日本映画の独立プロダクション58社によって組織される日本映画製作者協会(日映協)に所属する、現役のプロデューサーが選出する「新藤兼人賞2025」第30回授賞式が12月5日、都内で開催された。
この賞は、独立プロの先駆者である故新藤兼人監督の名を冠し、有望な新人監督と、活躍したプロデューサーを顕彰するもの。今年公開された作品の中から215作品が選考対象となり、最終選考監督13人13作品の中から金賞は「見はらし世代」の団塚唯我監督、銀賞は「ひみつきちのつくりかた」の板橋知也監督が受賞した。また、優秀な作品の完成に貢献したプロデューサーや企画者の功績を称えるプロデューサー賞は「この夏の星を見る」の松井俊之氏(FLARE CREATORS取締役)が受賞した。
日映協の押田興将代表理事が挨拶に続いて、プロデューサー賞の選考理由と経緯などを説明。「この夏の星を見る」は、直木賞受賞作家・辻村深月氏の同名小説を映画化し、コロナ禍で複雑な思いを抱える中高生たちの青春を3都市を舞台に描いたドラマ。松井プロデューサーは受賞の感謝を述べ、7月公開の同作が現在もロングラン上映となっている理由や今後の抱負などを語った。
続いて、関友彦審査委員長が金賞、銀賞の選考理由を講評とともに述べた。「見はらし世代」は、再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いたドラマ。文化庁の委託事業である若手映画作家育成プロジェクト「ndjc(New Directions in Japanese Cinema):2022」で短編「遠くへいきたいわ」を発表した団塚監督のオリジナル脚本による長編デビュー作。団塚監督は「本作の制作会社シグロの山上親子(プロデューサー)を見ながら脚本を仕上げたようなところがある。誰と一緒に映画を作るか、プロデューサー、制作会社によって変わってくると強く実感した」などと述べ、UDCast賞も贈呈された。
「ひみつきちのつくりかた」は、大人になっても心の奥底に宿る子ども心をテーマに、友人の突然の死をきっかけに再会した初老の男4人組が、少年時代に夢見た「ひみつきち」作りに没頭する姿を描いた作品。監督自身の内面にある「大人になれきれなかった自分」を4人の登場人物に投影し、撮影は全編、監督が幼少期を過ごした東京都あきる野市で敢行した。「コロナ前からあたためていた企画だが、誰がターゲット(観客)なのか、どこに向けた作品なのか、と言われ続け、迷った時期もあったが、面白いものを作ろうという思いで作った甲斐があった」などと述べ、感謝の思いを語った。
昨年度より、新藤兼人賞で見いだされた新しい才能をNetflixが支援。受賞者と最終選考者にはNetflixへの企画提案の機会、企画・脚本開発の費用が用意、支援され、Netflix作品の制作にチャレンジできる。また、今回からAmazon Prime Videoも協賛に加わった。
さらに日映協は、映画スタッフを育てるプロジェクトを今年スタート。映画・映像の制作部・プロデューサー養成講座の第2回を2026年秋に開講する予定だ。第一線で活躍するプロデューサーらが講師を務め、受講修了者には撮影現場参加の機会が提供される。なお、第31回(2026年度)より、新藤兼人賞の選考基準を一部変更するとしている。
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見はらし世代
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