今年の東京開催最終週、フィナーレを飾るのは国際招待競走のGIジャパンカップ(11月30日/東京・芝2400m)だ。
今回、来日する外国馬は1頭にとどまったが、カルティエ賞(※欧州における年度表彰)の年度代表馬に輝いたカランダガン(せん4歳)が参戦。迎え撃つ日本勢も、GI天皇賞・秋(11月2日/東京・芝2000m)を制したマスカレードボール(牡3歳)をはじめ、タスティエーラ(牡5歳)、ダノンデサイル(牡4歳)、クロワデュノール(牡3歳)と3世代のダービー馬が顔をそろえ、豪華なメンバーが集結した。
そういう意味では、ハイレベルな争いになることは必至。今年も例年に違わず、見応えのあるレースが期待できそうだが、馬券的な妙味はGIレースのなかでは最も薄いかもしれない。スポーツ報知の坂本達洋記者もこう語る。
「(ジャパンカップは)展開のアヤが少なく、実力勝負となる東京コースが舞台。おかげで、過去10年の結果を見ても1番人気が6勝。馬券圏外に外れたのは1度だけと、穴党にとっては"アウェー"感のあるGIと言えるかもしれません」
しかしながら、今年は上位混戦。それを踏まえて、坂本記者はこんな見解も示す。
「実績馬ぞろいで上位馬の人気が割れそうなのは、穴党も歓迎でしょう。さらに、欧州から参戦してくる"大物"がその構図に拍車をかけてくれ、(馬券的な)面白味も少しは増すかもしれません」
では、その欧州の"大物"カランダガンについて、坂本記者はどう見ているのだろうか。
「3歳時から頭角を現わしていましたが、今年に入ってGI全5戦オール連対。完全に本格化した実力派です。戦ってきた相手を含めて、直近のGI3連勝はお見事。GI英チャンピオンS(10月18日/アスコット・芝1990m)を勝っていることから、ボーナスとなる褒賞金(着順によって金額は変わる)を獲得する資格もあり、そこから勝負気配も感じます。
ただ、外国馬がジャパンカップで馬券圏内に入ったのは、2006年に3着となったウィジャボードまで遡らなければなりません。以前と比べて近年は外国馬の出走も少なく、来日する馬のレベルも必ずしも高いとは言えなかったとはいえ、やはり(外国馬には)日本の速い時計の馬場への対応が課題であることは間違いないでしょう。
それでも、その堂々たる実績からそれなりに人気になるようなら、穴党にとっては"追い風"になるかもしれません」
一方、日本のダービー馬3頭についても前走では苦杯を舐めており、絶対的な信頼を置くまでには至らない。今年のジャパンカップは、少なからず波乱ムードが漂っている。
そこで、坂本記者も2頭の穴馬候補をピックアップした。
「1頭目は、
ディープモンスター
(牡7歳)です。GI勝ちはなく、7歳にして前走のGⅡ京都大賞典(10月5日/京都・芝2400m)で初の重賞勝ちを決めたばかりですが、穴馬の資格は十分にある1頭と見ています。今回は、今年に入って8戦目。オープン馬にしてはタフに使われてきていますが、それこそ力をつけて充実している証拠ではないでしょうか。
ジャパンカップでの一発が期待されるディープモンスターphoto by Eiichi Yamane/AFLO
うまく内から抜け出して快勝した京都大賞典はもちろんですが、ハイレベルな一戦となった2走前のGⅢ新潟記念(8月31日/新潟・芝2000m)での3着好走は、価値があると思います。勝ったシランケドは続く天皇賞・秋でメンバー最速の上がりをマークして4着と奮闘。2着エネルジコも直後のGI菊花賞(10月26日/京都・芝3000m)で強い競馬を見せて戴冠を遂げました。
ディープモンスターはそれらを相手にして、勝ち馬からコンマ2秒差の3着。内から馬群をさばきながら抜け出してきた走りは、卓越した脚力のあるところを示した印象でした。旬な馬たちと差のない競馬を見せたことは、高く評価していいと思います。
成績的に大崩れしておらず、確実に脚を使えて相手なりに走れるところも、穴党にとっては大きな魅力。そして何より、ここに来て馬がまだまだよくなっているそうですから、なおさら食指が動きます。偉大な父ディープインパクトから受け継いだ成長力には感服します。その名のとおり、この大一番で"怪物"になってほしいです」
ディープモンスターは京都大賞典後の状態もよく、レースに向けての調整も抜かりはないという。坂本記者が続ける。
「栗東・CWコースでの1週前追い切りでは、6ハロン78秒8-1ハロン11秒1の猛時計をマーク。これだけ攻められているのは、状態のよさを物語っています。あらゆるものが充実してきたベテランの一発に期待が膨らむばかりです」
坂本記者が注目するもう1頭は、紅一点の
ブレイディヴェーグ
(牝5歳)だ。
「オーナーサイドがこのレースがラストランになる可能性が高いと示唆しているなか、この秋に天皇賞・秋→ジャパンカップへ果敢に挑戦してきた陣営の心意気をまず買いたいですね。
前走の天皇賞・秋では10着に敗れましたが、やや不運な結果でした。直線で内を突く一か八かの手に出ましたが、前が壁になってやむなくブレーキをかける場面もあり、不完全燃焼と言える内容でしたから。
管理する宮田敬介調教師も『フィニッシュラインに向かう姿を見ていても十分に脚はあったな、と。(勝ち馬とは)コンマ5秒差でしたし、個人的には全然力負けではないと思っています』と悲観することなく、巻き返しへの意欲を見せています。
今回は、同馬にとって初の2400m戦。そこは大きなカギになると思いますが、前走でしっかりと折り合えていたのは好印象でした。また、今回はスタンド前発走となることも踏まえて、陣営は馬具を工夫することも考えています。
1週前の追い切りでは、レースで手綱をとるトム・マーカンド騎手が騎乗。距離への対応やゲート内での駐立などを含めて、『(マーカンド騎手からも)アイデアをもらって、そういった方向でやってみようかと思っています』と宮田調教師。鞍上ともしっかりコミュニケーションを取って、大舞台へ向けての策を入念に練っています。アッと驚くような大駆けがあってもおかしくありませんよ」
一線級の馬たちによる熾烈な戦い。ほんの少しの出来のよさや位置取りの差によって、人気の盲点となる実力馬が台頭する可能性は大いにある。それが、ここに挙げた2頭であっても不思議ではない。
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