モバイルSuica、モバイルPASMOの画面を切り替えて利用できるコード決済が登場。※コード決済の画面はイメージです
JR東日本以外の地域でも利用でき、公共交通の利用から買い物まで活躍するSuica。そのスマホ版となるモバイルSuicaが、2026年の秋から新コード決済に対応することに!モバイルPASMOにも翌27年には実装される、新コード決済の注目機能や課題について解説します!
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【新コード決済は何がスゴくてヤバいのか?】
11月25日にJR東日本などが発表した新コード決済「teppay」。モバイルSuicaとモバイルPASMO、それぞれのアプリから切り替え、決済などが行なえる機能として来年の秋に登場予定となっている(モバイルPASMOは2027年春対応予定)。
現在、コード決済のシェア争いはPayPayが首位を独走している状況だが、あえてteppayをローンチする理由、そのスペックなどを解説します。
――まずは、交通系ジャーナリストの宮武和多哉さんにお聞きします。PayPayをはじめとするコード決済勢から、だいぶ遅れてJR東日本がteppayを導入する理由とは?
宮武
Suicaをはじめとする交通系決済アプリを、乗車用から買い物用へ進化させることが理由のひとつです。現在は物理カード、モバイルSuicaどちらも決済上限は2万円。
この金額だと駅ビルの食事と買い物ですぐチャージが必要になってしまうので、ユーザーはより便利なほかのコード決済やクレジットカードを利用しています。
teppayの上限は30万円となり、例えば東京ステーションホテルなどJR東日本系列の宿泊施設での利用、新幹線などのチケット購入も可能です。
――ユーザー的に利便性が大幅向上ですけど、基本的にSuicaってオンライン利用が不可でホテルや新幹線の予約用途は難しいのでは?
宮武
teppayはクレジットカードのJCBと提携し、アプリ内で「teppay JCB プリカ」を発行することでオンライン決済も可能です。
コード、オンライン決済共に「teppay残高」で支払い、この残高は銀行口座、ATM(共に現金)、JR東日本系列のクレジットカードである「ビューカード」からチャージすることができます。そして、ユーザー間で送金することもできます。
クーポンも単純な〝割引〟ではなく、例えば電車に乗って駅ビルで買い物をしたら「グリーン券」をアプリに配信するといった、JR東日本ならではのサービスなどが期待できるでしょう。
JCBプリカと連携したオンライン決済に対応。将来的にはクレカのタッチ乗車も視野に入れた機能!?
コード決済用の残高はユーザー間で送金することが可能だ(写真/JR東日本ニュースリリース)
――ここまで聞くと、やっとPayPayをはじめとするコード決済の機能に追いついた感じですけど、それほど大きなメリットを感じない内容。teppayならではの強みとは?
宮武
ユーザー数です。モバイルSuicaとモバイルPASMOのユーザー数は延べ3500万人を超えており、これはPayPay、楽天ペイに次ぐコード決済国内シェアを狙える数字です。そして、利用できる店舗数もすでに約220万店あります。
これまでは、Suicaの問題点として、店舗用決済端末の導入・運用費用、さらに手数料が高く、個人店は参入しづらいという環境がありました。しかしteppayの登場で、ストア側も導入コストが低くなり、JR東日本圏内だけでなく、全国での利用も視野に入れた展開ができます。
――その一方で、2004年からコード決済のサービスが開始された中国では、異変が起こっているという。中国の経済・ITに精通するジャーナリストの高口康太さん、コード決済超先進国にどんな変化があるのでしょうか?
高口
主要コード決済がタッチ決済に対応し始めています。
――まさかのコード消滅?
高口
決済時はコードの表示・スキャンよりもタッチのほうが利便性に優れているため、近年では店舗にタッチ決済用の端末が導入されて、アリペイやウィーチャットペイなどでもタッチ決済が行なえます。
中国のコード決済はオンラインでの利用、個人店での少額決済を目的として始まり、公共交通機関での支払いにも対応しましたが、こちらもクレジットカードやデビットカードでのタッチ乗車が登場しています。
――それを聞くと、タッチを一番のウリにしていたSuicaは逆行してる気が......。宮武さん、日本では乗車関連での進化はありますか?
宮武
来年春以降に首都圏私鉄11社がクレジットカードによるタッチ乗車の相互利用を開始します。これによりクレカ一枚で異なる鉄道事業者間の乗り換えなどが可能になります。
中国・上海市の地下鉄はクレカタッチ決済、現地の交通系ICカード、そしてコード決済対応の三刀流仕様。どの決済でも改札の通過速度にストレスはなく、乗り換えなどもスムーズだ
中国の主要コード決済はアカウントそのまま、NFC Type A/Bでのタッチ決済に対応。ストアには写真のタッチ決済用の端末設置が定番化
――それは、一般ユーザー、インバウンドさんにも大朗報な進化じゃないですか!
宮武
ただし、JR東日本はクレカのタッチ乗車に対応せず、私鉄からの乗り換えができません。その理由は、クレカのタッチ乗車用の非接触規格はNFC Type A/Bで、Suicaとは異なる規格だからです。
そして、私鉄各社は導入・運用コストの高いSuicaをはじめとする交通系ICカードではなく、クレカのタッチ乗車への移行を進めている状況です。
――これ、今後は大問題になりそうですけど?
宮武
現状、JR東日本は「対応策を検討する」としています。私としては、これまでのSuicaとPASMOのタッチ乗車の乗り換えだけでなく、「teppayのコード決済乗車の相互利用」や「teppay JCB プリカをタッチ乗車にも対応させる」といった、teppayを生かした新乗車システムの開発も必要だと思います。
――teppayを実装したモバイルSuicaやモバイルPASMOが買い物用として進化する一方、本来の乗車用としての立場が窮地に追い込まれるという懸念も......。迅速なアップデートに期待します!
取材・文・撮影/直井裕太
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