一昨年、昨年とレモンポップが連覇を飾ったGIチャンピオンズカップ(中京・ダート1800m)。そのレモンポップが引退して種牡馬となった今、今年の同レース(12月7日)では新たなダート王の座を巡る、熾烈な争いが予想される。
2023年、パンサラッサがGIサウジカップ(キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)を勝って、ウシュバテソーロがGIドバイワールドカップ(メイダン・ダート2000m)を制覇。さらに今年に入ってからは、フォーエバーヤングがサウジカップを快勝し、日本調教馬として初めてアメリカのブリーダーズカップクラシック(デルマー・ダート2000m)で戴冠を遂げた。
今やダート路線においても、日本馬が世界で目覚ましい活躍を見せている。そうした状況を反映して、チャンピオンズカップにも日本ダート界の頂点を争うにふさわしい好メンバーが集った。
とりわけ注目を集めているのは、ナルカミ(牡3歳)、ルクソールカフェ(牡3歳)という2頭の3歳馬だ。
ジャパンダートクラシックを完勝して世代の頂点に立ったナルカミphoto by Sankei Visual
ナルカミは、目下4連勝中。前走では3歳ダート三冠の最終戦、地方交流GIジャパンダートクラシック(10月8日/大井・ダート2000m)で鮮やかな勝利を決めた。
一方のルクソールカフェは、前走のGⅢ武蔵野S(11月15日/東京・ダート1600m)を完勝。GIフェブラリーS(2月23日/東京・ダート1600m)の覇者コスタノヴァら歴戦の古馬たちを一蹴している。
そうした状況を受けて、関西の競馬専門紙記者はこう語る。
「今年の3歳馬は、芝だけでなく、ダートでもレベルが高いです。ルクソールカフェが古馬相手の武蔵野Sを強い競馬で勝ったことが、その証拠のひとつでしょう。チャンピオンズカップでも3歳馬が勝つ可能性はかなり高いと見ています」
逃げ・先行タイプのナルカミは、デビューからダート路線を歩んできてここまで6戦5勝。春の二冠には間に合わなかったが、ここに来てメキメキと頭角を現わしてきた。いわば「遅れてきた大物」だ。
2走前に地方交流GⅡ不来方賞(9月2日/盛岡・ダート2000m)を勝って、その勢いのままジャパンダートクラシックを制して世代の頂点に立った。同レースでは、地方交流GI羽田杯(4月29日/大井・ダート1800m)、地方交流GI東京ダービー(6月11日/大井・ダート2000m)の二冠を果たし、「三冠確実」と言われたナチュラルライズを完封。直線で突き放して、3馬身差の完勝劇を披露した。
その一戦で、2着ナチュラルライズからさらに9馬身離されての3着となったのが、ルクソールカフェだ。ただ、当時のルクソールカフェは海外帰り初戦。万全な状態だったとは言い難い。実際、その直後の武蔵野Sで古馬トップレベルを蹴散らしていることを考えれば、ジャパンダートクラシックの結果だけで「ナルカミとの勝負づけは済んだ」と見るのは早計だろう。
そもそも春先にはダートのオープン特別を2連勝。伏竜S(3月29日/中山・ダート1800m)では後続に5馬身差をつけて圧勝し、本場アメリカのGIケンタッキーダービー(12着。5月3日/チャーチルダウンズ・ダート2000m)に挑戦したほどの逸材だ。フェブラリーSで連覇(2021年、2022年)を達成したカフェファラオの全弟という血統からしても、底知れない強さを感じさせる。
2頭は、ともにダート界の将来を担う大物であることは間違いない。では、どちらが強いのか。先の専門紙記者はこんな見解を示す。
「ルクソールカフェの前走は確かに強烈でしたが、あの勝ち方を見て"鮮やかすぎる"といった感じも受けました。というのも、いかにもワンターンの東京コース向き、という印象が強かったからです。
しかし今度の舞台は、トリッキーな面もあるコーナー4つの中京・ダート1800m戦。そこで、前走と同じようなレースができるのか?となるとやや疑問があります。
翻(ひるがえ)って、ナルカミは一戦ごとに力をつけてきているイメージ。それに、中京・ダート1800mというコースは3~4コーナーにかけてのカーブがきつく、追い込みづらいといった特徴があります。つまり、本質的には逃げ・先行有利なコース形態と言え、同タイプのナルカミのほうが向くような気がします。
何にせよ、ルクソールカフェ陣営からすれば、いろいろと言い訳はあるかもしれませんが、ナルカミがジャパンダートクラシックで同馬に12馬身の差をつけたことは、紛れもない事実。今回はナルカミに分があると見ています」
唯一気がかりなのは、ナルカミはほとんどのレースで逃げて勝ってきたこと。古馬のダート一線級との対戦で、競りかけてくる馬への対処や、後方からのマークがきつくなることには一抹の不安が残る。
だが、先の専門紙記者によれば、そうした点についても「不安はない」という。
「メンバー的に見て、今回どうしても先手を取りたいのはウィリアムバローズ(牡7歳)くらい。ナルカミがこの馬との競り合いに負けるシーンは考えづらいです。
仮に競りかけてくる馬がいたとしても、2番手に控えればいい。そういうレースができない馬ではないし、現にそういった形で勝ったこともありますから」
フォーエバーヤングが世界の頂点に立ったことで、ますます活気づく日本のダート界。チャンピオンズカップで新たなスターが誕生するのか、必見である。
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