今の巨人は、「そこそこの投手」と、「そこそこの野手」で形成された「そこそこのチーム」に成り下がってしまった。
2025年のチーム完投数は、山﨑と赤星の1つずつ。広島の11、阪神10、DeNAの8、中日の5に次いで、セ・リーグ5位である(ヤクルトは1)。
そして、規定打席に達しているのは3人のみだ。ショートを守る泉口が3割1厘の打率を記録しているものの、吉川が2割7分台、キャベッジが2割5分台。以上だ。少なく感じるのは、岡本の不在に起因する。阿部監督以下の首脳陣があたふたしてしまい、連日のように打順をいじくり倒してしまい、好成績を残せなかった。これでは、選手たちからしても不安のほうが勝ってしまう。
※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。
巨人は「地獄の伊東キャンプ」を再び行いなさい
阿部監督の評価を判断するのは時期尚早ともいえるが、2026年シーズンもこのような野球を繰り返してしまうようでは、監督として不適格の烙印を押さざるを得ない。そうならないようにするためにも、やることは一つである。
それは「選手を徹底的に鍛え上げること」だ。1979年秋に行われた「地獄の伊東キャンプ」を再現するのも面白いのではないか。
かつての中畑や江川、西本聖らと同様、指定強化選手の名のもとで、10数名の選手をピックアップする。そして、キャンプ期間中は徹底的にしごき上げる。シーズンを乗り切るための体力や技術が不足しているのであれば、四の五の言わせずオフに鍛えるしかない。今の巨人の選手たちに必要な通過儀礼なのではないか。
「選手がかわいそう」という声に対しては…
一部のファンから「選手がかわいそう」と批判する声も出てくるかもしれない。だが、そんな声はお構いなしに、阿部監督が、「今年負けたのは、彼らの体力や技術が劣っていたから。だから鍛えてあげているんです」と言い放てばいい。ネット上の炎上などクソ食らえだ。
最近は何かあると「パワハラだ」と主張する連中がいるが、何でもかんでもハラスメントと認定されることによって、大事なものが失われているような気がしてならない。まずは、「未熟でスタミナ不足の選手を鍛えることの何が悪い」という強い姿勢を示す。そして翌シーズンに目に見えた結果を残すことができれば、こうるさい外野は軒並み口を閉ざすようになるのではないか。
それに強化指定選手の枠を作ることには、もう1つの意味がある。ここに選ばれなかった選手は、すなわち「いつクビを切られてもおかしくない」わけだ。危うい立場を自覚させることにもつながる。
全選手に危機感を持たせられる
巨人のユニフォームを“着られるだけで満足する選手”には、きわめて効果的な方法ともいえる。まさに一石二鳥というわけだ。一軍半の選手はもとより、二軍、三軍以下の全選手に危機感を持たせられるのは大きい。
「伊東キャンプ」の再現はさておき、世間の声など気にせず、毅然とした態度で選手たちを鍛えてほしい。当然、ファンは巨人が勝つ姿が見たいはずだ。「勝つために厳しくする」という目的意識を胸に日々の練習に臨んでいただきたい。
<談/江本孟紀>
【江本孟紀】
1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。
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