熊を撃つよりシカを撃て!?現役ハンターが指摘する意外な「熊害防止策」

今年のクマ被害は過去最悪レベルにまで達している

熊を撃つよりシカを撃て!?現役ハンターが指摘する意外な「熊害防止策」

11月27日(木) 8:30

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今年のクマ被害は過去最悪レベルにまで達している

今年のクマ被害は過去最悪レベルにまで達している





全国でクマによる被害が頻発している。

今年に入りクマに襲われたことによる死者数は13人、けが人は207人(ともに11月5日時点)にのぼっており、すでに過去最悪の状況となっている。人以外にも、ペットや家畜、農作物への被害も相次いでいる。

11月16日には、秋田県能代市中心部の商業施設内に体長約80センチのクマが侵入。従業員らがバリケードを築いて客を無事避難させたのち、クマは店内で駆除された。

こうした事態を受け、2025年9月から人の日常生活圏に出没するクマを駆除するための法整備として「緊急銃猟制度」が導入された。各市町村の判断のもと、地元の猟友会などへの委託により、銃器を使ったより積極的な駆除が可能になった。また、11月には国家公安委員会規則が改正され、「危険鳥獣による人の生命、身体への危害防止」のために警察官がライフル銃を使用することができるようになった。

しかし、「人里に降りてきたクマを撃っていたのでは手遅れになるし、キリがない」と指摘するのは、東北地方の猟友会に属する60代の現役ハンター、加藤慎太郎さん(仮名)だ。

【餌不足はクマ被害の要因にあらず?】 「『人里に降りたら酷い目に遭う』ということをクマに教えられればいいが、動物はしゃべれないから、自分が体験するか目の前で起きたことしか教訓にしない。クマは群れを成さないので、単独で人里に降りてきたクマを一頭ずつ撃っていても他の個体には教訓が共有されないのです」(加藤さん)

「シカを人里に近づけないことがクマ被害の防止につながるのでは」と加藤さん

「シカを人里に近づけないことがクマ被害の防止につながるのでは」と加藤さん





その一方で、加藤さんは、「それよりは、群れで行動するシカを撃ったほうが効率がいい」と主張する。

「クマが人里に降りるようになったのは、山に食べ物がなくなったからとよく言われるが、私が見る限りではそうとも言い切れません。冬眠前に好んで食べる木の実類は、昔に比べると確かに減っているが、全くないわけではない。ツキノワグマの足跡や糞が残っているような場所でも、ドングリや椎の実が地面に豊富に残されていることも多い。

代わりによく目にするようになったのが、クマに襲われたとみられるシカの死骸。栄養価の高い内臓だけがきれいに喰われていて、肉には手をつけていないことも多い。飢えているクマだとすれば、そんな食べ方はしないはずです。

クマはもともと雑食だけど、シカの死骸や弱った個体を狙って食べることは知られている。それが最近は、以前よりもシカを積極的に食べるようになってきている印象もあります」(加藤さん)

【人里付近のシカの死骸がクマを誘引か?】

そして、そんなシカを追う形で、クマが人里に近づくようになったというのが加藤さんの見立てだ。

「シカの生息域の標高はクマよりはやや低いのですが、かつては集落までやって来ることは稀でした。しかしここ10年ほどで、群れを率いて傍若無人に集落付近に現れるようになった。

一因として、人の生活圏付近では、銃猟やくくり罠猟が禁止される『特定猟具使用禁止区域』が拡大したり、狩猟に関する法律の運用が厳しくなったりしたことで、シカは『人里には危険はない』と認識していることがあげられるでしょう。群れが来るところには死骸も出て来る。

ツキノワグマの嗅覚は何キロも離れている死骸の匂いを嗅ぎとることができるので、それを追ううちに人里に近づくようになったクマも少なくないはず。そうして偶然に立ち入った人里で農作物の味を覚え、さらに人間も恐れるに足らずという成功体験を得れば、繰り返し人里に出没するようになる」(加藤さん)

車道近くに出没したニホンジカ

車道近くに出没したニホンジカ





これが「クマを撃つよりシカを撃つべき」という加藤さんの主張の根拠だ。

「現在も、山林や農地では、農作物への獣害対策でシカの駆除をやっていますが、人里周辺にも範囲を広げ、シカを人間の生活圏に寄せ付けないことが、クマ被害を減らす一つの手段になると私や狩猟仲間は考えています。クマと違って群れで生活するシカは、仲間が命を落とした場所を記憶し、避けるようになるので、クマを一匹ずつ撃つより効率もいい。ただ、くくり縄を使うとかかったシカをクマが狙う事例も報告されるので、銃猟でやるべきでしょう」(加藤さん)

あくまでひとりの現役ハンターの所感である。しかし、もはや災害レベルの問題となってきたクマ被害だけに、危険クマの駆除だけでない根本的な対策が求められていることは確かであろう。

文/吉井透写真/加藤慎太郎氏提供、photo-ac.com

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