先日定年を迎えた上司が「嘱託社員」として復帰。「給料が“半額以下”になった」と聞いて心配になったのですが、定年再雇用はこのくらいが普通なのでしょうか?

先日定年を迎えた上司が「嘱託社員」として復帰。「給料が“半額以下”になった」と聞いて心配になったのですが、定年再雇用はこのくらいが普通なのでしょうか?

12月6日(土) 4:30

定年後に再雇用などの制度を利用して働く人が増えています。先行きが不透明な時代において、定年後も収入源を確保することは非常に重要でしょう。しかし、定年前と比べると給料が下がるケースが多いのも実情です。 本記事では、再雇用における基本給の目安や、定年前の給料と比べた時の金額について解説します。

定年後の給料は現役時代の“7~8割程度”

定年後の給料は、退職前の給料と比べておおよそ7~8割前後になる傾向です。表1は、厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を基にまとめた年齢階級別の平均年収一覧になります。
 
表1

年齢階級区分 企業規模
10~99人 100~999人 1000人以上
55~59歳 496万8100円 614万6000円 763万9700円
60~64歳 440万900円 479万6300円 535万3200円
65~69歳 376万6700円 396万1800円 394万7600円
70歳~ 339万5500円 358万1600円 333万8900円

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
 
どの企業規模でも給与のピークはおおむね55~59歳となっており、それ以降は年齢が上がるとともに年収は減少する傾向です。多くの企業で定年は60歳と定められていることから、再雇用後の給料は7~8割前後になると考えられます。
 

再雇用時の基本給は定年退職時の「50%以上80%未満」とする企業が“6割以上”

厚生労働省 中央労働委員会が、資本金5億円以上かつ労働者1000人以上の運輸・交通関連業種以外の企業を対象に実施した「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、再雇用時の雇用・就業形態で最も多いのは「嘱託社員」であり、集計企業全体の半数以上です。
 
続いて多いのは契約社員であり、定年後の社員を正社員として再雇用する企業はさほど多くないようです。
 
また、同調査によると、再雇用後の所定労働時間を定年退職前と同等にしている企業は7割を超えているものの、基本給の時間単価は50%以上80%未満としている企業が6割を超えています。
 
定年後の再雇用においては、いわゆるボーナスなどの一時金も多くの企業で低い傾向にあり、定期昇給はなしとしている企業が84.5%です。表1を考慮すると、特に社員数の多い大企業では、今回の事例のように、給料が半額以下になってしまうケースもあるかもしれません。
 

再雇用時の“大幅な減額”は違法の可能性も

再雇用時の大幅な給料減額は、場合によっては違法になることもあります。再雇用では退職前と比べて比較的責任が軽い業務に配置転換され、業務負担が軽くなることも珍しくありません。そういった場合は、業務負担に応じた給料の減額が適法と認められるようです。
 
しかし、再雇用後も職務内容が変わらず業務負担が重いままにもかかわらず給料が大幅に減額されるような場合は、状況によっては違法であると判断されるケースもあるようです。実際に、職務内容や責任がほとんど変わらないにもかかわらず著しく給与を下げることは不合理であるとして、過去に裁判所が違法と判断した事例もありました。
 

まとめ

近年、多くの企業が再雇用制度を設けており、定年後も働き続ける選択肢は一般的になりつつあります。厚生労働省 中央労働委員会の調査によれば、再雇用後の基本給は定年退職前のおおむね50~80%前後としている企業が多く、企業によっては半額以下となることもあるようです。
 
しかし、職務内容や責任が大きく変わらないにもかかわらず、過度に給与を減額することは場合によっては違法と判断される可能性もあるようです。再雇用時には提示された給与設定を確認し、必要に応じて早めに専門家へ相談しましょう。
 

出典

e-Stat政府統計の総合窓口 令和6年賃金構造基本統計調査 表番号1 学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
厚生労働省 中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査〔調査結果の概要〕 5 継続雇用制度 (2)再雇用時の雇用・就業形態(表15)、(3)再雇用時と定年退職時との労働条件の比較(表16)(10ページ)、(4)再雇用労働者と定年年齢到達前の常用労働者との労働条件の比較(表17)(11ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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