サッカー日本代表の選手層の厚みを福田正博は実感した急成長している佐野海舟に注目

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サッカー日本代表の選手層の厚みを福田正博は実感した急成長している佐野海舟に注目

11月28日(金) 10:00

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福田正博フットボール原論

■サッカー日本代表が11月の強化試合でガーナ、ボリビアに連勝し、2025年の活動を終えた。福田正博氏の評価は?

【ガーナ、ボリビアに勝ちきったのは大きい】 日本代表は11月の強化試合でガーナ代表に2-0、ボリビア代表に3-0で2連勝した。2025年の代表活動を勝利で終えたことはすばらしいし、来年のW杯を見据えた時に確実に勝ち点3を奪いたいレベルの相手に対し、しっかりと勝ちきった意義も大きい。

ガーナ戦で活躍した佐野海舟photo by Nakashima Daisuke

ガーナ戦で活躍した佐野海舟photo by Nakashima Daisuke



W杯のグループステージは、開催国3カ国と出場国のうちFIFAランク上位9カ国がポッド1。ポッド2以降はFIFAランク10番目から順次入り、欧州や大陸間のプレーオフを勝ち上がった国はポッド4に入る。

FIFAランク18位でポッド2入りが決まっている日本は、ポッド1、ポッド3、ポッド4のチームとグループステージを戦う。ただし、同じアジア(AFC)のチームと同グループになることはないというルールがある。

W杯ではポッド1の強豪国との対戦に焦点が当たりがちだが、日本が確実にグループリーグを突破するためには、ポッド3、ポッド4の相手から勝ち点3を奪うことが必須になるわけだ。

その点において、ガーナはW杯ではポッド4入りが決まっている。ボリビアは南米予選7位で、来年3月の大陸間プレーオフの結果次第で本大会に駒を進められる。その時はボリビアもポッド4へと組み入れられる。

つまり今回の強化試合は、W杯本番でも勝ち点3を確実にモノにしなければならない相手だったわけで、その2カ国に強化試合とはいえ確実に勝利した。これは素直に評価したい。

惜しむらくは、ガーナはメンバー的に物足りなさがあった点だ。故障者などでベスト布陣を組めなかったのは仕方ないものの、W杯本番での対戦を想定して手の内を隠したかったところもあったのかと懐疑的になるほど、試合展開として日本に得られるものは少なかった。

一方、ボリビアは点差以上(3-0)に内容では目を見張るものがあった。今回の南米予選でブラジルに勝利したのも頷けたし、南米予選やコパ・アメリカなどでブラジル、アルゼンチンといった強豪との対戦が日常化していると感じさせる、タフで賢い戦い方を見せてくれた。

【ボランチで存在感が際立った佐野海舟】 日本に目を向けると、ガーナ戦ではボランチで先発した佐野海舟が際立った働きをした。彼が守備で相手を潰してボールを奪ったからこそ、ガーナが物足りなく感じた部分もあっただろう。昨季からドイツでプレーし代表チームには6月から加わっているが、現在はボランチの中核になってもいいくらいの存在感がある。

佐野のよさは、まずは守備だ。ボールホルダーに対して瞬間的に間合いを詰めてボールを奪う能力が圧倒的に高い。遠藤航と遜色ないレベルまできているように感じる。しっかりと相手のプレーを読んでポジショニングを取るからこそ、パスカットが多いのだろう。また、相手ゴールに迫る攻撃面の動きでも、ドイツでどんどん成長しているようだ。

それが表われたのが1点目のシーン。ゴールは南野拓実がしっかり決めたが、起点となったのが佐野のボール奪取だった。久保建英にボールを預け、リターンを受けるとそのままドリブルで持ち運び、相手DFを引きつけて左サイドにいた南野へパス。相手ゴールに向かう姿勢は、ほかにも随所で見られた。

ボリビア戦では遠藤航がボランチで先発したものの、精彩を欠いていたように映った。リバプールで出番が少ないことも影響しているのだろう。これから先、遠藤が本調子に戻れなかった場合は、佐野が主軸になる可能性はある。それくらい今の佐野は日本にとって心強い存在になっている。

ボリビア戦については、小川航基には期待しているからこそ注文をつけたい。日本の1トップには上田綺世がいて小川が控える形になっているが、小川にはもう少し前線で攻撃の起点となるプレーの精度や強度を高めてほしい。

FWというのは、ゴール前に入っていって得点することが仕事だ。小川はゴール前に入った時に力を発揮できるものの、その前段であるゴール前に入っていくための仕事では上田綺世の域にはまだ達していない。

FWがゴール前に入っていくためには、前線でボールを保持して攻撃の起点となり、味方に預けなければならない。そこができれば小川自身がゴール前に入っていくことも増えるし、味方がゴールを狙う機会も増える。だが、そこの部分の精度と強度でまだ成長の余地がある。

ボリビア戦の後半途中で小川に代わって投入された上田綺世は、攻撃の起点となった。だからこそ、町野修斗や中村敬斗のゴールが生まれたことを見逃さないでもらいたい。小川がこの部分を高めていければ、日本にとって大きな戦力の底上げにつながるだけに期待している。

【GK早川友基の2試合連続起用】 底上げという観点に立つと、今回の2試合ではGKに早川友基を起用した。正GKの鈴木彩艶が故障のため招集外となり、これまで代表に名を連ねてきた大迫敬介や谷晃生も代表活動期間と重なった天皇杯との兼ね合いから未招集。そうしたなか、7月のE-1選手権から日本代表に選出されてきた早川が出場機会を手にした。

今回の強化試合でもっとも驚かされたのは、早川を2試合連続で起用したことだ。早川がガーナ戦に出場したので、次のボリビア戦では初招集したパリ五輪代表の正GK・小久保玲央ブライアンか、鈴木の代わりに追加招集した野澤大志ブランドンを起用するものだと思っていたからだ。

それがボリビア戦でも早川をピッチに送り出した。この采配に、森保一監督のなかでの早川への期待の大きさを垣間見た気がした。Jリーグで首位を走る鹿島アントラーズの立役者である早川に、限られたチャンスのなかで国際経験を積ませておきたかったのだろう。裏を返せば、それくらい期待しているということだ。もちろん、鈴木が故障から復帰すれば、早川の日本代表メンバー入りが叶っても出番がない可能性は大きい。だが、不測の事態への備えをするうえで、早川の名は森保監督のなかで大きくなっているのではと思う。

日本代表の2025年はアジア最終予選を含めて13試合で8勝3分2敗。6月からは新たなメンバーを招集しながら戦い、さまざまな組み合わせを試してきた。1試合ごとの出来、不出来はあるにせよ、間違いなく選手層は厚みを増している。12月5日(日本時間6日)、グループステージでの対戦相手がどこに決まろうとも、日本の未来を信じる気持ちが揺らぐことはない。そのくらいの準備をしてくれたのではないかと思う。

>>後編「三笘薫、守田英正も危ない!? W杯本番のメンバーは?」につづく

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