【プロ野球】今中慎二が中日の投手陣にゲキシーズンを戦いきるための体力や精神力、若手育成に必要なことにも言及した

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【プロ野球】今中慎二が中日の投手陣にゲキシーズンを戦いきるための体力や精神力、若手育成に必要なことにも言及した

12月1日(月) 18:00

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今中慎二が語る2025年シーズンの中日投手編

近年の低迷から脱却すべく、井上一樹新監督を迎えた中日。1年目の2025年シーズンは4位に終わったが、その戦いぶりはレジェンドOBにどう映ったのか。かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞、引退後は中日で投手コーチも務めた今中慎二氏に聞いた。

8勝10敗と負け越した髙橋宏斗photo by Sankei Visual

8勝10敗と負け越した髙橋宏斗photo by Sankei Visual





【全体的にフォアボールが多かったふたつの要因】――まず、今季の先発投手陣はいかがでしたか?ベテランの大野雄大投手が11勝4敗と大きく貯金しましたが、ほかのピッチャーは軒並み負け越してしまいました。

今中慎二(以下:今中)若いピッチャーたちが、それほどではなかったというところでしょうね。シーズン前半は、ベテランの松葉貴大がチームの連敗を止めるなどして、後半は大野が頑張った。一方で、頑張ってもらわないといけない髙橋宏斗らが結果を出せませんでした。

――8勝10敗だった髙橋投手はどう見ていましたか?

今中春先からシーズン終盤まで変わらなかったというか、状態のいい時期が短かったですね。それなりには投げてくれるけど勝てない。勝ち負けには打線も関わってきますが、ボールの質が昨シーズンと比べて悪かったんです。

指にかかった時のボールは強烈ですが、抜けるボールが多く、大事な場面で痛打されていました。それでも、質が悪くてもある程度球速があって、それなりに抑えてしまいますから、修正できないままゴールしたような感じですね。

――打線の得点力不足も、投手陣のプレッシャーになった?

今中どうなのでしょうか......。ただ、明らかに初回の失点が多すぎるんです。追いかける立場になりますし、打線にそれを跳ねのける力がない。それなりに試合は作るけど、初回の失点からリードされたままでの降板が多いので、勝ちがつかずに負けがつく。それが今季の先発投手陣の印象です。

――リリーフを含め、投手陣全体でフォアボールが多かったですが、その要因は?

今中精神的なものじゃないですかね。「甘くいったら打たれる」という怖さからのフォアボールが多かった気がします。気持ちでやられてしまっているんです。強いボールを投げられるピッチャーは先発にもリリーフにも多いですが、特に試合終盤でのフォアボールは致命的。先発が与えるフォアボールはまだ余裕があるので取り返しがつきますが、リリーフが出すフォアボールはそうはいきません。

もうひとつの要因は、体力です。前半に頑張っていた橋本侑樹や清水達也が夏場以降にやられました。松山晋也が故障して離脱している間、ことごとく打たれてしまった。接戦でマウンドに上がり続ける精神的な厳しさもわかりますが、夏にバテるのはやはり体力が足りないから。

精神面と体力面、このふたつの要因が重なってリリーフ陣がバタバタしていたのが8月頃だったと思います。春先によくても、夏にバテたチームは上には行けませんし、逆にその時期に頑張れるチームが上に行けるんです。

――選手層も関わってくる部分ですか?

今中それもあるでしょうけど、結局は前任の立浪和義監督の時とメンバーがほぼ同じじゃないですか。これは野手陣も含めてのことですが、新しい選手がポンっと出てこなかったことはマイナス要素です。

【髙橋の"自覚"、若いピッチャーの起用に疑問符】――ルーキーの金丸夢斗投手はシーズン途中から登板し、2勝6敗と結果はついてきませんでしたが、前評判通りの力は見せてくれました。

今中それなりのものは見せたと思いますが、その経験を来季に生かせるかどうかですね。期待値は高いのですが、もったいないボールの使い方があるんです。

ストレートはいいのですが、ストレートでもアウトコース、インコースがあるじゃないですか。なぜか右バッターには、徹底的にインコースばかり投げてしまうんです。キャッチャーのリードもあると思いますが、そこがもったいない。変化球のキレやコントロールも改善の余地がまだまだありますね。

――FA権を取得した松葉投手は残留を表明しましたが、大野投手や涌井秀章投手らもベテランでシーズンを通しての活躍が計算しにくい部分もあります。先発投手陣の駒不足が懸念されますが、いかがですか?

