アルピーヌA110の国内販売がはじまったのは2018年のこと。唯一無二のライトウェイトミドシップスポーツカーはおよそ8年のときを経ていまなお世界中の愛好家に支持され続けているが、2026年3月末をもって国内での受注が終了。そして同年6月にはアルピーヌの象徴ともいえるフランス・ディエップ工場において、ついに生産終了を迎えるという。
【画像】アルピーヌA110の3モデル、それぞれの個性が光るディテール(写真24点)
ここであらためてA110の変遷を振り返ってみる。ルーツとなる初代A110がリアエンジンリア駆動で2+2の4シーターであったのに対して、現行型はミドシップの2シータースポーツカーとして登場。ボディの96%をアルミニウム製とすることで車両重量は1110kgと現代の車としては驚異的な軽さを実現。前後重量配分を理想的な44対56とし、前後シャシーにはタイヤの接地性に優れるダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。最高出力252ps、最大トルク320Nmを発揮する1.8リッター直4ターボエンジンをミドに搭載し、ゲトラグ製7速DCTを組み合わせる。傑出したハンドリングはデビューから8年が経過したいまもなお健在である。
翌2019年には、ハイパフォーマンスバージョンの「A110S」を追加。エンジン出力を40PSアップの292PSとして、カーボンルーフをはじめスポーツシャシーやハイグリップタイヤ、ブレンボ製ブレーキで性能強化したモデルだ。
A110にはこれまで実に多くの限定車が設定されてきた。例えば2020年にはレザーインテリアなどでエレガントに仕上げた「リネージGT」をはじめ、29色のボディカラーとホイール、ブレーキキャリパーのカラーを選択できる「パーソナライゼーションプログラム」を導入するなどした。
2022年には一部改良を実施。「A110」、「A110 GT」、「A110 S」の3つのグレード体系に。A110 GTとA110 Sのエンジンには改良がくわえられ、最高出力300ps/最大トルク340Nmへと出力向上している。同年11月にはカーボンパーツを多用し、スワンネックタイプのリアスポイラーやA110Sから車高を10mm低めた専用シャシーなどを備えた最速バージョンの「A110 R」を追加した。ちなみにこのRとはラディカル(過激な)を意味するという。
そして2025年、アルピーヌブランド創立70周年を迎えたタイミングで、A110のラインアップは「A110 アニバーサリー(限定車)」、「A110 GTS」、「A110 R 70」の3モデル構成へと刷新された。
A110の生産終了をうけ、これら3モデルを比較試乗する機会が設けられた。舞台はアルピーヌの名にふさわしい、アルプスのワインディングロードを彷彿とさせる長野県・車山高原だった。
すでに完売のベーシックなA110
まずもっともベーシックなA110をベースとした70周年限定車「A110 アニバーサリー」に乗る。エンジン出力は、オリジナルのままの最高出力252ps、最大トルク320Nmを発揮。現在のA110ラインアップの中で最もしなやかなアルピーヌシャシーを採用する。車両重量は1120kg。限定車として、ブレンボ製ブレーキキャリパー、バイマテリアルブレーキディスク、サベルト製軽量モノコックバケットシートを標準装備する。
1.8リッター4気筒ターボエンジンは、乾いたエグゾーストノートを奏でる。ターボチャージャーのウェイストゲートが開く音、スポーツモードでのバブリング音も雰囲気だ。しっかりと6000回転まで回して乗りたくなる。足がしなやかであることがより軽快さを引き立てる、まさに人馬一体が味わえる。これでいいというか、これがいい。これぞオリジナルA110だ。このアニバーサリーの販売台数は限定25台。現行では唯一1000万円を切るモデルなこともあってあいにくすでに完売というが、文末に朗報を追記する。
いいとこどりの「A110 GTS」
「A110 GTS」は、従来の「GT」と「S」を組み合わせた、要はいいとこどりのモデルだ。サベルト製のレザーシートやダッシュボードやドアパネルにスエード調のマイクロファイバーを採用。シャシーはSと同様のスポーツ仕様(シャシースポール)で、エンジンはハイパワーな300ps仕様となる。
ベースのA110と比較すると明らかにパワフルで足は少しばかりかため。タイヤサイズもベースモデルがフロント205/40ZR18、リア235/40ZR18なのに対して、わずかにリム幅を拡大し215/40ZR18、245/40ZR18と10mmずつワイドにしているのもなんともアルピーヌらしいこだわり。タイヤ銘柄はともにミシュランパイロットスポーツ4だ。GTSといっても車両重量は1130kgとベースからわずか10kg増しである。街中や高速道路を流したりする場面では、車名にふさわしくこのモデルが使いやすいだろう。
サーキット向けの本格モデルA110 R 70
「A110 R 70」は、サーキット向けの本格モデルだ。フロントボンネットからルーフ、リアフード、リアスポイラー、そしてホイールに至るまでカーボン製である。そのかいあって、車両重量は1090kgとベースでマイナス30kgを達成している。
カーボン骨格のシート表皮にはアルカンターラを採用。シートベルトは3点式が省かれており、サベルト製の6点式を標準装備する。バックルに留め金をカチッと差し込めばいやがうえにも気分が盛り上がる。エンジンは最高出力300ps/最大トルク340NmとGTSと同様のものだが、アジャスタブルレーシングダンパー、ブレンボ製ブレーキキャリパー、セミスリックタイヤのミシュランパイロットスポーツCUP 2といった本格パーツが備わる。またさらなる軽量化のためアクラポヴィッチ製チタンエグゾーストシステムがオプションで用意されている。
カーボンリアフードによってボディ後方が覆われているため、デジタルバックミラーが備わっている。おそるおそる走りだしてみるが、パワートレインがGTSと共通なこともあって凶暴な感じはない。スプリングもスタビライザーも強化された足はもちろん引き締まっているが、日常使いできないほどではないと感じた。おそらくカーボンホイールによるバネ下重量の軽さなどが効いているはずだ。ちなみにダンパーは減衰力可変式で好みに応じて調整が可能である。
引き締まったシャシーやセミスリックタイヤを装着していることもあり、とにかくひらりひらりと軽快に動くベースモデルとはまったく挙動が異なる。ステアリングフィールに手応えがあり、コーナリングのスタビリティも高い。しかし、車山高原の素晴らしいワインディング路といえども、このモデルの本領を試すことは難しい。カーボンリアフード&カーボンリアウイングが本来の機能を発揮し、ダウンフォースが発生する速度域で走行すればまた印象はがらりと変わるはず。やはり主戦場はサーキットだ。しかし、これほどのチューンドマシンをメーカー自らがつくりあげていることには、ただただ敬服するばかりだ。
最終限定車70台の発売が決定!
最後に朗報。先ほどベーシックな「A110 アニバーサリー」はすでに完売とお伝えしたが、日本オリジナルの最終限定車「BLUE ALPINE EDITION」が用意されるという。ボディカラーはアルピーヌの象徴であるブルーアルピーヌMで、A110が30台、GTSが30台、R70が10台の計70台となっている。11月27日(木)に発表、受注開始とのこと。特にベースのA110はこれで最後になるはずなので、お急ぎを。
文:藤野太一写真:奥村純一
Words: Taichi FUJINOPhotography: Junichi OKUMURA
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