連日ニュースになっている、インフルエンザの早期大流行。
インフルエンザの感染者数が「1医療機関あたり、1週間で30人」を超えると「インフルエンザ警報」が出されるのだが、これが全国平均で「44.99人」(2025年11月24~30日)。もう警報レベルをはるかに超えているのだ。
しかも今年は、「サブクレードK」と呼ばれる新たな変異株が流行しており、まだ免疫を持つ人が少ないと報じられている。
「2025年は例年より1ケ月早くシーズン入りしたことで流行期間が長引き、『リピート感染』が懸念されています」。そう警鐘を鳴らすのは、年間3万人を診察する総合診療医で一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介医師だ。
リピート感染とは、複数の感染症に続けてかかってしまうこと。
「昨シーズンには、連続して3つの感染症にかかった患者さんがいましたが、今年はシーズン長期化でさらにそのリスクが高まっています」(伊藤医師、以下同)。
そこで、リピート感染しないための対処法について、伊藤医師に聞いた。
何度も感染をくり返す「リピート感染」のリスク
コロナ禍が一段落してから、マスクやうがいなどの対策をゆるめる人が増え、それが感染症増加の一因だといわれている。
また、昨今は酷暑の夏から急速に冷え込んで冬に突入する「二季化」が、体に負担をかけている。世界的な寒波も予想されており、12月3~4日には日本列島に寒波が襲来した。温暖化といわれながらも、近年は最低気温を更新する地域もあり、今冬も寒さが厳しそうだ。
「その中で、懸念されるのが『リピート感染』です。例えば、インフルエンザ→マイコプラズマ→ノロウイルスのように、一つの感染症が治りきらないうちに次の感染症にかかってしまうのです。
感染が続くと臓器の機能低下にもつながります。特に肺が繊維化(炎症によって肺胞の壁が厚くなる)すると、ウイルスや細菌が棲みやすくなり、肺炎のリスクが高まります。肺炎のリスク回避のために抗生剤を多用すると、今度は抗生物質が効かない多剤耐性菌の危険性が出てくるのです」(伊藤医師、以下同)。
このイタチごっこのようなリピートを食い止めるには、やはり「基礎的な免疫力を維持することが大切です」と伊藤医師。では何をすればいいのか?
連続うがい、階段上りなどを習慣に
免疫とは、ウィルスなどの異物が侵入したときに、攻撃して“やっつける”システム。全身の細胞やネットワークが絡みあっており、結局のところは「健康的な生活習慣や食生活」を続けるしかない。
生活習慣について、伊藤医師のアドバイスは以下のようなものだ。
・睡眠は1日6時間以上、理想は7時間を確保する。夜12時前には就寝したほうがいい。
・運動は、ジムに通うまでもなく日常生活でOK。例えば駅やマンションで階段を見たら、ジムだと思って階段を使おう。ただし、過度な運動は逆に免疫力を低下させるので要注意。
・「連続うがい」を習慣にしよう。「のどがイガイガする」「風邪を引いたかも」と感じたら、すぐに「連続うがい」を行う。のどの奥まで届くようにガラガラとうがいをし、これを10~15秒×10回以上、理想的には20〜30回。緑茶でうがいすると、さらによい。
この「連続うがい」は素朴だが効果的らしく、感染初期の段階では、物理的にウイルスを外に出すことで本格的な罹患を防ぎやすいという。
伊藤医師が実践する、免疫力アップの食材選び
免疫をあげるためには、食材選びも大切だ。
人体で最も免疫細胞が活性化している場所は腸管であることから、腸内環境を整える善玉菌を摂るのがおすすめだという。ちなみに、伊藤医師が実践しているのは、「朝ごはんは、お米、みそ汁とおかず、そしてデザートに毎朝ヨーグルトを食べて乳酸菌を摂っています。ヨーグルトはベリー系などポリフェノールが豊富な果物と一緒に摂るのがおすすめです」。
伊藤医師によると、こんな興味深い研究結果もある。オーストラリアの研究で、ラグビー選手を対象に①善玉菌を4週間摂取したグループ30人と、②摂取しないグループ(プラセボ)30人を比較した。
その結果、善玉菌の摂取によって
・一度も感染症にかからない確率が上昇(①16/30人、②6/30人)
・かかっても期間が短くなる傾向(①3.4日、②5.8日)
が確認されたという。(J Sci Med Sport. 2014 Jul;17(4):356-60)
また日本で行われた大規模観察研究(約7000名対象)では、特定の乳酸菌で発酵したヨーグルトを食べる頻度が高いほど、感染症(インフルエンザ、風邪症候群・その他の呼吸器感染症など)の罹患率が低い結果になったという(2025年5月24日、日本栄養・食糧学会大会発表)。
これらの結果からも分かるように、日々の食事で腸を整えることは、感染を防ぐうえでの“基礎免疫”を支える心強い味方になりそうだ。
ビタミンDやオメガ3もおすすめ
その他に、免疫力をあげるために伊藤医師がすすめるのは、以下のような食材だ。
・ビタミンD(しいたけなどキノコ類、鮭などの魚や卵)
・オメガ3(鮭、マグロ、カニなどに含まれる不飽和脂肪酸)
・カテキン(緑茶)
ビタミンDを含む食品は免疫機能を調節する働きがあり、オメガ3は鼻や喉の粘膜などウイルスや細菌が侵入する第一線で働き、緑茶カテキンには抗菌作用、抗ウイルス作用が認められているという。
ワクチンは、打つタイミングにも注意
上記のような習慣で免疫力をキープしつつ、リピート感染を防ぐ直接的な方法としては「ワクチン接種」がある。ただし、ワクチンを打つタイミングにも注意したほうがいいそうだ。
「インフルエンザワクチンは接種後2週間で免疫がつき、その後1か月で8%ずつ効果が低下していきますが、流行シーズン(約5〜6ヶ月)は効果が持続するとされています。
受験などの重要なライフイベントがある場合は、その日程に合わせたワクチン接種も検討すべきでしょう。重症化や後遺症の予防を重視するなら、早めの接種がおすすめです」
じわじわと効く生活習慣・食生活の見直しと、直接的なワクチン接種。両方を着実に行って、自分や家族のリピート感染を防ごう。
【伊藤大介(いとう だいすけ)医師 プロフィール】
医師、医学博士。
東京大学医学部卒業。日本赤十字医療センター、東京大学医学部附属病院を経て2020年8月より一之江駅前ひまわり医院院長(東京)に就任。年間3万人以上の患者を診察する。著書『総合診療医が徹底解読。健康診断でここまでわかる』。2025年に日本外科学会優秀論文賞を受賞
<文/川崎かおり>
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