12月2日(火) 4:40
そもそも「法定相続人」とは「相続の権利がある人」という意味で、その範囲は民法によって定められています。亡くなった被相続人の「配偶者」は原則として常に相続人となりますが、それ以降も「子ども」「直系尊属(父母、祖父母など)」「兄弟姉妹」の順位によって法定相続人となることが可能です。
さらに、民法では遺産の持分も定められており、これが「法定相続分」と呼ばれるものです。上記の「法定相続分」の順位と組み合わせると、表1のようになります。
表1
| 法定相続人の順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 被相続人の子ども | 配偶者を2分の1とし、(2人以上の場合は全員で)2分の1 |
| 第2順位 | 被相続人の直系尊属(父母・祖父母など) | 配偶者を3分の2とし、(2人以上の場合は全員で)3分の1 |
| 第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 | 配偶者を4分の3とし、(2人以上の場合は全員で)4分の1 |
出典:国税庁「タックスアンサーNo.4132相続人の範囲と法定相続分」を基に筆者作成
表1が示すように、同順位がそれぞれ2人以上いるケースでは、原則として均等に分けるルールとなっています。つまり、法定相続分に従う場合は、「兄弟間で半分ずつ」になるのが原則です。
「法定相続分」は、「相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分」です。したがって、「必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならない」わけではありません。
以下は、法定相続分に従わない分割が可能となるケースの一例です。
ケース1:亡くなった被相続人が遺言書を残していたケース
ケース2:相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で合意が得られたケース
このように表すと、「遺言内容によっては一切相続できない場合もあるの?」という疑問を持つ方がいるかもしれません。
これについては、配偶者・子・直系尊属といった一定の相続人に「遺留分」が認められているため、最低限の遺産は承継できるようです。ただし、兄弟姉妹には遺留分がないという点には注意をした方が良いでしょう。
生前贈与は、財産の承継や節税対策を目的として行われることがありますが、その内容によっては、相続時に「特別受益」として扱われる場合があります。
特別受益とは、被相続人が生前に、特定の相続人に対して行った贈与や遺贈など、他の相続人との公平を欠くほどの利益を指します。特別受益に該当すると、相続では「死亡時に残っていた遺産」だけでなく、その生前贈与分も含めた金額を基に相続分を計算します。この考え方を「持ち戻し」といいます。
掲題のケースのように、兄が受け取っていた2000万円の生前贈与が特別受益と認められた場合、相続分の計算上は、その2000万円を含めた金額を兄弟で按分することになります。その結果、実際に分けるのは父の死亡時に残っていた遺産のみであっても、兄が受け取れる取り分は減り、「単純に半分ずつ」とはならない可能性があります。
【前提条件】
・父の死亡時の遺産:3000万円
・兄の生前贈与:2000万円
【特別受益とみなされた場合】
・計算上の相続財産:5000万円
・兄弟の相続分(2分の1ずつ):各2500万円
・すでに2000万円を受け取っている兄が遺産から受け取る額:500万円
・弟が遺産から受け取る額:2500万円
【それぞれが最終的に手にする相続財産】
・兄:2500万円(生前贈与2000万円+相続財産500万円)
・弟:2500万円(相続財産2500万円)
なお、遺言によって受け取る「遺贈」は原則として特別受益に該当します。また、「婚姻のための贈与」や「養子縁組のための贈与」なども、内容や金額によっては特別受益と判断される場合がある点には注意が必要です。
兄弟が相続人となる場合、遺産は原則として法定相続分どおりに分けられますが、生前贈与があった場合には注意が必要です。
兄が生前に2000万円の贈与を受けており、それが特別受益と認められた場合、相続分はその贈与分を含めた金額を基に計算されるため、死亡時に残っていた遺産を「単純に半分ずつ」分けることにはなりません。
生前贈与の有無や内容によって、実際の取り分は大きく変わるため、相続が想定される場合には、早めに財産の状況を整理しておくことが重要でしょう。
国税庁 タックスアンサー No.4132相続人の範囲と法定相続分
政府広報オンライン 知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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