【江本孟紀】巨人にとって「甲斐の加入」はプラスだったのか? 「交流戦全敗」の事実が示す、残酷な真実

入団会見での甲斐©産経新聞

【江本孟紀】巨人にとって「甲斐の加入」はプラスだったのか? 「交流戦全敗」の事実が示す、残酷な真実

12月4日(木) 15:54

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巨人が交流戦で甲斐拓也を起用したのは7試合だが、すべての試合で負けた。

このときの対戦相手と巨人の先発投手を見てみると、6月4日のロッテ戦(先発・井上温大)、10日のソフトバンク戦(先発・井上)、13日のオリックス戦(先発・赤星優志)、15日のオリックス戦(先発・戸郷翔征)、17日の日本ハム戦(先発・井上)、19日の日本ハム戦(先発・山﨑伊織)、24日のロッテ戦(先発・西舘勇陽)だ。7試合通じての総失点は、実に38を数えた。

一方で、岸田が起用された交流戦は、5勝3敗1分。失点が12とそれなりの結果を残した。これではチーム内で「甲斐よりも岸田を起用したほうがいい」という声が強くなったとしても致し方ない。

※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。

すべて悪い方向に結果が出てしまった

甲斐を交流戦で起用したのは、「パ・リーグを知り尽くしている」と評価したうえでのことだったのかもしれないが、反対の見方をすれば相手だって甲斐のことを熟知している。それだけに、甲斐のリードに導かれる巨人の投手が、パ・リーグの各チームを抑えられるとは限らない。残念ながらすべて悪い方向に結果が出てしまった。

巨人の交流戦の成績は、6勝11敗1分。全体で11位と低迷したが、もしも甲斐が出場した交流戦の7試合を4勝3敗の成績でまとめていれば、10勝7敗1分で、順位は4位となっていた。勝負に「たら、れば」がよくないのは理解しつつも、この点は非常に惜しまれる。

巨人とソフトバンクの投手力には大きな差がある

なぜ甲斐は交流戦で結果が残せなかったのか。それは巨人とソフトバンクでは、投手力に大きな差があるからだと、私は見ている。

2019年と2020年の日本シリーズを思い出してほしい。巨人はソフトバンクに8連敗を喫した。ソフトバンクの投手陣に手も足も出ず、反対に巨人の投手陣はとことんソフトバンクの打者に打たれ続けた。

両者の差が明確になったのが「力のあるボールを投げる投手陣」と、「鋭いスイングをする打者」の存在だ。ソフトバンクが先制すれば、あとは先発、中継ぎ、抑えとそれぞれの役割を担う投手たちが自分の仕事をすればいい。実にシンプルな話のように聞こえるかもしれないが、実際それで巨人の打者は面白いように打ち取られ続けた。

あれから5年経つが、選手の顔ぶれは違えども、巨人にいる打者の打撃の質はそれほど大きく変わっていないように思える。

一方の投手陣も、打者を制圧するようなストレートを投げる投手は見当たらず、勝負どころになると変化球でかわしにかかるタイプが多い。対戦相手の好打者を迎えると、「打たれたくない」「無難に行こう」と思うがあまり、ボール先行でカウントを悪くする。その結果、四球を連発してしまうという悪循環に陥っている。はっきり言って、巨人の投手陣の勝負に対するスピリットは、5年前と同様と見るべきだろう。

そこへ甲斐が巨人の捕手陣に割って入り込んで来た。甲斐自身も、巨人で「どうにかして結果を残してやろう」と並々ならぬ闘志を燃やしていたかと思う。だが、内角に要求したとき、攻めきれず逆球となって痛打を食らうシーンが多く見られた。それだけに、甲斐が巨人の投手陣に対してもどかしさを感じたことも、一度や二度だけではなかったはずだ。

25年シーズンの結果、「甲斐は巨人に必要なかった」

甲斐を獲得した2025年シーズンは、「失敗だった」と見られても仕方がない結果に終わってしまった。たしかに入団してしばらくの間は、甲斐は攻守の要として巨人の投手陣を盛り上げてきた。

打撃に関しても、4月末の段階で打率は3割1分6厘。彼のことをよく知るソフトバンクの元監督である工藤公康をして、「こんなに打つ選手でしたっけ?」と言わしめるほど好調さが光っていた。

だが、これはセ・リーグの5球団が「甲斐のことをよく知らなかった」だけだった。彼の分析をし終えた5月以降には、途端にそれまでの打撃が鳴りを潜めた。「開幕当初の好調ぶりはなんだったのか」と思えるほどの急降下だ。

最終的には打率2割6分、本塁打4、打点20という数字に収まったものの、ライバルとなる阪神戦では2割2分9厘、広島戦では1割6分2厘、中日戦では2割1分6厘と、それぞれ芳しくない成績だ。

そのうえ、スタメンマスクを被って出場した64試合の勝敗は、30勝33敗1分と3つも負け越してしまった。ソフトバンクの正捕手として3度のリーグ優勝、4度の日本一を果たした経験値を活かすことができずに終わった。

一方のソフトバンクは、海野隆司、嶺井博希、谷川原健太、渡邉陸らを競わせた。投手によって組み合わせを変えての起用である。甲斐がいたときには、控え捕手の扱いだった海野は、使われ続けることで覚醒し、なくてはならない存在にまで成長した。

これまでの「甲斐一択」から、複数捕手制に変えていく。これにより、ソフトバンクのチーム力が昨年と比べてさほど落ちることなく勝ち進んでいったことは、ある意味皮肉な結末といえる。

<談/江本孟紀>

【江本孟紀】
1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。

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