12月2日(火) 8:30
近年、日本では高齢化や都市圏への人口流入などによって、管理が行き届かない空き家が増加しているといわれています。管理が滞ることで倒壊や火災のおそれがあったり、周辺の景観を乱す可能性があったりするなど、空き家が放置されることで生じる課題は少なくありません。
自治体はこのような空き家が増加しないように、所有者に対し管理指導を実施するようになったことで、結果空き家を不動産会社に売却するケースも増えています。そこで、空き家を投資物件として購入後リフォームを実施し、賃料収入や売却益などで利益を生む「空き家投資」が、空き家の活用方法として注目を集めています。
このように、管理や活用の方法が課題となっている空き家が増加することを懸念して、国は2015年5月26日施行の「空家等対策特別措置法」にて「特定空家等」という制度が定義づけました。
「特定空家」は、前記の放置された空き家に懸念される倒壊や景観、衛生環境などを理由とする生活環境の悪化のおそれがある空き家に対して指定されるものです。自治体の調査を通じて特定空家と指定され、指導を受けても改善されず勧告を受けた場合、該当の空き家および土地が「住宅用地特例」の適用対象除外となってしまいます。
特例措置の適用がなされない場合、住宅用地の条件によっては固定資産税額が最大で6倍となる可能性があります。勧告ののち、所有者による改善がみられないと判断された場合は、最終的に行政代執行となり、解体などの費用を請求されることも考えられるでしょう。
固定資産税には「負担調整措置」があり、税負担の激変を緩和するための制度が設けられています。そのため、特定空家に指定されたからといってすぐに固定資産税額がふくれ上がるわけではありませんが、最終的には空き家所有者にとってさまざまなリスクやデメリットを抱える可能性があるため、早めの対処が求められます。
では、実際に空き家投資を始めたいと思った場合、考えられるメリットと注意点はあるのでしょうか。
メリットとしては、不動産投資としては初期費用が比較的安い点が挙げられます。「空き家バンク」等を参照したところ、500万円以下で購入できる物件もみられるため、リフォームにコストがかかる点を考慮したとしても、初期投資としては比較的少ないコストで不動産投資を始められるといえるでしょう。
なお、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(令和6年)」によると、貯蓄額の中央値は500万円となっており、多くの世帯にとって現実的に用意し得る水準の資金といえそうです。
一方で注意点としては、空き家探しのプラットフォームは買主や借主は移住を目的としたケースを想定していることが多いため、必ずしも投資目的に活用できる物件ばかりではないという点です。
例えばリフォーム費用が多くかかるケースや、そもそも投資として活用するには難しい立地や管理状況であるケースも考えられます。投資目的として空き家を探す場合は、収益性を上げられるかどうかを考慮する必要があるでしょう。
特定空家に指定されることで、空き家所有者にはデメリットが多く発生することから、売却や新たな活用方法を検討することが求められています。そのなかで「空き家投資」は空き家を活用とした不動産投資の活用方法として挙げられますが、必ずしも投資向けの物件ばかりではない点に注意しましょう。
国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
総務省 固定資産税の令和3年度評価替えへの対応
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査~2024年~各種分類別データ(令和6年)」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
【関連記事】
両親の死後、実家が「空き家」に。 固定資産税が「6倍」にならないための登記と寄付の仕組みを解説