「ボーナスの給与化」で“賞与なし”になる息子。月給アップでも「得するのは会社だけ」とのことですが、どういうことでしょうか?「社会保険料の負担額」を確認

「ボーナスの給与化」で“賞与なし”になる息子。月給アップでも「得するのは会社だけ」とのことですが、どういうことでしょうか?「社会保険料の負担額」を確認

12月6日(土) 5:10

近ごろ、「賞与(ボーナス)制度をなくして毎月の給与に振り分け、基本給を高く設定する」という動きが、大企業を中心に起きています。 年に数回のボーナスを、ローンの返済や生活費の足しとして頼りにしていた家庭にとって、「賞与なし」という響きは、生活設計を揺るがす不安なニュースに聞こえますが、実態はどのようになっているのでしょう。会社にとっては、コスト削減につながるのでしょうか。また、従業員にとって損になる面はあるのでしょうか。

大企業で進む「ボーナスの給与化」のねらいは?

ソニーグループは「ボーナスの給与化」を進めている日本の代表的な企業で、2024年度末に一部社員の冬のボーナスを廃止して夏の賞与と月給に振り分ける方針を発表しています。
 
日本経済新聞の報道によれば、その結果として2025年4月以降の新卒入社者の初任給は月額で3万8000円引き上げられ、1万円の賃上げ分を含めれば2025年度は前年度比で同4万8000円の増加となるそうです。
 
このような動きは、一般的には以下のように説明されることが多いのですが、企業経営として「得」になるので制度改革をしている側面もあるようです。
 

「固定給を増やすことで従業員の収入安定化と高給アピールができ、人材確保につながる」
 
「ジョブ型雇用(企業があらかじめ用意した職務に対して必要とする能力やスキルある人を、その職務や能力に応じた給与体系で採用する制度)の一環として行われる制度改革である」

 

従業員の賃金が高い場合、社会保険料の負担額が減少することもある

労働基準法によれば、給与は「毎月一定期日に支払う賃金」とされている一方、ボーナスについては支払い要件が明確に定められておらず、「会社が任意に定める一時金」として扱われ、社会保険上の取り扱いも異なります。
 
給与は健康保険・厚生年金ともに「標準報酬月額」で毎月保険料を算定しますが、ボーナスは支給のたびに「標準賞与額」として扱われるからです。
 
2025年11月現在、厚生年金では、ボーナスにかかる保険料には「1ヶ月あたり150万円」という上限があり、それを超える部分に保険料がかかりません。標準報酬月額にも「65万円」の上限が設定されていますが、これは将来的には段階的に引き上げられる予定です。
 
健康保険料・介護保険料の場合は、これらの上限が「標準報酬月額139万円」「標準賞与額年間累計額573万円」となっています。
 
これらを考えると、2025年現在で標準報酬月額とボーナス額が以下のような組み合わせになっている従業員の場合は、「ボーナスの給与化」によって社会保険料の減少(手取り額の増加)が起きることになります。
 

・現在の標準報酬月額が65万円超で、ボーナス支給も受けている従業員
 
・現在の標準報酬月額が65万円未満でボーナス支給を受けているが、ボーナスの給与化によって標準報酬月額が65万円を超える従業員

 
サラリーマンの社会保険料は「労使折半」なので、会社の保険料負担もこの分減少します。そのため、ボーナスの給与化によって「会社が得をする」側面も確かにありますが、その場合は従業員の手取り額も増加することになりますので、「会社だけが得をする」ことは無いと言えるでしょう。
 
ただ、これは毎月の給与が標準報酬月額の上限(65万円)近くという、かなりの高給を稼ぐ従業員に限ってのことであり、多くのサラリーマンにはあまり関係ない話だとも言えます。
 
微妙なのは、「ボーナスの給与化後も標準報酬月額が65万円に至らない従業員」でしょう。この場合、月々の給与から負担する社会保険料は大きく上昇しますので、年間の手取り額がどのように変化するかを把握するには、詳細なシミュレーションが必要です。
 

まとめ

ボーナスの給与化によって、もともとの月額給与が厚生年金における標準報酬月額の上限「65万円」を超えるか、それに近い状態だった従業員は、社会保険料の負担が減少するために年間の手取り額が上昇します。社会保険料は「労使折半」であるため、このような従業員を雇用している場合は、企業側の保険料負担額も減少させることができます。
 
企業側としては、制度改正によって人件費全体の抑制を行いつつ、固定給与額の向上によって人材確保をねらいたいという思いもあるようです。
 

出典

厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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