12月4日(木) 4:30
厚生労働省の職業情報サイト「job tag」によれば「路線バスの運転手」は「路線バス・貸切バス運転手」という区分にまとめられています。
この区分を参考に、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査~一般労働者~職種」を参照すると、平均年収は461万1300円です。これは、国税庁が公表した「令和6年分民間給与実態統計調査」における、給与所得者の「平均給与478万円」をやや下回る数字といえます。
全国のバス会社の労働組合で構成する「私鉄バス専業組合連絡協議会」が実施した、人手不足や運行状況に関するアンケートの結果によると、加盟する144労組のうち約92%の133労組が「運転手が不足している」と回答し、「過去1年間で減便や廃線があった」と答えた労組も多数ありました。
運転士不足の原因としては、以下のような背景があるようです。
(1)路線バス事業の低収益性
路線バス事業は運賃収入でコストをまかなう構造のため、地方では利用者減少で収入が不足しやすいです。さらに「運賃規制」の存在により収益性を高めづらいことから、人件費を抑えざるを得ず、労働条件が厳しくなることが運転手不足につながっています。
(2)厳しい労働環境
運転業務は決済手段の多様化や外国人・高齢者対応などで複雑化し、いわゆる「カスハラ」への対応も考慮しなければならないなど、心理的負担が高まっています。また早朝や深夜の不規則勤務・長時間勤務などで体力的負担も大きく、応募者が集まりにくい状況になっているようです。
(3)2024年問題
2024年からの労働時間規制強化により、時間外労働や休憩の「改善基準告示」の基準となる時間が変更され、勤務シフトの調整の必要性が高まりました。
運転士の労働環境改善には追い風であるものの、減便などで稼動時間を削減し休憩時間を増やす必要があり、収益性が下がる可能性があります。そのため、短期的には運転士不足がさらに深刻化することが懸念されているようです。
バス運転手を含む自動車運転者の人手不足や長時間労働を踏まえ、厚生労働大臣は令和4年に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)を策定し、令和6年4月から適用されました。
これにより、拘束時間の上限や勤務後の休息期間などが明確化され、健康確保や安全確保の観点から労働条件の改善が見込まれています。
改善基準告示を受けたバス事業者は、新卒や女性運転士の採用、定年延長、短時間正社員制度やシニア社員制度などを導入し、人手不足の解消と待遇改善に取り組んでいます。
具体的には、原則4時間以上連続運転を禁止、勤務終了後の休息は原則11時間以上、月間拘束時間は284時間以内などの基準が設けられ、働きやすい環境づくりが進められているようです。
バス運転手の平均年収は約461万円で、一般の給与所得者よりやや低めです。しかし、改善基準告示の見直しにより、幅を広げた人材確保と待遇改善の取り組みが進んでいます。大勢の乗客の安全を支える重要な仕事であることを踏まえると、こうした改善策は長期的な人手不足解消にも不可欠といえるでしょう。
厚生労働省厚生労働統計一覧賃金構造基本統計調査
厚生労働省賃金構造基本統計調査令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
国税庁令和6年分民間給与実態統計調査
厚生労働省業種・職種別の対策自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
【関連記事】
「航空自衛隊」のパイロットの「年収」は? 「旅客機」のパイロットと比較してどちらが高い?