連載水沼貴史×平畠啓史『水平感覚』
国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで知られる平畠啓史さんが、サッカー界のホットな話題をしゃべり倒す連載。今回は今季のJリーグで目立った若手選手について語った。
鹿島アントラーズの18歳FW徳田誉photo by Getty Images
【動画で全部見る】水沼貴史&平畠啓史 中島洋太朗だけじゃない! Jリーグの若手イチ推し選手!↓↓↓
【センスの塊】
――先日のルヴァンカップではニューヒーロー賞に、サンフレッチェ広島の中島洋太朗選手が選ばれました。おふたりには中島選手への評価と、21歳以下の選手で「中島選手のようにすごい選手がいるよ」という推し選手を選んでいただきたいと思います。
平畠
僕は、
中島洋太朗
(MF)選手が好きです。本当にうまいですね。
水沼
うまいですよね。最近は僕も結構「センス」という言葉を使うようにしているんですよ。以前は「うまい」とか「技術的に(優れている)」と言っていたけど、明らかにその選手の考えと動きがリンクしている別物のプレーを見ると、「センス」以外に表現のしようがないと感じることがあります。
この選手はセンスの塊ですよ。
平畠
わかります。あの独特の間合い、テンポ感。まず慌てたりすることがないじゃないですか。ああいう選手って、ジネディーヌ・ジダンとかもそうですけど。その選手の周りに磁場というか、バリアのようなものができていませんか?
水沼
相手に「来るなよ!」的な、ね。
平畠
中島選手はその空気感があるんですよ。
水沼
わかる。でもそうしたプレーヤーの持っているものが表現できないんですよね。
平畠
"言語化"とはよく言うけど、できないですよね。だから、言語化できないことが「センス」なのかもしれないですよ。
こういう選手は周りに理解者とそのセンスを共感できる仲間が3、4人いると、非常に面白いサッカーが生まれるでしょうね。
水沼
逆にいないと最悪ですよ。自分で全部はできないし、わかってくれる人がいればセンスを出せるけど、いなければ出せないわけじゃないですか。
平畠
たぶん、周りに言葉で説明しても、一拍、二拍タイミングがズレるんでしょうね。「わかってよ」というのがあると思うんです。だからこれから成長していく段階では、中島選手のセンスと同じ波長の選手がどれだけ集まってくるかが大事だと思います。
中島選手と一緒にプレーしたいと思う選手もいるんじゃないですか?
水沼
いるでしょうね。パスの受け手になりたい人とか。受け手にも「あそこで狙っているんだけど、俺の感覚を持っている出し手いないな」と思っている人もいるんですよ。
平畠
まさに「センス」ですね。練習なのか、試合なのか、共感した瞬間は最高。それをどんな選手が叶えていくのかわかりませんが、出てきたら面白いですね。
水沼
これからの日本は出てくるでしょう。そういう人ばっかりじゃないですか。
【常に上を目指している】
平畠
この世代でもうひとりいい選手はいないかと聞かれたら?