今中今季の先発投手陣の結果を見ると、そんな感じですよね。来季、大野がどれだけできるかわかりませんし、髙橋や金丸らがローテーションの中心になると思いますが、どこまでチーム引っ張っていけるのか。今季を見る限り、まだ計算できるピッチャーではありません。特に髙橋は"一本立ち"しなければいけませんでしたが、まだ自覚が足りないのかもしれません。

――若手の松木平優太投手、仲地礼亜投手らはいかがですか?

今中今季は柳裕也らケガ人も多かったですし、若いピッチャーたちを使おうと思えば使えたと思うのですが、使えなかったのか、使わなかったのか......。目先の試合にこだわって思い切ったことができなかったのか、先を見据えられなかったのか。内部にいるわけではないので憶測に過ぎませんが、そんな印象がありましたね。

ほかのチームがもたついていたこともあって、Aクラスに入るチャンスがずっとあったわけじゃないですか。そのなかで、若い選手が頑張ると勢いづくのですが、そういう刺激はありませんでしたね。

【結果が出ない選手へのアプローチ】――今年のドラフトでは、中西聖輝投手(青学大)ら先発の即戦力候補を指名しました。

今中当然、期待する部分はありますが、まず現有戦力の底上げをしないと。チームを編成する上でルーキー頼みになるのはなかなか難しいですし、ルーキーはあくまでプラスアルファの部分と考えるべきです。そのためには、選手まかせではなく、選手に頑張らせるような状況に持っていかないといけないですよね。

酷な話かもしれませんが、"まかせる"のではなく"やらせる"ことも大事だと思うんです。プロ入りして1、2年目の選手には、自分のやりたいようにまかせてみてもいいと思いますが、何年もやっていて芽が出なければ、ちょっと物事の見方を変えさせるとか、何かしらのアクションは必要だと思うんです。毎年同じことをやらせていても、結局は変わらないわけですから。

おそらく今の若い選手たちは、自分の変え方がわからないんじゃないですかね。結局は上の選手がやっていることを見てマネしている選手が多いので。首脳陣が「もうちょっとこうしたら?」と、引き出しを与えてあげてもいいんじゃないかと。厳密に言えば、やらせるというより、ヒントを2、3個与えて、そこから自分に合うものを選ばせるように仕向けるとか。毎年同じような練習をしていたら、同じようなシーズンを送ることになってしまいます。

――大化けする選手がいないと、試合に出る選手も変わらないことになりますね。

今中変わりませんよ。例えば「球種を増やす」といっても、今までのボールがダメならば球種を増やしたって仕方がないだろうと。今持っている球種のレべルを全体的に少しずつ上げたあとに新しい球種を覚えるのはいいのですが......。球種が増えたらピッチングの幅が広がると思いがちなのですが、そんなに簡単には覚えられないでしょ、という話です。

あと、リリーフのピッチャーたちに思ったのは、球種を3、4つ持っていても、試合となると2種類くらいしか投げていないんです。自信がある球種がそれだけなのかもしれませんが、それではダメ。全部の球種を使えば相手も的が絞りにくくなるわけですから、なぜ使わないんだと。球種のレべルを全体的に上げなければいけないという話は、こういうところにもつながってきます。

――長いシーズン、何度も同じバッターと対戦することを考えればなおさらですね。

今中そうです。リリーフは基本的に1イニングですから、調子がよければストレート一本で抑えられたりもしますが、長いシーズンを考えればまず無理です。松山も、150キロ台中盤の角度のあるストレートとフォークで抑えていますが、今後もそれでいけるかというと、そうは思いません。もうひとつ、"遊び球"というかカウントを整える球などが必要だと思います。

ほかのピッチャーも、球種をいくつか持っているなら使わないと。清水などもストレートとフォークだけではなく、カーブもあるんだから投げればいいのに、と思います。橋本もストレートとスライダーを投げていて、調子が悪くなった時に打ち込まれるパターンですが、ほかにも球種はあるだろうと。一球見せるだけでも全然違うんです。打たれることを考えるのではなく、抑えることを考えるべきです。

――夏場にバテるという指摘がありましたが、球種が多ければそれもしのぎやすい?

今中ごまかしがききますよね。先発にもリリーフにも言えることですが、年がら年中ストレートがいいわけではないので。調子が悪い時にどうやってしのぐのか、という話です。シーズンは調子が悪い時期のほうが長いですから。

(野手編:点が取れない打線の課題を指摘チャンスの場面で「自分たちがピンチを背負った感じになっている」>>)

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1988年のドラフト1位で、大阪桐蔭高校から中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多勝(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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