アンドロイド開発の第一人者・石黒浩が理想の家をつくった! 5年後の家はテクノロジーで“感性”を刺激する?! 香りや環境音が季節の移ろいで変わる仕掛けとは?「ivi house」

(筆者撮影)

アンドロイド開発の第一人者・石黒浩が理想の家をつくった! 5年後の家はテクノロジーで“感性”を刺激する?! 香りや環境音が季節の移ろいで変わる仕掛けとは?「ivi house」

11月27日(木) 7:00

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ロボット工学者の石黒浩・大阪大学教授らとの共同プロジェクトだという「ivi house/アイヴィハウス」。科学技術満載の家かと思っていたら、「人の感性を呼び覚まし、住まいと人が共鳴する新しい暮らしの提案」だという。いったい、どんな家なのだろうか?見学する機会を得たので、その経験をレポートしよう。

ivi houseは技術より石黒教授の哲学に貫かれた家

大阪・関西万博でもパビリオンをプロデュースした石黒浩教授。言わずと知れた、アンドロイド研究の第一人者だ。万博では50年後の未来の家を描いているが、東京都杉並区につくられた「ivi house/アイヴィハウス)」では5年後の家を描いているという。

もちろんセンサーなどを使って、照明や音響などをコントロールするのだが、それよりも「住む人の感覚に寄り添う」、「空間が自然に変化する」といった、石黒教授の理念を表現した家になっている。

“ivi”はLivingの真ん中の3文字。生きることの真ん中、人と人がつながることを意識したものだという。と言われても、なんだかしっくりこないので、見学してみることにした。

長谷工グループの細田工務店の知人に案内されて、仕事仲間と一緒に見学に行った。場所は、京王井の頭線の富士見ヶ丘駅から徒歩ですぐの場所。この場所は、複数の候補地から石黒教授自身が選んだという。都心に行くのに便利な場所でありながら、緑が多く残っていて、自然との境界があいまいだからだそうだ。

まず驚くのはその外観だ。生垣を想起させる木目調のルーバーに覆われている。外からの視界を遮る一方で、家の中には木漏れ日のような光がさしこむ。そのため、ルーバーを入れる間隔や角度が微妙に変えられている。

ivi house外観 ※写真は全て筆者撮影
ivi house外観 ※写真は全て筆者撮影

1階部分のルーバーの間隔は密になっているが、2階のルーフバルコニーの部分は間隔があき、角度も変わっている
1階部分のルーバーの間隔は密になっているが、2階のルーフバルコニーの部分は間隔があき、角度も変わっている

建物の面積は2階建て100平米程度と都市部では一般的な広さだ。また、玄関部分が黒色になっているなど、家全体に黒が多用されているが、それは石黒教授がモノトーン好きだからのようだ。

家に帰ると出迎えて、先へ先へと導いてくれる

まず、玄関に入ってみる。中に入ると、照明がゆっくり点灯したり、小鳥のさえずりが聞こえたりして驚いた。外部とは違う空間に入ったと感じる。独特の香り(定期的に放出される)もその意識を強くさせる。

玄関で靴を脱ぐ際に、なぜか沓脱ぎ(くつぬぎ)の曲線部分に足が向いた。これは、アフォーダンス(無意識の動作)を誘う仕掛けで、そこに自然と足が向くのだという。

曲線の深い部分で自然に靴を脱いでいた
曲線の深い部分で自然に靴を脱いでいた

広い玄関ホール
広い玄関ホール

2階に上がろうとすると、進む先にある照明が次々にゆっくり点灯する。これも、アフォーダンスの仕掛けだ。行動を先回りして、進む方向の照明を点灯する、しかもいきなり100%点灯ではなく、徐々に明るくなるように設定されている。

これは、自然界では徐々に明るくなり、徐々に暗くなるのが当たり前だから。石黒イズムは自然と同じようであることを重視する。同様に、自然界に直線のものがないことから、室内空間には曲線が多用されている。たとえば、階段を見ても、曲線が多いことがわかる。