水沼
やはりファジアーノ岡山の
佐藤龍之介
(MF)選手。もうA代表にもなっていますよね。僕はU-17から見てきて、ひとりだけ基準が違うとずっと思っているんです。簡単なところで言えば、パスのスピードが違う。周りのなかでひとりずっと強めに出している。「ボクはここで満足しない」と自分で基準を上げていく。そういう取り組み方をしているとずっと思っていたので、成長していく姿を見るとうれしいですね。
本来はトップ下のポジションだと思いますが、岡山ではウイングバック(WB)をやっている。ワイドでは右も左もやるユーティリティ性があります。ドリブルもシュートもうまいです。
平畠
例えばトップ下にこだわりすぎて、ワイドでプレーするよう求められた時に力を発揮できない選手もいるじゃないですか。この選手はちゃんと咀嚼(そしゃく)して自分なりのWBを作っていく。そこが若いのにすごいなと思います。
水沼
考えながらサッカーができる選手だし、常に上を目指している姿勢がすばらしいですね。
平畠
すごくプロ向きなんじゃないですか?周りに合わせるだけではなく、自分をしっかり出してチームを引っ張るという姿勢ですね。
水沼
目立つプレーをすると叩かれる可能性もあるけど、自分の責任でやっているという意思があるのかな。
平畠
普段は朗らかな青年。逆に「こんなに素直に育つ子がいるんだ」という感じですよ。それでピッチに立った時のギャップを見ると、「この人スゲーな」と思います。しゃべると余計に好きになりますよね。
【将来の鹿島を担うFW】
平畠
僕が挙げるのは、鹿島アントラーズの
徳田誉
(FW)選手。名古屋グランパス戦(第32節)での2ゴールが衝撃的でした。「ザ・フォワード」じゃないですか。
水沼
最初のゴールはニアの取り方がよかったし、2点目はミドルでしたね。
平畠
18歳ですよ。すげぇFWが出てきたなと。だから順調に育ってほしいですね。今186cmで、まだ伸びるのかなとも思うけど、もう体も出来上がっているのがすごいと思います。
水沼
鹿島は彼の下の世代に吉田湊海がいる。彼がいることで、また刺激にもなっていると思います。今、鹿島はユースがすごく充実していて、いい選手がたくさんいるということも聞いています。徳田は将来の鹿島を担っていくだろうなという選手じゃないですか。今年はいろいろな経験をしましたよね。
平畠
ケガやPKの失敗(第33節ガンバ大阪戦)もありました。何年後かの「徳田誉ストーリー」のなかに絶対に残るポイントでしょうね。
あと、アントラーズという百戦錬磨の人が多いなかで、18歳だったらもうちょっと委縮しそうですが、堂々としているのもいい。周りに動かされない、動じない感じがある。実際はわからないですけど。そう見えてくるのがすごいなと。
水沼
これから楽しみでしかないです。
平畠
来シーズン先発で起用されたら、20点くらいはとるんじゃないかな。
【グラウンダーのクロスがいい】
水沼
僕からはもうひとり。名古屋の
森壮一朗
(DF)。出場数は少ないんですけど、スケールが違う。望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)や関根大輝(柏レイソル→スタッド・ランス)が出てきた時もその感じがあったんですが、今後どうなるか。攻撃の迫力とか、ヘディングでの得点力とかすごいんです。
平畠
あそこまでのスケールを出せるのはなかなかですよね。
水沼
若くても「すいません!」という感じではなく、「俺がここまで走るからボールをください」みたいな。
平畠
サイドでは1対1を迎える場面が多いですが、相手に「こいつは結構やりそうだ」と思われる雰囲気を出していますよね。
水沼
グラウンダーのクロスを入れるのもうまいです。精度が高い。僕は、クロスは入れる場所が大事だと思っていて、相手DFやGKがいてグラウンダーのクロスとなった時に、どの場所に入れるかでボールが引っかかるか、引っかからないかが全然変わってくるんです。
森はそれを判断して、ドリブルしながらクロスを入れられるのがいい。止まっているボールをちょっとずらしてクロスを入れるのはみんな大体できるんです。でも、あのプレーのスケール感で走りながら入れられるのはいいですね。
平畠
キックのスピードがどれくらい出せるかにもよりますけど、それを含めてどこにクロスを入れるかの判断もセンスだと思います。
>>後編「まだまだいるぞ! 水沼貴史&平畠啓史セレクトU-21激推し選手たち」
【関連記事】
◆【動画】ロングスローの進化が止まらない! 水沼貴史&平畠啓史がルヴァンカップ決勝で飛び出した必殺技を考察
◆【動画】【Jリーグ】柏レイソルの小泉佳穂から目が離せない 水沼貴史&平畠啓史が語る魅力
◆【動画】今の鹿島アントラーズの布陣は「4-4-1-鈴木優磨」 水沼貴史&平畠啓史が語り尽くす
◆【動画】平畠啓史が本当に見てほしいJリーグの日本人センターバック3人「安定感が半端ない」「ドラマがある」「DF魂を感じさせる」
◆【動画】水沼貴史が激賞するJリーグの日本人センターバック3人 ひとりで守るすごい選手たちを「見てほしい!」