12月2日(火) 4:20
まず、最低賃金に関する直近の改正状況について確認しましょう。
東京都労働局では、令和7年10月3日より最低賃金の時間額を「1226円」に改正しました。従前の1163円から引上げ率5.42%の「63円アップ」となっています。なお、時間額の全国加重平均は「1121円」で、引上げ率は6.3%と都内よりも全国平均のほうが伸びています。
最低賃金の引き上げは、令和7年10月から都道府県別に順次行われています。実施状況には地域差がみられ、令和8年に入ってからの引き上げとなる自治体もあるようです。掲題の「1300円」という時給は全都道府県の最低賃金を上回っているため、最低賃金引き上げを理由に賃金交渉を行うのは難しいかもしれません。
掲題にもあるように、「非正規雇用」および「個人」であっても賃金交渉は行えるのでしょうか。
ここでは、独立行政法人国民生活センターが公表する資料「暮らしの法律Q&A 第160回 パートの賃金交渉は個人でもできますか?」を参考にしてみましょう。
同資料においては、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法8条)を根拠に、以下に挙げるような説明をしています。
・パートタイマー(アルバイト等)と正社員との間において、不合理と認められる相違を設けてはならないこと
・法の趣旨から、その考え方はパート・アルバイト同士の間でも適用しうること
以上の点などから、仕事内容をはじめ「賃金以外に差がない」場合には、まず雇用主に説明を求めるようアドバイスを行っています。
パートやアルバイト勤めをしながら賃金交渉を検討する際には、以下3つのポイントを意識しましょう。
1. 同業他社や勤務地域の平均時給を調べる
同地域・同業種の平均的な時給を調べ、交渉にあたって妥当と思われる昇給額を決めましょう。勤務している職場の給与水準が相場よりも低いのであれば、交渉に応じてもらえる可能性も考えられます。
2. 勤務期間が経過し信頼を得てから交渉する
ある程度の勤務期間を経てからの交渉が望ましいでしょう。
働き始めて数週間から数ヶ月程度で交渉に臨んだとしても、勤務態度についての具体的な判断が難しい点や、実績が不足している点などを理由として、交渉に応じてもらえないケースが想定されるためです。「欠勤や遅刻をしない」といった基礎の積み重ねが、賃金交渉においては近道になる可能性もあります。
3. 「年収の壁」には引き続き留意する
時給が上がったのちも、「年収の壁」に対しては引き続き留意しておきましょう。
直近の税制改正により所得税に関する壁は引き上げられたものの、社会保険への加入義務が生じる「106万円の壁」「130万円の壁」は継続して存在しています。昇給によって仕事のモチベーションが上がるかもしれませんが、「扶養の範囲内で働きたい」などのケースでは注意が必要です。
今回はパートやアルバイトで働く人に向けて、賃金交渉の基本的なポイントを紹介しました。非正規雇用であっても、正当な理由があれば交渉に応じてもらえる可能性があります。待遇に改善の余地を感じる人は「アルバイトだから」と諦めず、交渉のための情報収集をしてみましょう。
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
独立行政法人国民生活センター 暮らしの法律Q&A 第160回 パートの賃金交渉は個人でもできますか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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