済むことがあるかもしれません。
経済状況によっては「頼れる制度は遠慮せず使う」という視点を持つことが大切になります。年金と公的な支援の仕組みを知ることは、これからの人生を少しでも安心して送るための備えのひとつといえるでしょう。自分の生活を守るためにも、必要な支援についてしっかり確認しておくことが重要です。
厚生労働省 生活保護制度
e-Govポータル法令検索 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号) 第一章 総則 第四条(保護の補足性)第2項
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第四編 親族 第七章 扶養 第八百七十七条(扶養義務者)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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