株の話をしたら男性に鼻で笑われたことも…この日本社会で、私たち女性が「自分のお金」を持つべき理由

株の話をしたら男性に鼻で笑われたことも…この日本社会で、私たち女性が「自分のお金」を持つべき理由

12月1日(月) 8:47

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「まずは浪費を切り詰めて、節約しながら老後の資金を……」

マネーセミナーなどに行くと、こうした話をよく聞きます。

36歳独身、元子役、フリーランス歴長し。私はいつなんどきも、私の人生をハッピーに生きてきておりますが、このプロフィールで頼れるものと言えばお金or不労所得です(ほぼ一択)。

そう思い、マネーセミナーに出てはみたものの、プロフェッショナルは「景気よく稼いで好きなものを食べ、がっちり資産運用をしましょう!」なんて言ってくれません。

女性は働き方や既婚かどうか、子育て中など、ひとりひとり環境の違いが大きいです。投資に回せるお金の余力なども違うため、プロがそんな無責任なことを言い放ったら問題になるでしょう。ただ、かつて「男性の領域」と思われていた不動産など、投資に挑む女性は、ここ最近増えています。どんな人にとっても自分の「虎の子」を持つことが安心をもたらしてくれるはず。

そんな時見つけたのが、かんき出版から2025年10月 20日に発売された『何があっても生き抜く私のお金の教科書』(トリ・ダンラップ著)。ビジネス・ポッドキャストして人気ナンバーワンを誇る『ファイナンシャル・フェミニスト』の司会であり、お金の専門家の著者が、「ファイナンシャル・フェミニスト」になるための方法をレクチャーする本です。

家父長制に基づく女性のお金に関するネガティブなナラティブ(俗説)から解き放ち、自分で生きていく道を教えてくれます。私たちはアメリカと聞くと、カリフォルニアでキャミソールとホットパンツで闊歩したり、ニューヨークでコーヒーカップ片手にさっそうと歩いたりする自立した女性像をとっさに思い浮かべるかもしれません。

独立の精神を強く持つと言われるアメリカですら、いまだに家父長制にとらわれているというから、驚きでした。

「異性愛者の男性向け」に作られた社会



なぜ私たちはお金に対して考えられないのでしょうか。

「お金の決断は、感情に左右される」。

著者のようなお金のプロでも、この感情のコントロールは難しいそうです。まずこのことを自覚することが第一歩。ストレス発散に食べるお菓子、欲しいという気持ちにだけで買った似合わない服、節約のために買ったけど使い勝手が悪い安いラップ……。誰しも何か覚えはあるでしょう。

そしてなぜか、(教わってもいないのに)社会は「お金をうまく扱うこと」を急に求めてきます。

家父長制に基づくこの社会は、女性など、ストレートかつシスジェンダーの白人男性以外の人向けに作られたわけではなかった。アメリカで生きる女性である著者・トリはこう語ります。異性愛者であり、性自認が男性向けに作られたという点で、日本も同じではないでしょうか。

「女性向け」に作られていない現代社会では、稼ぐ機会も男性より少なく、お金について知る機会が少ない。さらに、知識がないことが、お金について話す、助けを求めることが「恥ずかしい」と言われて抑圧されてしまう。

少なくとも私たちは、ひとりぼっちではない



私は株を始めたいと話したとき、男性に鼻で笑われた経験があります。私のお金でやるのですから、私が500万利益を出そうが損益を出そうが、その人にはまったく関係ないのに、です。

加えて、女性は体の構造上、医療費含めた出費は多く、見た目に気を遣うことも「社会規範」として求められます。(しかも女性向けのものは男性向けより高い、通称「ピンク税」なるものも存在!)

・金融に関する知識を身につけづらい
・経済格差が存在し、収入は少ないのに必要経費は多い

という、買い物に行けないのにすっからかんの冷蔵庫を使ってフレンチのフルコースを作れと言われるような環境に置かれているわけです。

社会に対する不満や憤りを語ればとめどないですが、少なくとも私たちは世界にひとりぼっちではない。そう思うだけで、少し勇気がわいてきます。

とりわけ「恥」という強くて苦しい、強烈な感情と向き合うくだりにはページが割かれていて、ここだけでも読んでほしいと思うほどです、

アメリカと日本の違いについては注釈あり



やはりアメリカのお話なので、日本とは違うところもあります。

例えばアメリカでは高利回りの貯蓄口座「HYSA」があり、日本はこうしたものは残念ながらない。類似・代替はこう、残念ながら類似のものはないといった注釈をつけてくれているので、安心して読み進められます。

収入を増やすために「交渉する方法」の項目は、馴染みがなくて戸惑うかもしれません。でも、知識として学んでおき、いざという時に一歩が踏み出せばれ、きっとあなたの運命が変わるはずです。具体的に言うと、貯金通帳の残高などが……。

大切なのは「自分にとって価値のあるもの」



著者であるトリはお金について知り、自分の支出をコントロールし、投資する「ファイナンス戦略」を「言いわけサラダ」のお金バージョンと称します。

「言いわけサラダ」とはトリと友人が実践する、「食べたいものを食べるために先に頼むサラダ」のことだとか。お金を使って好きなことをするには「先に準備しておく」ことが大切なのですね。

第2章に、「自分の人生に必要ではないけれども、価値のあるもの」を3つ選ぶというワークがあります。トリの場合は旅行、外食、住環境だそう。

ただ切り詰めるだけではなく、自分の大切なものを愛する費用も準備しておくという考え方は、取り入れやすいはず。未来も大切ですが、今を生きることも重要ですよね。

苦しいし、恥ずかしいけど、自分のためにお金と向き合う



海外旅行もたくさんしたいし、高級食材を食べたい。そんな欲望もあります。しかして女性がお金について、不安や恥に苛まされながら一生懸命考える根底は、もっと切実。「自分で生きる力を持つこと」の意義と意味を、資本主義社会に生まれ落ちて知っているからではないでしょうか。

著者のトリも最終章で「お金は権力だからこそ、女性にもっとお金を手にしてもらいたい」という項目を書いています。

ウォール街初の女性株式ブローカーとなり、31歳で大金持ちになり、1872年に女性として初めてアメリカ大統領候補になった女性・ヴィクトリア・ウッドハルのエピソードも印象的でした。

彼女は「女性が稼ぐ力は、投票する力よりも、男性の独裁制や残虐性から身を守る防護になるから」として、大統領選に出馬したそうです。

私たちは経済的な状況も、家族関係も、何もかも違います。本の内容すべてを真似するのは難しいと思います(著者は1994年生まれで、親の介護や自分の健康問題、子どものことなどは本に登場しておりません)。

合わないと思う部分もあるでしょう。しかし、本にある「ホームワーク」に沿って1項目でも書いてみる、世の中にはこうした考え方をして、自分の力で立とうと生きている人がいると知ることは、きっとあなたを勇気づけてくれるはずです。

私も正直、読みながら何度も「恥」が襲ってきて本を投げ出すこともありました。ゆっくりと読み進めるのも、ひとつの本の読み方。焦らず、苦しみすぎず、今と未来の自分のために読んでみてほしいです。

実践してみれば、きっと何かが変わります。具体的には(何度も言いますが)、貯金通帳の残高などが!

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中

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