命がけでクマ駆除しても報奨金はたったの「1万円」…? 移動費、待機中の負担が反映されないケースも! 制度上の位置づけはどうなっている?

命がけでクマ駆除しても報奨金はたったの「1万円」…? 移動費、待機中の負担が反映されないケースも! 制度上の位置づけはどうなっている?

12月2日(火) 3:00

近年、全国的にクマの出没や人的被害が増加し、自治体は駆除や捕獲の対応を迫られています。そのようななかで、「クマを捕獲・駆除するハンターにはどの程度の報奨金が支払われるのか」という点が注目されています。 しかし、報奨金の金額は自治体によって大きく異なるうえに制度自体も複雑で、生活の柱になるほどの収入にはなりにくいという現実があります。 そこで本記事では、地域によって異なる報奨金の水準や制度の位置づけ、公費による支援が拡大している現状を整理し、報奨金をどのように理解すべきかを解説します。

全国で異なる報奨金の実情

クマを捕獲・駆除した際に支給される1頭あたりの報奨金は、自治体によって数千~数万円まで大きく幅があります。被害が多い地域では5万円前後の報奨金が設定される例もありますが、比較的被害の少ない地域では1万円以下に抑えられることもあります。
 
この金額の差には、自治体の財政状況や野生動物管理の方針が大きく影響します。また、報奨金はあくまで「捕獲」という成果に対する支払いであり、現場に出動した時間や移動費、待機の負担が反映されないケースも少なくありません。
 
報奨金はまとまった収入を得られるような性質のものではなく、あくまで捕獲に対する補助的な支払いに過ぎません。したがって、資源管理の一環としての位置づけが強いといえるでしょう。
 

報奨金だけでは語れないコストとリスク

ハンターが、現場で負担する費用は小さくありません。銃やわなの維持費、弾薬代、燃料費、防護装備など、捕獲活動には多くのコストがかかります。
 
仮に年間5頭捕獲したとしても、収入は25万円程度です。しかし、これらの経費を考えれば、報奨金だけで生活を成り立たせるのは現実的ではないといえるでしょう。
 
また、クマの駆除活動は非常に危険を伴い、心理的・身体的負担は大きいものです。さらに、季節や地域によって出没数が変動するため、年間を通して安定的に捕獲できるわけでもありません。
 

報奨金の位置づけは「生活収入」ではなく「対価の補完」

報奨金は「収入」として支給されるため、所得として扱われる場合があります。ただし、被害対策や地域の安全確保が目的であることから、制度上は「捕獲活動の負担を補う補助的な役割」に位置づけられています。そのため、報奨金は高い収入を得るための制度ではなく、あくまで捕獲を支えるための補完的な支払いと捉えるのが現実的です。
 
実際、年間に継続して多数のクマを捕獲できる地域は限られており、仮に1頭5万円の報奨金が設定されていても、捕獲機会が年間数回であれば収入としては大きくありません。また、捕獲活動は危険を伴うため、金額の大小だけで判断することは困難です。
 

今後は報奨金だけでなく総合的な対策が重視される

近年は、国が自治体に交付金を出し、駆除にかかる費用を公費で支援する制度が整いつつあります。自治体によっては弾薬費や燃料費、安全装備の整備費などを補助し、個人ハンターの負担を軽減する取り組みが進んでいます。
 
そのため、経費がすべて自己負担というケースは減少傾向にあります。ただし、補助の範囲や実際の支給方法は自治体ごとに異なるため、報奨金がそのまま手取りになる場合と補助対象外の費用が一部発生する場合のどちらも存在する点には注意が必要です。
 
また、クマ被害が増加するなかで、自治体は報奨金や出動手当を増額するなどハンター確保に向けた動きを強めています。一方で、ハンター人口の高齢化や後継者不足が進んでおり、報奨金の増額だけでは対策として不十分という指摘もあります。
 
そのため、今後はクマ生息域管理の強化や地域の防護柵整備、クマ出没時の通報体制の改善、住民教育や啓発活動など、捕獲に依存しすぎない総合的なクマ対策が求められます。
 
報奨金は対策の一部ではありますが、それだけで地域の安全を維持することはできないため、制度の見直しと複数の施策を組み合わせた取り組みが重要になります。
 

まとめ

クマの捕獲・駆除に対する報奨金は、地域によって金額や運用が大きく異なり、その位置づけも「捕獲活動を補うための支払い」にとどまります。近年は駆除にかかる経費を公費で支援する仕組みが整いつつありますが、報奨金だけで安定収入を得るのは現実的ではありません。
 
今後は、報奨金制度の改善や生息域管理の強化など、行政による総合的な取り組みが進むかどうかが重要になります。地域の安全対策として制度がどのように見直されていくのか、今後の動向に注目していきましょう。
 

出典

環境省 クマに関する各種情報・取組
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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