今季Jリーグ随一のキャリアを誇るジェルマンが日本のレベルの高さに驚愕「大きな可能性がある」

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今季Jリーグ随一のキャリアを誇るジェルマンが日本のレベルの高さに驚愕「大きな可能性がある」

11月27日(木) 17:45

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Why JAPAN?私が日本でプレーする理由

サンフレッチェ広島ヴァレール・ジェルマンインタビュー前編

今のJリーグでは、さまざまな国からやってきた多くの外国籍選手がプレーしている。彼らはなぜ、日本を選んだのか。そしてこの国で暮らしてみて、ピッチの内外でどんなことを感じているのか。今回はサンフレッチェ広島のヴァレール・ジェルマンに話を聞いた。華やかなキャリアを持つフランス人アタッカーの横顔に迫る。

【父は欧州で準優勝した元フランス代表】フランスを訪れる時、現地の人に英語で話しかけてもうまくいかないことがある。なぜなら彼らは母国語に誇りを持っていて、いくら英語が現代のリングワ・フランカ(世界共通語)だとしても、そしてその内容を理解したとしても、当たり前のようにフランス語で返してきたりする。実際、外来語を規制する言語政策もあるくらいだ。

だからこの日のインタビュイーであるフランス人アタッカー、ヴァレール・ジェルマンにも、まずはフランス語で挨拶をしてみた。その上で英語で質問をさせてもらいたいと伝えると、オンラインの画面上の彼はにこやかに微笑み、親指を立てて「もちろん!」と快諾してくれた。

にこやかにインタビューに応じたヴァレール・ジェルマン photo by Yoichi Igawa

にこやかにインタビューに応じたヴァレール・ジェルマン photo by Yoichi Igawa





当然、フランス人にも色んな人がいる。彼は親切なタイプのようで、あるいはそんな気遣いをしなくても、快く対話を始めてくれたかもしれない。いずれにせよ、幸先の良いインタビューの始まりとなった。

現在35歳の元フランスU-21代表は、今季のJリーグでもっとも華やかなキャリアを持つ選手のひとりだ。父はジャン=ピエール・パパンやドラガン・ストイコビッチらと共に1990-91シーズンのヨーロピアンカップ(現在のチャンピオンズリーグの前身)で準優勝したマルセイユの一員で、フランス代表の経験も持つブルーノ・ジェルマン。息子のヴァレールはマルセイユで生まれ、下部組織を過ごしたASモナコでプロになった。

2016-17シーズンには当時まだ10代のキリアン・エムバペ(現レアル・マドリー)、ベルナルド・シウバ(現マンチェスター・シティ)、ファビーニョ(現アル・イティハド)、ファルカオ(現無所属)らと共にリーグ・アンを制し、チャンピオンズリーグではマウリシオ・ポチェッティーノ監督(現アメリカ代表)が率いたトッテナム・ホットスパー、ペップ・グアルディオラが統率したシティ、トーマス・トゥヘル監督(現イングランド代表)が指揮を執ったボルシア・ドルトムントを下して準決勝に進出した。

そこでユベントスに敗れたものの、新鮮な驚きをもたらした伏兵の躍進に、ジェルマンはチームリーダーのひとりとして大きく貢献した。さらに翌2017-18シーズンには、移籍したマルセイユでヨーロッパリーグ準優勝を遂げている。

そんなジェルマンがサンフレッチェ広島に加入したのは、今年2月下旬のこと。2023年夏に初めてフランス(モナコを含む)を離れ、オーストラリアのマカーサーFCに移り、そこで2年弱を過ごしてから日本にやってきた。まずはその理由から、尋ねてみた。

【率直な言葉で日本の好印象を語る】「シドニーで2シーズン目を送っていた時、代理人に日本でプレーする可能性を探ってもらったんだ。Jリーグはアジアで最もレベルの高いリーグだと聞いていたから、ぜひそれを経験してみたかった。せっかくオーストラリアでアジアのフットボールに触れることができたからね。当初は、Aリーグのシーズンを終えてから夏に実現すればいいと考えていたのだが、広島がすぐにでも入団してほしいと言ってくれたので、2月に移籍する運びとなったんだ」

