12月3日(水) 22:00
公営住宅は、民間賃貸よりも低廉な家賃で提供されているため、制度の目的上、低所得世帯を優先する必要があります。そのため入居時だけでなく、入居後も毎年収入申告が求められ、世帯の収入と構成に応じた家賃の見直しが行われます。
ここでいう収入とは世帯全体が対象となるため、同居の家族が就職したり昇給があったりすると基準を上回る可能性があります。家賃は、収入に応じて段階的に増える仕組みであり、低家賃で住めるのはあくまで所得が一定基準以下の期間に限られるという点を理解しておく必要があります。
収入が基準を上回ると、まずは「収入超過者」として扱われ、家賃に加算が発生します。この段階ではすぐに退去を求められるわけではなく、家計に過度な負担が生じないよう、自治体は段階的に対応するのが一般的です。
しかし、収入超過の状態が続く場合はより高い家賃区分が適用され、最終的には「高額所得者」に該当します。高額所得者と判断されると、制度上は「明渡請求」の対象となります。
ただし、退去までには通知や猶予期間が設けられており、突然の立ち退きを迫られることはほとんどありません。実際には「長年住み続けている」「高齢者がいる」「家賃加算に耐えられる」などの事情を踏まえて、退去を求めず住み続けられるケースも存在します。
しかし、これは自治体の運用方針によって異なるため、必ずしも期待できるものではない点に注意が必要です。
公営住宅の入居継続に関する収入基準は自治体ごとに設定されており、年収の絶対額だけで判断できるものではありません。
基本となるのは、国が示す「政令月収」という考え方で、これは所得から各種控除を差し引き12で割った金額を指します。
国土交通省の「公営住宅法施行令等の一部改正について」によると、この政令月収について一般的な基準は15万8000円(月収換算)、高齢者世帯や障害のある世帯など一定の事情がある裁量世帯の場合は 21万4000円(月収換算) が目安として示されています。
ただし、この金額は「世帯の所得水準が全国のどの分位に属するか」を示す指標のひとつであり、自治体の実際の運用では、同居家族の人数や扶養状況、障害の有無、年齢構成などによって認定基準が変わります。
同じ年収でも控除額や世帯構成が異なれば政令月収は大きく変動するため、年収がいくら以下なら住み続けられると一律に判断することはできません。
また、政令月収が基準を上回ったとしても、すぐに退去しなければならないわけではなく、まずは家賃の加算や収入超過者としての認定が行われるのが一般的です。
したがって、入居継続の可否は年収ではなく、自治体が定める算定方式によって求められる政令月収が基準内に収まるかどうかがポイントとなります。自治体によって基準の細部は異なるため、自分の世帯構成と所得をもとに確認することが欠かせません。
公営住宅では、収入が一定基準を超えても、直ちに退去を求められるわけではありません。しかし、収入超過が続けば家賃が上がり、最終的に高額所得者として明渡請求の対象になる可能性はあります。
年収がいくらまで居住できるかは、金額だけでなく世帯構成や自治体の基準によって左右されるため、まずは自分の世帯状況をもとに自治体へ確認することが最も確実です。
今後収入が上がる見込みがある場合や、ライフステージの変化が予想される場合は、早めに将来の住まいの選択肢を考えておくことが、生活の安定を守るうえで大切な判断となるでしょう。
国土交通省住宅局住宅総合整備課 公営住宅制度について
会計検査院 公営住宅における高額所得者等に対する明渡しの促進等の措置の実施について 報告のポイント
国土交通省住宅局 公営住宅法施行令等の一部改正について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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