2階から1階を見る階段部分
2階から1階を見る階段部分

メインとなる約18.7畳のLDKの空間も、天井の緩やかな曲面やキッチンの面台・インテリアの曲線形状によって、ゆったりとした感覚になる。

たっぷりの光が差し込む、曲線を多用したLDK
たっぷりの光が差し込む、曲線を多用したLDK

ここでは、たとえば朝は天井の照明がゆっくり点灯したり、夕方はインテリアの照明がゆらいだり(明るくなったり暗くなったりを繰り返す)と、時間の経過によって照明や音響が自然に近いようにコントロールされている。

環境音は季節の移ろいなどによりコントロールされ、ビルトインされたディスペンサーから定期的に噴霧される香りは、1階は草原、2階は高原の香りが漂うようになっている(残念ながら鈍感な筆者は、草原と高原の違いがよくわからなかった…)。

このように、家が自律的に人に反応して変化するのが大きな特徴なのだ。

都心のオアシス的なルーフバルニーと独立性の高い書斎や寝室

2階のLDKの背面側には、洗い場付きのルーフバルコニーがある。ルーバーが視線を遮ることに加え、ベンチに座ると程よい高さに植栽と壁があり、どちら側からも完全に隠れることができる。水屋もあるので、ここでバーベキューなどもできそうだ。

外からの視線を気にせずに済む、ルーフバルコニー。書斎に入るサッシ横に洗い場が付いている
外からの視線を気にせずに済む、ルーフバルコニー。書斎に入るサッシ横に洗い場が付いている

ルーフバルコニーの奥に書斎があり、ここにはこの動線しかない(ルーフバルコニーを通ってしか入室できない)。いわゆる「離れ」の状態だ。

約6.1畳の書斎
約6.1畳の書斎

この部屋は石黒教授もお気に入りで、ivi houseを訪れるとこの書斎でしばらく仕事をするのだそうだ。縦長の窓も落ち着いた雰囲気を醸し出す。その前にある椅子を私たちは「石黒チェア」と呼んで、代わる代わるに座ってみた。ルーフバルコニーからしか入れないという動線は、仕事に集中するのに効果的だと思った。

書斎の下の階は「寝室」になっている。寝室に行くためには、LDKに戻って、階段を下り、玄関ホールから洗面所・浴室の横を通ることになる。ちなみに、洗面所や浴室は黒で統一されているが、黒の浴槽は珍しく、探すのに苦労したようだ。

浴室
浴室

また、寝室は、こうした動線によってプライベート空間であると意識できること、照明が複雑にゆらいで眠りを誘うこともあって、熟睡できそうな気がした。

壁に個性的な大小の照明がある寝室
壁に個性的な大小の照明がある寝室

なお、見学者にはスリッパを用意していない。それは、床の足触りの違いを感じてほしいからだという。玄関ホールなどはタイル張り、2階のLDKや書斎は板張り(フローリング)、寝室はふかふかのカーペット(マドンナという名称のもの)といった違いがある。

今すぐ部分的に取り入れることも可能な5年後の家

「ivi house」の間取図を紹介しておこう。間取図を見ると、曲線が多用されていることや離れの独立感などがよくわかるだろう。12月25日まで見学できる予定だというので、興味があれば見学してはいかがだろう。

「ivi house」間取り図(公式ホームページより転載)
「ivi house」間取図(公式ホームページより転載)

「人の感性を呼び覚まし、住まいと人が共鳴する新しい暮らしの提案」ということだが、5年後という比較的短い将来を想定した家なので、いますぐ取り入れられる部分も多い。私は個人的に、黒い浴槽などは汚れが目立ちそうで好みではないが、一戸建てでありながら「離れ」がある間取りが気に入った。

音や香りも人それぞれ好みがありそうな気がするし、徹夜して遅く起きたい朝に照明が自然とつくのは困る気もする。これからはAIが普及するので、個人の暮らし方や好みをAIが学習して制御してくれるようになったら、うまく使いこなせるかもしれない。

これからの家は、自由な発想でさまざまに変わっていくのだろう。

●参考サイト
「ivi house」公式サイト


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