近年、日本は欧米で評価を高めているが、なかでもフランス人の日本贔屓は顕著に思える。筆者が3年前に訪れたパリ郊外のサンドニの宿の女性は、日本に行くのが夢だと目を輝かせて言っていたし、漫画やアニメ、日本食をはじめ、多くのフランス人が日本の文化や食事を好んでいる。ジェルマンにも私たちの国への興味があったのかと思ったが、ここでも彼はステレオタイプなフランス人像を覆してきた。

「もちろん、日本が良い国だということは漠然と知っていた。寿司など、おいしい日本食はフランスでも広く親しまれている。でも率直に言って、私は日本に特別な興味を持っていたわけではない。広島に来た理由も、フットボール的なものだ。キャリアの終盤にある自分が、最後にもう一度レベルの高いリーグで通用するか、試してみたかったんだ」

実際に住み始めると、噂に聞いていた日本の生活の良さに驚かされたという。

「人々は他者を敬い、どこに行っても安全だ。家族のいる私には、治安の良し悪しは生活をする上で重要なんだ。私たちの家があるモナコも治安は良いが、人口は4万人に満たない。かたや日本には1億2000万人以上が暮らしているというのに、安全な社会が成り立っている。これはすごいことだと思う。驚かされたよ。

それから寿司はもともと好きだったけど、それ以外にも広島焼きなど、地元の味を知ることができて嬉しいね。月に2、3回は、焼きそば入りのお好み焼きを食べているよ」

ピッチ上には、より大きなサプライズがあったようだ。ジェルマンは続ける。

「最初のトレーニングで、まず驚かされた。日本人選手のクオリティーは本当に高く、フランスで接してきた選手よりも優れていると感じるところもある。たとえば、ディフェンダーのボール捌きやフィードの精度。日本には、50メートルほどのパスを難なく味方に届ける守備者がざらにいるよね。

それからプロフェッショナリズムにも感銘を受けた。全体練習の後に自主的にトレーニングを続ける選手は多いし、試合中には足を止めず、規律ある動きを続ける。また試合に出られなくても、不平や不満を口にしたり、態度に表わしたりする選手が少ない。そしていつか出番が来ると信じて、ハードワークを続ける。おそらくこれは、日本人の仕事に対する向き合い方なのだろうと思う。すばらしい。フランスでは、ベンチで不貞腐れている選手がいるのは、日常的な光景だ」

【「日本のフットボールには大きな可能性がある」】画面越しではあるが、ジェルマンの表情と口ぶりに嘘はなさそうに見えた。当連載でこれまでにインタビューした多くの欧州出身の選手とは異なり、日本の予備知識を持たずに来日し、ピッチの内外で嬉しい驚きを覚えてきたのだろう。

「日本はフランスから遠く、時差もあるので、Jリーグを観るのは簡単ではない。だから私は、Jリーグについてほとんど何も知らなかったわけだが、この国のフットボールには大きな可能性があると思う。

もし私がフランスに戻ってクラブのフットボール・ディレクターのような職務に就くなら、間違いなく日本人選手を獲得するだろう。少なくとも、2、3人は」

この時はリップサービスに聞こえなくもなかったが、インタビューを進めるうちに、これがジェルマンの本心だとわかっていった。

(つづく)

中編 >> エムバペの覚醒を間近で見たジェルマンがモナコでのあのシーズンを振り返る「かけがえのないもの」

ヴァレール・ジェルマン Valère Germaim

1990年4月17日生まれ、フランス・マルセイユ出身。元フランス代表のブルノ・ジェルマンを父に持ち、モナコの下部組織からファーストチームに昇格した。2016-17シーズンには当時10代のキリアン・エムバペらと共にリーグアンを制し、チャンピオンズリーグのベスト4に進出。その後、マルセイユ、モンペリエ、マカーサーFC(オーストラリア)を経て、今年2月にサンフレッチェ広島に加入した。

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