破水かと思ったら大量の血が…「出産時のトラブル」で我が子が“医療的ケア児”に。母親が体験漫画に込めた思いとは

破水かと思ったら大量の血が…「出産時のトラブル」で我が子が“医療的ケア児”に。母親が体験漫画に込めた思いとは

12月1日(月) 8:46

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「出産時の思わぬ事故で、元気に産まれてくるはずだった赤ちゃんが医療的ケア児になるケースがあることを、たくさんの人に知ってほしい」

4児の母さちさん(@abcdefg_heven)は、そんな想いから末っ子・幸太郎くんとの日々をSNSで発信している。さちさんは、胎児が生まれる前に胎盤が剥がる「常位胎盤早期剥離」を経験。幸太郎くんは、医療的ケア児(※)となった。

※医療的ケア児…医学の進歩を背景として、NICU(新生児特定集中治療室)等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のこと(厚生労働省HPより)

「常位胎盤早期剥離」で大量出血!我が子の命に危機が……



もともと痛みに強く、我慢強かったさちさん。妊娠後期には頻繁なこむら返りや頭痛、背中を感じたり、指先が痺れてむくんだりしたが、年齢のせいだと思っていた。

だが、出産予定日になっても陣痛が来ず、不安に。出産の前兆である“おしるし”が見られたのは、出産予定日の8日後だった。

その日、破水したと感じたさちさんは立ちあがってビックリ。破水ではなく、血が大量に噴き出していたからだ。

「緊急事態だと直感し、近くに住む母に救急車を呼んでもらいました。原因は、常位胎盤早期剥離でした」

さちさんは出産予定の産院へ搬送されたが、そこでは対応が難しく、総合病院へ。搬送時には胎動が感じられず、不安になった。

搬送先の総合病院で産まれた幸太郎くんは、NICU(新生児集中治療室)に入院。緊急帝王切開での出産となったため、麻酔から目覚めた時、さちさんは幸太郎くんが生きていることを知って心底、ホっとしたそう。

初めての面会時には、寝ながら腕をグルグル回す幸太郎くんの動き(後に新生児発作と判明)に驚いたが、生きていてくれることが嬉しかった。

さちさんは、8日間後に退院。幸太郎くんは脳のダメージを抑える療法や脳波の検査などを受ける必要があったため、一緒に退院することはできなかった。

我が子には“医療的ケア”が必要……絶望から前を向くまでの葛藤



出産から12日後、さちさん夫妻とさちさんの両親は医師から幸太郎くんの脳に関する説明を受ける。渡された3枚綴りの資料には、健常児と幸太郎くんのMRI画像が載っていた。

「違いは、一目瞭然。幸太郎の脳の両側には、ぽっかりと空いた黒い影がありました」

さちさんはショックを受け、頭が真っ白に。原因は、脳に酸素がいかない時間が長かったからだと説明されたが、「すぐに救急車を呼んだし、大量出血してから1時間で産まれたのに……」と思い、涙が止まらなかった。

さちさんの母は取り乱して泣き、さちさんが高血圧になったことやランチに行く回数が多かったことを責めたそう。家族はみな、やり場のない怒りや悲しみをどう表していいのか分からなかった。

「脳のダメージは治ることがなく、発達障害や運動障害、てんかんなどの後遺症が現れることもあると説明されました。自分の身に起きたダメージは治るのに、なぜ幸太郎の脳は治らないんだろうと悔しかった」

人生で底に落ちた時、それは踏み台だから大きく飛べる。さちさんは、そんな信念を持っていたが、幸太郎くんの障害に関してはそう思えなかった。

だが、自分は笑っていたいし、それが子どものためにもなると思い、あえて「受け入れようとしなくていい」と自分に言い聞かせ、幸太郎くんと向き合うようになったそう。

「そうしているうちに、自然と障害を受け入れられたように思います。同じく経験をしたママさんと偶然出会い、自分の生き方を見つめ直せたことも大きかった」

自分も似た境遇の人に、「ひとりじゃない」と伝えたい。そんな想いからSNSでの情報発信もスタートさせた。

なお、さちさんいわく、出産後の娘さん(幸太郎くんの姉)の言動も心の支えになったという。娘さんは「ママは悪くない」と慰めてくれ、弟である幸太郎くんを心からかわいがっている。

「娘の夢は、看護師。『こうちゃんがかわいいから障害を持ってる子は、みんなかわいく見えるね!』と言います。私が『でも、ねえねって呼ばれたかったでしょ?』と聞くと、『こうちゃんは、これがかわいいの! もし元気に生まれてたら、こんなにかわいくなかったかもしれんでしょ!』と言うんです」

痰の吸引などが必要な医療的ケア児親のリアルな日常と想い



現在、幸太郎くんは不随意運動で体が勝手に動くことがあるが、自分の意志で両手や両足を動かすことはできない。

「知的障害もあり、物事の把握ができませんが、話しかけると笑ってくれます」

また、嚥下障害のため、上手く痰を出すこともできない。風邪の時には痰詰まりによって危険な状態になることもある。

ミルクや食事を飲み込めないため、当初は鼻にチューブをつける経管栄養をしていたが、幸太郎くんは栄養剤などが入りにくい体質で、毎週、通院しなければならなかった。そこで、医師と相談し、栄養がちゃんと摂れるように胃ろうを造設した。

「我が家では、一家団らんでご飯を食べることを幸せに感じていたので、最初は同じものを食べられないことがショックでした。でも、幸太郎を近未来的な生活をする最先端の子どもと思うようになったことで、受け入れられるようになりました」

幸太郎くんは比較的早い段階で自分に合うデイサービスと出会え、今は週3回通っている。送り迎えが充実しているので、さちさんは幸太郎くんがデイサービスに行っている間に買い物ができるようになった。

自宅には、訪問看護士も来てくれる。福祉支援によって、家族の負担は少し和らいでいるが、メディアなどで医療的ケア児の親が我が子を手にかけてしまったニュースを見ると、胸はザワつくという。

「今、幸太郎が必要な医療的ケアは胃ろうへの注入と痰の吸引だけですが、今後、呼吸器が必要になれば、しなければならないケアは増えます。レスパイト(※一時的に日頃のケアを代替してくれるサービス)やショートステイなどを最大限に使って、自分を労わりながら向き合っていきたいです」

医療的ケア児の親が抱える「未来の不安」



医療的ケア児の親にとって一番の不安は、自分たち亡き後の未来。きょうだいに介護は任せたくないけれど、施設で暮らすことになった時にはつらい扱いなどを受けないように守ってほしい。それが、さちさんの本音だ。

「虐待などを心配せず、安心して預けられるよう、今よりもマメに施設の監査がなされてほしいです」

なお、自身の経験を通し、さちさんは出産前の小さな異常を無視しないでほしいと訴える。

「過度に心配しすぎてもストレスになってしまいますが、リスクがある妊婦さんや気になる症状がある場合は、大きな病院で経過を診てもらってほしい。また、産院で産む場合は事前に、緊急事態の対処ができるか確認してほしいです」

そして、もし出産後に我が子の障害を知らされたら、「ひとりぼっちじゃない」と思える仲間や自分が笑えることを探してほしい――。経験から出るさちさんのメッセージは、母になる女性たちの胸に響くことだろう。

<文/古川諭香>

【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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